防潮板とは
防潮板とは、防水版や止水板とも呼ばれる水害から建物を守るための板です。
大雨や高潮などの際に建物の入り口や窓に取り付けて、水が入らないようにします。同じ役目を果たすものに土嚢があります。最近では、土嚢に代えて防潮板を使用する場合が増えています。金属やプラスチックなどの素材でできており、脱着式やシート式、スライド式など様々な形状があります。
日本では河川や海辺の堤防の整備が進み、昔のように台風の度に大きな河川の堤防が決壊したり、海岸部の集落が高潮で海水に浸かることは減りました。
しかし、梅雨の時期や台風による大雨による冠水の危険性は依然として残っており、気象変動の影響を受けてゲリラ豪雨による被害が多くなってきています。このような事態に素早く対処できる手段として、防潮板の重要性が増してきています。
防潮板の使用用途
防潮板は建物や地下の入り口に設置し、道路に溢れた水の侵入を防ぎます。特に地下への水の侵入を防ぐ役割は非常に重要です。
道路に溢れた水が地下に通じる階段やスロープを通じて一気に流れ込むと人的被害が発生する危険性があります。防潮板を地下に通じる入り口に設置すれば、道路に冠水した水が地下に流れ込むのを防ぐとともに、地下にいる人々の避難誘導の時間を稼ぐことが可能になります。
その他、ビルや工場、倉庫、商店、民家の入り口等に設置して、洪水、高潮、津波などから建物の中に水が浸入するのを防ぐためにも使用されます。特に市役所、警察、消防などの公的機関や、病院などの医療機関は、水害を含む災害発生時には特に重要な役割を果たします。これらの施設が水害時に機能を失わないように、立地条件に応じて防潮板が準備されています。
その一方で、防潮板は、ほとんどの場合は地下や建物の入り口、地面に近い部分まで開いた窓の前に設置して使用します。建物全体を覆うものではないので、建物の壁や床からの水の侵入は建物自体が防ぐ機能を持っている必要があります。
防潮板の原理
水の侵入を阻止する役割を担う防潮板の板の材質には、金属 (アルミ・ステンレス等)、シート、木製などがあります。金属板は耐久性が高く、シートは軽量でコンパクトに収納できるという利点があります。また、木製のものは自然に溶け込む雰囲気を持っています。
設置方法は、普段は倉庫に格納し必要時に設置場所に持ってきてレバーやボルトで固定するものと、使用場所にあらかじめ設置されている機械式のものがあります。後者の例には、使用場所の地面下に収納されているものを引き出したり、床板を起こして防潮板とするもの等があります。
普段は倉庫に保管していて必要時に持ち出して使用する、金属板や木製の防潮板は、乾燥した上で、倉庫などの保管場所に立てかけて保管するか、専用のケースに入れて収納します。シート式の防潮板は折りたたんで袋に入れて収納します。
機械式の防潮板
機械式には、手動式と自動式があります。
自動式の場合は、水位センサーや電磁石などで水の侵入を感知して自動的に開閉するものがあります。水位センサーは、水位が一定以上に上昇すると信号を送って防潮板を起動させます。電磁石は、電源が切れると磁力が失われて防潮板が開く仕組みになっています。
防潮板を使わない時の保管方法や収納方法は、材質や設置方法によって異なりますが、機械式の防潮板は手動方式、自動方式共に、敷設されている地面下などの収納場所に収納します。東京メトロの地下駅への入り口などは、駅の機能の一部として止水板や完全防水扉を敷設しています。
防潮板の選び方
防潮板には、様々な規模や機能を持ったものがあります。選択する際には防水性能、設置方法、設置場所の地域の実情を考慮して選択することが推奨されます。防潮板の止水性能は「漏水量」で表されます。これは1m2当たり1時間に何Lの水が侵入してくるかで表示されています。
設置方法については、既存の建物の入り口に必要時に保管場所から持ってきて手動で設置します。緊急時に人手が足りなかったり、設置が難しくて時間がかかるなどして設置が間に合わなければ、防潮板の役割を果たすことができません。防潮板を使用する場所や建物の想定される浸水の規模を知ることが非常に重要です。