近赤外線ヒータ

近赤外線ヒータとは

近赤外線ヒータとは、近赤外線を照射して、熱源が得られるヒータユニットのことです。

赤外線ヒータは、遠赤外線ヒータ、中赤外線ヒータ、近赤外線ヒータに区分されています。近赤外線ヒータは、赤外線の中でも比較的波長が短い近赤外線を熱源として照射するため、短波長赤外線ヒータとも呼ばれています。赤外線ランプやハロゲンヒータなどは、近赤外線領域だけに放射エネルギーが存在するため、強力な光が放射され、視感的にも判断しやすい近赤外線ヒータです。ONとOFFによる応答性も速く、高温領域を取りやすいです。

熱源はライン状、スポット状、面状など、さまざまな種類が得られます。シーズヒータ、カートリッジヒータ、プレートヒータなども高温加熱が可能であり、近赤外線ヒータや中赤外線ヒータと呼ばれる場合もあります。

近赤外線ヒータの使用用途

近赤外線ヒータは高出力で、ONとOFFのスピードが速いため、工業用赤外線ヒータとして使用されています。工業的な赤外線ヒータの利用例として、フィルムやシートの加熱や乾燥のほか、PET (英: PolyEthylene Terephthalate) の延伸や炭素繊維複合材料 (英: Carbon Fiber Reinforced Plastics) のプリプレグ成形などが挙げられます。

近赤外線ヒータは温度安定時間が非常に短いため、タクトでの加熱プロセスに適切なヒータです。立ち上がりや立ち下がりにも優れており、緊急停止が重要なプロセスでも適しています。

また、ハロゲンランプによって照射される輻射熱を用いているため、非接触かつクリーンな加熱が可能です。不活性ガス中や真空中の加熱以外にもガラス越しの加熱などに使用可能です。

また、樹脂加熱成形分野で、近赤外線ヒータの需要も強まっています。金属鋼板を代表として、かつては遠赤外線ヒータによる加熱が中心だった紙やガラスの製造にまで、近赤外線ヒータが使用されるようになりました。さらに、棒状の管型近赤外線ハロゲンヒータは、応答性と昇温性能が優れているため、最近注目されています。

近赤外線ヒータの原理

近赤外線による加熱は、電磁波による加熱です。電磁波は光の一種です。可視光より外側の0.78μm~1mm程度の波長域の電磁波である赤外線を使用して、放射加熱します。とくに近赤外線は可視光に近い電磁波で、とてもエネルギー密度が高いです。

1. 融点

近赤外線ヒータに使用する白熱電球は、電流により発熱体を白熱状態に熱して光を放射します。通常の白熱電球には、融点がおよそ3,400°Cのタングステンフィラメントを使用可能です。タングステンは高融点ですが、融点以下でも蒸発が開始するため、フィラメントはやせ細り最終的には切れて、寿命が来ます。

2. 黒化

蒸発したタングステンはランプのバルブ内壁に付着して黒化するため、外部に放射される光が徐々に減り、20割近く減少します。このようなタングステンの蒸発による黒化を防止して長寿命化するためには、ハロゲンガスが有効だと判明しました。

3. ハロゲンサイクル (英: Halogen Cycle)

点灯中のフィラメントから蒸発した高温のタングステンがハロゲンガスと反応すると、ハロゲンとタングステンの化合物が生じます。ハロゲンとタングステンの化合物は250〜1,400°Cで状態を維持できるため、バルブが250°C以上の場合にはバルブの内壁にタングステンが付着せず、黒化も起きません。

熱対流によりハロゲンとタングステンの化合物はフィラメント付近まで運ばれて、ハロゲンとタングステンに分解されます。したがって、自由になったハロゲンも次の反応を繰り返し、タングステンはフィラメントに再生可能です。この一連の再生循環作用は、ハロゲンサイクル (英: Halogen Cycle) と呼ばれています。

被加熱物に赤外線が放射されると、吸収、反射、透過のいずれかが起こり、必ずしも吸収されるわけではありません。吸収が多いほど、効率的に被加熱物を加熱できます。したがって、ヒータから放射される近赤外線の波長に、被加熱物である製品の吸収波長が合うことが重要です。ヒータの表面温度が高いほど、ヒータから放射されるエネルギーのピーク波長は短くなります。例えば近赤外線ヒータでは、ヒータの表面温度が2,000℃であり、ピーク波長はおよそ1.3μmです。

近赤外線ヒータの選び方

素材が吸収する波長は、素材の表面の材質によります。一般的な金属の吸収波長は、近赤外線付近にあります。ただし表面状態に依存するため、表面が酸化したり、塗料を塗ったりした場合には、吸収波長は変化します。放射率は温度や波長で変わり、素材の表面の放射率が高いほど、吸収は大きいです。さまざまなパラメータを考えて、適切な赤外線ヒータを選ぶ必要があります。

また、反射率が高くて吸収率が低い材質で囲うと、効果的に反射波を使用できます。さらに、透明素材によって透過を効果的に利用すれば、素材内部の加熱と板厚方向の均熱化が可能です。

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