硬さ基準片とは
硬さ基準片とは、金属の硬さ試験をする際に硬さ試験機の確らしさを確認するために使用する基準片 (試験片) です。
硬さが明らかな基準片で硬さ試験を行い、既知の値と同等の試験結果が得られたならば、その硬さ試験機は正しい試験が行えるものと判断することができます。硬さとは、ある定義によって定められた試験を行った際に得られる結果であり、重さなどといった物理量ではありません。
そこで、使用する硬さ測定機で試験を行い、基準の値が出力されるかを確認するために使用します。
硬さ基準片の使用用途
硬さ基準片は、主に金属材料部品の製造現場で用いられます。特に熱処理工程においては、金属組織試験とともに熱処理工程の品質確認として、硬さ試験は重要です。さらに、正しい硬さ試験を行う上で、硬さ基準片による確認は欠かすことができません。
産業用部品や試験部品で特に熱処理を施し、所定の硬さが必要とされる部材や部品の品質を確認する際の1つの確認項目として、硬さを確認する場合があります。硬さを確認する際には、事前に硬さ基準片にて、所定の硬さが出力されるかを確認します。
硬さ試験には複数の試験方法とスケールと呼ばれる種類があります。硬さ標準片も、実際に行う試験方法とスケールにあった試験片が必要です。
硬さ基準片の原理
硬さ標準片は、標準片内において硬さにばらつきが少ないこと、経年変化をしないことが必要です。材料にはSKS3、SK85、C2600P、S10C、S45Cなどが用いられます。
詳細は「JIB B 7730 HR硬さ基準片規格」「JIS B 7731 HS硬さ基準片規格」「JIS B 7735 HV硬さ 基準片規格」「JIS B 7736 HB硬さ基準片規格」で定められています。
硬さ基準片のその他情報
1. 硬さ試験の必要性
工業の分野において熱処理を施し、必要な機械的特性を得ることは多いですが、引張り強さ等の材料強度に関する品質を確認する際、該当の強度確認をすることは時間的にも金銭的にも合理的ではありません。場合によっては、破壊試験でなければ確認できないものもあります。この品質確認を代替特性として使用することが多いのが硬さ試験です。
硬さ試験は比較的容易で、表面硬さを測定する場合であれば、測定時に微小の測定痕が付きますが、後工程 (旋削や研削) の加工取り代にて、測定痕を除去できるほどの大きさで測定することができます。
例えば、比較的高硬度を測定するHRCスケールでは、硬さ測定は、被測定物に所定の寸法を持つ高硬度の圧子を所定の荷重で押しつけ、被測定物の表面に生成されたくぼみのサイズより硬さを算出します。
2. 硬さ試験の意味
硬さ基準片は、試験時に生成されるくぼみが、既知の基準値内に収まるように作られています。ただし、硬さ基準片は硬さの絶対値を保証するものではなく、所定の範囲の硬さであることを保証しているものです。
これは、硬さ基準片 (所定の範囲の硬さであることを保証すること) を校正する圧子も絶対値を校正しきれないことが影響します。よって硬さ基準片は、硬さの絶対値を保証するものでなく、所定の範囲の硬さが出力されることを保証するものです。
3. 硬さ標準片の耐用度
硬さ標準片には十分な熱処理が施されており、硬さは経時変化するものではありません。しかし、試験による圧痕の周辺部には加工硬化が生じるため、一度できた圧痕の近くで試験をすることは避けるべきです。圧痕の間隔は、その大きさの4倍を確保することが望ましいとされています。
このため、硬さ標準片は使用できる限界があり、圧痕が大きいほど使用可能な回数は少なくなります。目安として60HRCの標準片で約500回、30HRCの標準片は約260回、90HRBの標準片は約250回、60HRBの標準片は約200回程度とされています。
参考文献
https://www.sanko-web.co.jp/products/products_cat/01/
http://www.asahigroup.net/standardized-blocks.html
http://o-kk.com/altimater/