HEPAフィルタとは
HEPAフィルタとは、大気中のミクロン以下の微粒子を高効率で捕集する装置です。
HEPAフィルタは正式には「High Efficiency Particulate Air Filter」と呼ばれます。JIS規格による規定では、0.3μmの粒子に対して99.97 %以上の捕集効率を有すること、そしてフィルタによる圧力損失が245 Pa以下の性能を持つことが求められています。
超高性能フィルタとして、粗塵用フィルタを経て選別された最終段階で利用されます。環境衛生の保持や、クリーンルームを必要とする産業的な用途において、HEPAフィルタを用いた空気清浄化のニーズが高いです。
HEPAフィルタの使用用途
HEPAフィルタの使用用途の1つとして、クリーンルーム内の清浄環境の保持が挙げられます。クリーンルームにおいて空調機器を使用する場合に、空調機器にHEPAフィルタをつけることで、微粒子がクリーンルーム内に入るのを防ぎます。
また、製造装置に組み込まれるファンユニットに使用することで、空気の清浄化が可能です。粉塵を扱う作業場の排気装置にHEPAフィルタが搭載されているケースもあります。扱う物質が特定化学物質に該当する場合など、HEPAフィルタの搭載が義務付けられている場合もあるので、扱う物質に当てはまる法規を確認することが大切です。
製造業のみならず、一般家庭向けの空気清浄機にHEPAフィルタが搭載されているケースが増えてきました。花粉症の原因となる花粉のサイズが直径10~30μm、カビやダニなどの微生物のサイズが直径5μm以上のため、HEPAフィルタはこれらを99.97%以上捕集できます。
HEPAフィルタの原理
図1. HEPAフィルタの捕集原理
HEPAフィルタは直径1~10μmの微細なガラス繊維で作られたろ紙でできており、これを波形状に整形して丈夫な枠内に取り付けた構造となっています。フィルタ内ではガラス繊維が複雑に絡み合っており、通過するガス中に含まれる微粒子が吸着されます。
対象の粒子径は、1μm以下が代表的です。より大きな粒子であれば、HEPAフィルタでなくエアフィルタを使用します。微粒子の付着過程としては、繊維と微粒子が接触し吸着したり、衝突後のブラウン運動を経て吸着されたりすることがあります。HEPAフィルタの場合、0.1μm~0.2μmの粒子においては捕集効率が悪いため注意が必要です。
図2. HEPAフィルタの捕集効率
小さい粒子は静電気の影響を強く受けるため、静電力を利用して微粒子を引きつける静電HEPAフィルタも存在します。これにより、微粒子の捕集効率を高めることが可能です。
HEPAフィルタのその他情報
HEPAフィルタの効率的な使い方
HEPAフィルタは非常に目が細かいことから、長期間使用すると目詰まりを起こし、徐々に捕集効率は低下します。捕集効率が低下すると、圧損が大きくなったり、フィルタ前後の圧力差に耐えられずフィルタが破損したりしてしまう恐れがあるため、目詰まりがひどくなった場合はフィルタの交換が必要です。
交換せずにHEPAフィルタを長持ちさせる方法は、以下の通りです。
1. プレフィルターを付ける
HEPAフィルタは非常に細かい粒子を捕集できますが、目が細かいため大きい粒子がフィルタに到達すると目詰まりを起こしやすくなります。そのため、HEPAフィルタの前に目の粗いプレフィルタを取り付けることで、HEPAフィルタの寿命を延ばすことができます。
2. オイルミストを避ける
図3. HEPAフィルタの長寿命化
オイルミストがHEPAフィルタに到達すると膜を作ってしまうため、目詰まりの原因となります。オイルミストが発生する場所でHEPAフィルタを使う場合は、ミストコレクタなどの専用装置でオイルミストを取り除きます。
参考文献
http://www.ace-cl.jp/product/filter-hepa
https://www.orionkikai.co.jp/faq/products/pap/post-808/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jar/4/4/4_4_265/_pdf/-char/ja