リニアシャフトとは
リニアシャフトは、対象物を直線運動させる際にガイドとして使用される耐摩耗性に優れた高精度の丸棒です。
リニアシャフトはリニアブッシュやドライベアリング等と共に用いられます。リニアシャフトに対してリニアブッシュを滑らせることで、リニアブッシュを直線的に動かすことができます。
リニアシャフトは安価に高精度な直線駆動をさせるためには欠かせない機械機構部品です。標準化が進んでおり、標準品の中から選択すれば安く手軽に高精度な直線運動をさせることができます。また、リニアシャフトは LMシャフトとも呼ばれ、様々な機械や装置に広く使用されています。
リニアシャフトの使用用途
エアシリンダやモーターによる直線駆動では、動作軸方向に垂直方向の剛性が弱く、真直度が出ないため、リニアシャフトは直線運動の補助として使用されることがあります。この場合、エアシリンダやモータにリニアブッシュを取り付け、リニアブッシュをリニアシャフトに取り付けます。エアシリンダやモータを、リニアシャフトに倣って動作させることで、動きの精度を高めることができます。そのため、リニアシャフトは工作機械や計測機械などの精密機械などでもよく使われます。また、エアシリンダやモーターに負荷がかかる場合、剛性を高める目的でも使用されます。
静止時の振動が極めて小さく高速移動が可能なリニアシャフトを使ったリニアシャフトモーターも発売されており、加工装置の位置精度が必要な箇所などで使われています。
リニアシャフトの原理
リニアシャフトによる直線運動を可能にするため、以下の特徴があります。
1. 外径
リニアシャフトの外径は、精度良く仕上げられ、通常は g6、h7 といった隙間嵌めのはめあい公差が用いられます。リニアシャフトと合わせて用いる、リニアブッシュの仕様を考慮して決められる場合が多いです。
2. 材質
材質は強度のある鉄やステンレスが一般的です。リニアシャフトに対してリニアブッシュなどが動作する際、リニアシャフトは摺動により摩耗するため、高周波焼き入れを行うことで耐摩耗性を高める場合もあります。また、耐食性を高めるために硬質クロム処理などの表面処理も用いられます。
耐摩耗性を高めるために焼き入れを施すと、硬度が上がるので、購入後に追加工する場合は注意が必要です。
3. 端末加工
リニアシャフトを装置に組み込む際、リニアシャフトに別部品を取り付けることが多いです。そのため、リニアシャフトに端末加工を施すことで、装置に取り付ける際の位置決めや、別部品の取り付けを出来るようにします。よく使用される端末加工として、以下が挙げられます。
- 段付き形状
- Dカット
- キー溝加工
- タップ加工
リニアシャフトの選び方
上記のように、リニアシャフトは、外径、材質、表面処理、精度、形状などによって、様々な種類があります。そのため、リニアシャフトを選ぶ場合には、以下のポイントを考慮して選定する必要があります。
- リニアシャフトにかかる負荷を考慮して適切な軸径を選択する。
- リニアブッシュやドライベアリングとの嵌め合いを考慮して、適切な公差を選択する。
- 必要に応じて耐摩耗性を高める焼入れや、耐食性を高める防錆処理を行う。
- 必要に応じてリニアシャフト自体や別部品の取り付けのため、端末加工を行う。
リニアシャフトのその他情報
リニアシャフトと同様に高精度な直線度を実現する機械要素としてリニアガイドがあります。リニアガイドは、レールとブロックからなる機械要素で、レールに沿ってブロックが直線運動します。通常、リニアガイドのレールは全面が支持されますが、リニアシャフトの場合は端部のみ支持されます。そのため、リニアシャフトに軸と垂直方向の負荷がかかる場合、負荷と支持点の距離が遠く、曲げ剛性ではリニアガイドに劣ります。高精度、高強度が必要な場合はリニアガイド、安価で簡略化したい場合はリニアシャフトと目的にあわせて使い分けるのが一般的です。
参考文献
https://www.smri.asia/jp/yskaxxel/products/1167/
https://www.aperza.com/catalog/page/12/14664/