サイリスタモジュール

サイリスタモジュールとは

サイリスタモジュールとは、半導体整流素子の1つであるサイリスタを、用途にあわせて転流回路などを集積し、モジュール仕様にして使いやすくした製品です。

ある回路中に入力信号に応じたスイッチの機構を持たせたいときに使用します。一般に、回路設計の際のリレー部品として組み込まれることが多いですが、その挙動に似たものとしてダイオードとトライアックがあります。

実装したい処理に応じて、入力信号に対して異なる出力をするモジュールを使い分けることで、さまざまな入力に対して得たい出力を制御することが可能です。

サイリスタモジュールの使用用途

サイリスタモジュールは 大電力用インバータ回路の突入電流防止用途や電流の産業機器の電力制御、電車のモータ制御他、幅広い用途で用いられています。スイッチとしての役割を担い、一度導通するとその時に生じた電流がなくなるまでは導通し続けるという特長を生かしたい回路設計の場面に組み込まれています。

例えば、サイリスタは身近な例としてカメラなどのフラッシュに適用されます。フラッシュはスイッチが押された瞬間に発光し、その電荷が完全に放出されるまで光り続けることが求められます。

そのような動きを一回の接点開閉だけで表現しようとしたときに、サイリスタモジュールを用いることで簡単に実装することが可能です。

サイリスタモジュールの原理

サイリスタモジュールの原理は、大電流を扱う機器において簡便に回路を遮断するために、ゲートバイアス印加で動作する整流素子であるサイリスタを、放熱性の良いパッケージやゲートをオフする転流回路などを集積し使いやすくしていることにあります。

サイリスタの内部構造は、ダイオードにゲート端子と呼ばれる端子が付加された構造であり、PNPNの4層構造が特徴です。サイリスタは、回路内にアノード側からカソード側へ正のバイアスがかかった状態でかつゲート電流が流れない限り導通しないという特徴を有します。

一度ゲート電流が流れれば、ダイオードと同じく導通した状態になり、次にアノード側からカソード側へのバイアスが負になるか、ゲート電流が0になるまでは導通し続けます。ちなみに、サイリスタでは一方向のバイアスでしか導通しませんが、双方向のバイアスに対してゲート電流が流れている間動作させたい場合には、サイリスタを双方向へ設置した構造になっているトライアックが用いられます。

サイリスタモジュールのその他情報

1. サイリスタの転流回路

交流では零クロスの時点でゲートを確実にオフにできるサイリスタも直流での動作の場合、ゲートがオンした後は遮断することができません。その際によく用いられるのが、転流回路と呼ばれる回路です。

転流回路とは、転流用のサイリスタとRC回路などを主線路と並列に具備しそちらのゲートバイアスをオンすることで、主線路の電流を吸い取ってしまう回路です。この回路は大電力用途でよく用いられています。

2. GTOサイリスタとGCTサイリスタ

ともに転流回路を有したサイリスタデバイスであり、GTOは「Gate Turn Off」の略称であり、GCTは「Gate Commutated Turn off 」の略称です。例えば、GTOの場合は、ゲートに負電流を流すことでアノードとカソード間の自由電子を引き抜き、その結果電流をオフ状態にすることが可能です。

ただし、十分な電流容量を確保せねばならず、ゲートオフのための大電流用のゲート回路が必要です。

3. IGBT化とSiC-MOSFET化の流れ

サイリスタモジュールはパワーモジュールの一部として現在も広く用いられていますが、昨今の次世代パワーデバイスの主流である、高性能なIGBTモジュールやSiC-MOSFETにその座を明け渡しつつあります。

しかし、鉄道車両や大電力を扱う分野においては、やはり必要なモジュールであり、例えば、IGBTモジュールの非常に大きな突入電流の制御のためにサイリスタモジュールを活用するような複合モジュール的な製品も存在しています。

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