ジヒドロキシアセトンとは
ジヒドロキシアセトン (英: Dihydroxyacetone) とは、甘い味と特徴的な匂いを持つ、白色粉末です。
化学式はC3H6O3で表され、分子量は90.08、CAS登録番号は96-26-4です。ジヒドロキシアセトンの別名としては、IUPAC名である1,3-ジヒドロキシプロパン-2-オン (英: 1,3-Dihydroxypropan-2-one) や、DHAやグリセロン (英: Glycerone) などがあります。
1920年代にドイツの化学者によって皮膚着色剤として最初に発見されました。X線照射実験での使用時に、こぼれると皮膚表面が茶色に変わる現象が見られたことによります。ジヒドロキシアセトンは炭素数3のケトースで、グリセルアルデヒドとともに最も小さな単糖です。キラル中心を持たない最も単純な構造のケトースで、単糖の中で唯一光学活性がありません。
ジヒドロキシアセトンの使用用途
ジヒドロキシアセトンの用途の1つとして、ワイン造りへの使用が挙げられます。酢酸菌のアセトバクター・アセティとグルコノバクター・オキシダンはどちらも、ジヒドロキシアセトンを形成する際にグリセリンのケトン生成を利用します。この形成は、甘くエーテル的な特性を持つワインの芳香に影響する可能性が高いです。ジヒドロキシアセトンは、二酸化硫黄に結合する能力があるため、ワインの抗菌活性に影響を与えていると言われています。
その他の用途に、日焼け用スキンケア製品の有効成分があります。ジヒドロキシアセトンを使った一般的な市販製品には3~5%の範囲で、プロ向けの製品には5~20%の範囲で含まれています。明るい色から暗い色までの着色レベルに対応しており、低濃度の製品は初心者にも使いやすいです。
しかし、目的の色を生成するために複数回のコートが必要になる場合があります。人工日焼けは、皮膚表面に現れ始めるまでに2〜4時間かかり、製剤の種類に応じて24〜72時間ほどかけて色が濃くなっていきます。
ジヒドロキシアセトンの性質
ジヒドロキシアセトンの融点は82℃、沸点は188℃、蒸気圧は5.8×10-6kPa/25℃です。水に対する溶解度は高いですが、エタノールなどのアルコールにはやや溶けにくく、アセトンには溶けにくいです。
ジヒドロキシアセトンは通常二量体を形成していますが、水溶液では単量体に変化してpHが4~6の弱酸性となります。皮膚に付着すると、皮膚表面のタンパク質のケラチンのアミノ酸残基と反応して黄色や茶色に変化します。着色成分の色素は反応するアミノ酸残基によって異なりますが、総称してメラノイジンと呼ばれます。
ジヒドロキシアセトンのその他情報
1. ジヒドロキシアセトンの製法
ジヒドロキシアセトンは、構造異性体であるグリセルアルデヒドと共に、過酸化水素および第一鉄塩を触媒として、グリセリンを穏やかに酸化することで合成することができます。また、同じくグリセリンから、酸素、空気、またはベンゾキノンを共酸化剤として作用させるカチオン性パラジウム触媒を使用して、室温で高収率および選択的に合成することも可能です。
2. 法規情報
ジヒドロキシアセトンは、毒物及び劇物取締法、消防法、労働安全衛生法、化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法) など、主要な法規制のいずれにも該当していません。官報公示整理番号としては、化審法が(9)-594で、安衛法では公表化学物質となっています。
3. 取扱いおよび保管上の注意
取扱い及び保管上の注意は、下記の通りです。
- 容器を密栓し、直射日光を避け冷暗所に保管する。
- 分解すると一酸化炭素や二酸化炭素を発生するため、炎や高温のものから遠ざける。
- 混触危険物質である酸化剤との接触の可能性がある際には充分注意する。
- 粉塵が飛散しないように注意する。
- 屋外や換気の良い区域のみで使用する。
- 使用時は保護手袋、保護眼鏡、保護衣、保護面を着用する。
- 取扱い後はよく手を洗浄する。
- 皮膚に付着した場合は、石鹸と水で洗い流す。
- 眼に入った場合は、水で数分間注意深く洗う。
参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0104-2126JGHEJP.pdf