プログラマブルディレイライン

プログラマブルディレイラインとは

プログラマブルディレイライン (英: Programmable delay line) とは、電気信号の伝搬時間を遅らせるディレイラインと呼ばれる電子回路の1種です。

遅らせる時間をプログラムによって変更できます。そのほか、受動素子のみで構成されたパッシブディレイラインや、外部ICを駆動できるアクティブディレイラインがあります。

信号を任意の時間だけ遅らせることで、他の信号とタイミングを合わせたり、意図的に時間差を持たせたりすることが可能です。通信機器をはじめ、さまざまな電子機器に使われています。

プログラマブルディレイラインの使用用途

プログラマブルディレイラインは、データ信号とクロック信号のタイミングを合わせるために用いられています。特に、高速になるほど僅かなタイミングのずれが問題になるので、正確に調整できることが重要です。

そのほか、信号のパルス幅変換や発振回路、周波数マルチプライヤーや周波数ディスクリミネータなども用途として挙げられます。応用分野は、医療、放送、軍事、宇宙などです。各種検出機器や通信機器などにおいて、正確にタイミングを合わせなければならない場合に用いられます。

プログラマブルディレイラインの原理

プログラマブルディレイラインは、インダクタンスLとキャパシタンスCで電気信号の伝播を遅延させるシンプルな原理です。プロセスや温度、電圧などの条件が変化しても、規定の遅延時間を精度良く出すディレイラインを作るのは難しいとされています。

精度を高める1つの方法として、フィードバックが挙げられます。規定のディレイ時間に対する誤差を求め、その誤差を小さくするようにディレイラインにフィードバックします。電源電圧の調節などを行い、遅延時間を制御します。電圧を高くすると、ディレイ時間を短くすることが可能です。

遅延誤差を求める方法としては、電圧を周波数に変換する方法が挙げられます。ディレイラインの出力を反転させて入力にフィードバックすると、遅延時間1/2の周波数が出力されます。この機構は電圧制御発振器 (VCO) と呼ばれています。

プログラマブルディレイラインの構造

プログラマブルディレイラインは、信号を遅らせるディレイラインと、任意の遅延時間を選択するマルチプレクサから構成されています。ディレイラインを構成する方法はいくつかあり、現在最も用いられているのは、インダクタンスLとキャパシタンスCのはしご型の伝送回路網です。

N段のはしご型回路の遅延時間は、1区間あたり√(L×C)、全体でN×√(L×C)となります。他の構成として、論理ゲートの伝搬遅延時間を電源電圧で制御する電圧制御ディレイライン (VCDL) を用いる方法もあります。

マルチプレクサではしご型回路の任意の段をアドレス信号により選択することで、所望の遅延時間を得られます。プログラマブルディレイラインを用いる場合には、遅延時間の正確さ、周波数特性や位相特性の良さ、損失の少なさ、温度特性の良さなどの特性を考慮し、用途に応じて必要な性能やビット数を満たすようにすることが重要です。

プログラマブルディレイラインのその他情報

1. 特性インピーダンス

ディレイラインは同軸ケーブルのような伝送路であり、固有の伝送インピーダンスを持ちます。特性インピーダンスは、回路内のインダクタンスとキャパシティに依存したパラメータです。波形歪を少なく伝送するために、特性インピーダンスがディレイライン内で均一であることが重要になります。

2. 立上り時間

ディレイラインが固有に持つ立上り時間は、最小伝送パルス幅を制限します。パルス幅が狭いと、高い周波数成分を持つことになるため速い立上り時間が求められます。

ディレイラインを無理なく通過するパルス幅は、ディレイラインの持つ立上り時間の3倍以上が必要です。

参考文献
https://jpc-inc.co.jp/wp-content/themes/jpc-inc/pdf/DL.pdf
https://engineer-education.com/delay-line/
https://pdfserv.maximintegrated.com/jp/an/A4617J.pdf

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