リファレンスICとは
リファレンスIC(英語: Reference integrated circuit)とは、電子回路を動作させる際に基準となる電圧を出力する電子部品のことです。また、そのような電子回路のことをリファレンス回路や基準電圧源と呼ぶこともあります。
リファレンスICの性能には、出力される基準電圧の初期精度、ラインレギュレーションと呼ばれる電源電圧の変動に対する安定性、ロードレギュレーションと呼ばれる負荷の変動に対する安定性、温度ドリフトと呼ばれる周囲温度の変化に対する安定性、長期ドリフトと呼ばれる長期間の使用に対する安定性などがあり、ppm(0.0001%)オーダーの高い精度で安定した電圧出力を維持することが求められています。
リファレンスICの使用用途
リファレンスICは、基準電圧を必要とするさまざまな電子回路に用いられています。電源の制御回路では出力電圧を基準電圧と比較することで出力電圧を一定に保つように制御しています。ADコンバータやDAコンバータでは入力電圧と基準電圧の比較によって適切な出力に変換されます。電圧検出器では基準電圧との比較で検出判定を行います。
そのため、これらの電子回路の性能はリファレンスICの性能に影響されます。特に、科学、医療、車載、軍事、航空、宇宙などの分野においては高い精度のリファレンスICが要求されます。
リファレンスICの原理
リファレンスICの構成にはシャント型と直列型の2種類があります。
シャント型はリファレンス出力とグラウンドの2端子で構成されており、2端子間に流れる電流によらず一定の電圧降下を保つように制御されます。使用する際には、ICを負荷に対して並列に接続し、電源とリファレンス出力の間に外部抵抗を接続します。電源電圧や負荷の変動によってICに流れる電流が変動しますが、ICの制御によってリファレンス出力の電圧は一定に保たれます。
直列型は電源入力とリファレンス出力とグラウンドの3端子で構成されており、使用する際には電源と負荷の間にICを直列に接続します。電源電圧や負荷の変動に対して、ICの内部抵抗を変化させることで、リファレンス出力が一定電圧を保つように制御されます。
現在よく用いられるのは、バンドギャップリファレンスという方式です。正の温度係数を持つ電圧と負の温度係数を持つ電圧を合わせることで、温度の変化に対しても安定した電圧出力を維持することができます。
リファレンスICを使用する際には、用途に応じて必要な性能が得られるように、精度や安定性だけでなく、起動時のセトリング時間やノイズ特性なども含めて、適切に選ぶ必要があります。
参考文献
https://ednjapan.com/edn/articles/1102/01/news110.html
https://www.maximintegrated.com/jp/design/technical-documents/app-notes/2/2879.html