ロボット走行軸

ロボット走行軸とは

ロボット走行軸とは、搬送、組み立て、溶接などを行うロボットの作業範囲を拡張する装置のことです。

ロボット走行軸のモジュール化によって、装置全体を機能的なまとまりとして再定義できます。ロボット走行軸は英語でRobotics Transport Systemで、MRTと略される場合もあります。

主にスチール構造で、駆動にはラックアンドピニオン (英: rack and pinion) 駆動やLMガイドが採用され、ロングストロークに対応可能です。ロボット走行軸にメーカー各社のロボットを搭載してモーターを取り付けると、ユニットとアクチュエータの組み合わせによりロボット導入時に工数を減らせます。

ロボット走行軸の使用用途

近年多くの企業で省人化のためにロボットの導入が増加していますが、ロボット走行軸ユニットやトラックモーションを工程に入れることでロボットの削減も可能です。ロボット走行軸は複数の装置がモジュール化されているため、設計や組み立てなどの工数を削減でき、設備の立ち上げに必要な時間を短縮できます。

具体的にはマシニングセンター間などにロボット走行軸ユニットが採用されています。例えば工場にマシニングが8台あり、ロボットを4台配置した工程の場合には、トラックモーションを導入して1台のロボットが2種類の作業を担当できるため、4台のロボットを2台のロボットへ削減可能です。削減した2台のロボットは省人化を検討している別の工程に移して使用できます。

ロボット走行軸の原理

ユニットとアクチュエータの組み合わせによって、ロボット導入時に工数を削減します。ロボット走行軸にはLMガイドが採用され、取付ミスアライメントに強いです。

LMガイドとは機械の直線運動部のスライドを利用してガイドする機械要素部品のことです。LMガイドはリニア・モーション・ガイド (英: Linear Motion Guide) の略で、LMブロックとLMレールの2種類の部品で構成されます。LMブロックがLMレールの上を転がって直線運動をガイドするため、長寿命かつ長時間の精度維持が可能です。

駆動仕様はベルト駆動 (英: belt drive) やラックアンドピニオン駆動から選択され、最大ストロークが異なります。

ベルト駆動は間隔がある程度開いた並行する軸間の動力伝導に、柔軟な素材で作られた輪を用いる方式です。ベルト駆動には動力の伝導を摩擦に依存するタイプと歯形の噛み合いによるタイプがあります。

ラックアンドピニオン駆動はラック・ピニオンと略される場合もあり、回転力を直線の動きに変える一種の歯車です。ラックとピニオンの組み合わせで構成され、ピニオンは小口径の円形歯車で、ラックは平板状の棒に歯が取り付けられたものです。ピニオンに回転力を加えるとラックが歯すじのある末端まで水平に動きます。ラックアンドピニオン駆動はつなぎによって設備を合わせると、さらにストロークを伸ばせます。

ロボット走行軸の構造

ロボット走行軸はラック自動給油装置、LMガイド用潤滑装置、ロボットスタンド、ケーブルチェーン、モーター取付板などで構成されています。それ以外にもアジャスタ、潤滑装置QZ、ロボット取付プレート、マルチスライダ、踏板カバー、近接センサなどのアクセサリがあります。

ラック自動給油装置や踏板カバーは保守メンテナンス性を向上させ、既存の装置の継続使用にはロボットスタンドやアジャスタを利用可能です。マルチスライダは製造で生産工程の均等なタイミングを図る際の工程作業時間であるタクトタイム (英: Takt Time) を向上させます。

ロボットスタンドは上面のプレートにロボットメーカーや機種ごとの加工済みの取付穴があるスタンドです。ケーブルチェーンは産業機械の可動部のケーブル配線をまとめて保護や案内をする装置で、モーター取付板はベルト駆動のモーターベースのことを指します。潤滑装置QZは高密度のファイバーネットをボール転動溝に接触させ、必要な位置に必要な量の潤滑油を提供します。近接センサは機械式スイッチを代替するマイクロスイッチやリミットスイッチで、非接触で検出物体の接近を検出可能です。

ロボット走行軸の選び方

ロボット走行軸にロボットスタンドやロボット取付プレートを用いるとロボットの設置が容易です。ベルト駆動とラックアンドピニオン駆動では特徴が異なるため、目的に合わせて選択する必要があります。

具体的には、最大搭載質量、最高加速度、最高運転可能速度、全幅、高さ、繰り返し位置決め精度、テーブルサイズ、アンカー固定ブラケット幅、最大ストロークなどが種類によって異なります。

ストローク端、中央、端位置を測定して繰り返し位置決め精度が決められ、搭載されたロボットの重心位置でLMガイドの寿命が変化するため設計計算が必要です。最大搭載質量はモーター、減速機、ラック・ピニオンで決められ、ロボット、ワーク、ブラケットなどの総量を示します。

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