シレン

シレンとは

シレン (英: Cyrene) とは、常温で無色から薄い黄色のケトン臭のある透明な液体です。

化学式はC6H8O3で表され、分子量は128.13、CAS登録番号は53716-82-8です。シレンの別名としては、IUPAC名である(1R)7,8-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン-2-オン (英: (1R)-7,8-Dioxabicyclo[3.2.1]octan-2-one) や、ジヒドロレボグルコセノン (英: Dihydrolevoglucosenone) などがあります。

バイオベースの双極性溶媒であり、最終処分時の廃棄も安全で、CO2とH2Oに分解されます。環境への影響が懸念される従来溶媒の代替となる、非プロトン性溶媒です。

シレンの使用用途

シレンは医薬品や香料、特殊ポリマーなどの貴重な化学物質を製造するための、再生可能なビルディングブロックとして使用されています。また、単一の鏡像異性体として生成されるため、キラルプール合成に使用可能です。例えば、ペルオキシ酢酸などのペルオキシ酸で酸化すると、光学的に純粋な5-ヒドロキシメチルジヒドロフラノンが生成され、そこからHIV薬でもあるザルシタビン (英: Zalcitabine) が利用可能になります。

なお、シレンは汎用有機溶媒の1つであるジメチルホルムアミド (DMF) のグリーン代替品と考えられています。有機合成化学における標準的ないくつかの反応、例えば薗頭カップリングや鈴木-宮浦カップリング、尿素の製造などにおいて、シレン溶媒中で行うことができることがわかっています。

極性が最適で高粘度であり、より大きく欠陥の少ないグラフェンフレークができるため、グラフェン溶液の分散にも有用です。

シレンの性質

シレンの融点は-18℃、沸点は227℃、密度は1.25g/cm3であり、水や多くの有機溶剤と混和します。シレンの動粘度は14.5cPで、ジメチルホルムアミドの0.92cPやN-メチル-2-ピロリドンの1.67cPに比べ高くなっています。シレンは195°Cまでの温度、および弱酸および塩基に対して安定です。

シレンのその他情報

1. シレンの製法

シレンは、不飽和ケトンのレボグルコセノン (英: Levoglucosenone, LGO) を温和な条件下、不均一系パラジウム触媒で水素化することによって合成することができます。レボグルコセノンは、おがくずなどのリグノセルロース系バイオマスの酸触媒熱分解によって得られるビルディングブロックで、再生可能資源から製造できるサスティナブル材料の一つとして知られています。

   (C6H10O5)n → nC6H10O5 (Levoglucosan)
   C6H10O5 → C6H6O3 (LGO) + 2H2O

2. 法規情報

シレンは、消防法では「危険物第4類引火性液体、第3石油類非水溶性液体」に指定があり、取扱いには注意が必要です。一方で、毒物及び劇物取締法や、労働安全衛生法、化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法) など、その他の主要な法令には該当がありません。

3. 取扱いおよび保管上の注意

取扱い及び保管上の注意は、下記の通りです。

  • 容器を密栓し、直射日光を避け冷暗所に保管する。
  • 高熱で空気と反応して爆発性混合物を生じたり、引火の可能性があるため、炎や高温のものから遠ざける。
  • 眼への強い刺激があるため、接触の無いよう特に注意する。
  • ヒュームや蒸気を吸わないように注意する。
  • 混触危険物質として、強酸化剤、強力な還元剤、強酸などがあるため、これらとの接触の可能性がある際には充分注意する。
  • 屋外や換気の良い区域のみで使用する。
  • 使用時は保護手袋、保護眼鏡、保護衣、保護面を着用する。
  • 取扱い後はよく手を洗浄する。
  • 皮膚に付着した場合は、石鹸と水で洗い流す。
  • 眼に入った場合は、水で数分間注意深く洗う。

参考文献
https://www.sigmaaldrich.com/JP/ja/sds/sial/807796

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