ポリ塩化ビニル

ポリ塩化ビニルとは

ポリ塩化ビニル

ポリ塩化ビニルとは、「塩ビ」や「PVC (polyvinyl chloride) 」とも呼ばれる合成樹脂の一つです。

可塑剤などの添加剤を加えることで、様々な性質を発現できます。そのため、硬質プラスチックや軟質プラスチック、ゴムなど多種多様な製品の原料として使われています。

ポリ塩化ビニルの使用用途

ポリ塩化ビニルは安価で加工性が高い上、添加剤を変えることで様々な性質を発現するため、幅広い用途に使用されています。ポリ塩化ビニルは硬質ポリ塩化ビニルと軟質ポリ塩化ビニルに大別され、それぞれ用途が異なります。

1. 硬質ポリ塩化ビニル

硬質ポリ塩化ビニルは、可塑剤含量が10%以下のものです。主な用途として、看板や標識、上下水道管のパイプや継手、腐食性ガスや薬品用配管材料、電線配線用管などが挙げられます。

2. 軟質ポリ塩化ビニル

軟質ポリ塩化ビニルは、可塑剤が25~50%含まれるものです。主にシート状 (0.2mm厚以上) 、フィルム状 (0.2mm厚以下) 、レザー (裏生地付) 、押出加工されたものがあります。それぞれの用途としては以下の通りです。

  • シート状:ハンドバック、ベルト類、スリッパ、クッションフロアー、浮袋
  • フィルム状:レインコート、長靴、使い捨て手袋、かさ、食品などの包装、農業用フィルム、衣料
  • レザー:車両内装材、家具、カバン用、衣料用
  • 押出加工:繊維、電線被覆、軟質ガス管、ガーデンホース

ポリ塩化ビニルの性質

ポリ塩化ビニルの性質

図1. ポリ塩化ビニルの構造

ポリ塩化ビニルは、塩化ビニルモノマーが重合することでポリマーとなった分子構造です。ほとんどの製品はポリ塩化ビニルモノマーのみから作られるストレートポリマーですが、酢酸ビニル、エチレン塩化ビニリデンなどの他のモノマーを共重合させたコポリマーもあります。

ポリ塩化ビニルの製品は、上記ポリ塩化ビニルのポリマーに安定剤、可塑剤、着色剤などを添加して混錬したものを様々な加工、成形方法により生産されます。ポリ塩化ビニルは、添加剤の種類や量を変えることで、硬質プラスチック、軟質プラスチックやゴムなど、幅広い機能を持たせられる点が大きな特徴です。

ポリ塩化ビニルの特徴

ポリ塩化ビニルの特徴をポリエチレン (PE) やポリプロピレン (PP) 、ポリスチレン (PS) など、他の汎用的なプラスチックと比較して紹介します。

1. 長所

  • 炭素-塩素結合を有しており、化学的安定性に優れている。また、難燃性や耐久性にも優れている。
  • 他の樹脂に比べて結晶性が低く、炭素-塩素結合という極性基を含有するため、様々な物質と混和しやすく、多種多様な添加剤、改質剤を加えることで種々の機能を発現できる。
  • 酸や塩基への耐性が高く、ほとんどの無機薬品への耐性も高い。有機溶媒については、トルエンなどの芳香環を有する溶媒やアセトンなどのケトン類、テトラヒドロフランなどの環状エーテルには溶解するが、これら以外の薬品に対する耐性は比較的高い。

2. 短所

  • ポリエチレンなどの樹脂に比べると耐衝撃性に劣る。特に低温下では脆く、割れやすくなる。ただし、可塑剤を添加すれば耐衝撃性を上げることは可能。
  • 軟質ポリ塩化ビニル製品を長期間使用すると、内部の添加剤が表面に滲み出したり揮発したりすることがある。

ポリ塩化ビニルのその他情報

1. ポリ塩化ビニルの製造方法

ポリ塩化ビニルは塩化ビニルモノマーの重合により作られますが、工業的な製造方法としては、懸濁重合、沈殿重合、乳化重合が挙げられます。

懸濁重合
塩化ビニルモノマー、重合開始剤、水を混合し、加圧重合槽内で加熱重合させます。反応後、ポリ塩化ビニル樹脂が水中に分散したスラリーが得られるので、残存モノマーを除去した後、脱水・乾燥することで粉末状のポリ塩化ビニル粉末が得られます。

沈殿重合
塩化ビニルモノマーを溶解し、ポリ塩化ビニルは溶解しない溶剤中で重合を行う方法です。塩化ビニルモノマーと開始剤と溶剤を混合し低温で重合させると、ポリ塩化ビニルが析出してきます。この混合物をフィルターろ過することで、低重合度のポリ塩化ビニルの粉末が得られます。

乳化重合
塩化ビニルモノマー、界面活性剤、水、水溶性の開始剤を混合し重合させる方法です。モノマーは水中で乳化され、乳化液滴内で重合します。重合後のポリマーを回収するために、塩や酸の添加で界面活性剤の乳化分散効果をなくし、凝集させ、その後、脱水・乾燥することでポリ塩化ビニル粉末が得られます。

2. ポリ塩化ビニルの安全性

ポリ塩化ビニルは食品や玩具など日用品にも広く用いられます。そのため種々の法律で規格が定めているほか、業界団体で自主規格を定めて安全性を担保しています。

例えば、ラップなどの食品に触れる製品の場合、食品衛生法で残存塩化ビニルモノマー量は1ppm以下です。また、可塑剤で使われるフタル酸エステル類の使用は厚生労働省の告示267号で禁止されています。そのほか、血液バッグなどに用いられるポリ塩化ビニルは薬機法に基づく種々の基準が定められています。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/9002-86-2.html

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