ドライミスト

ドライミストとは

ドライミスト (英: mist spraying) とは、微細な霧の状態にした水を噴射して、局所を冷却するための装置のことです。

ミストは霧を意味し、噴霧、霧散布、ミスト散布とも呼ばれています。古くはエアウォッシャー (英: Airwasher) を備える蒸発冷却として、1910年に千葉県庁や1914年に東京大学六角講堂で使用されていたと言われています。2007年には住宅向けとして小規模設備の開発も始まり、現在では一般住宅の庭などに設置可能な製品も開発されました。

ドライミストによって周辺の気温を2〜3°C下げ、必要なエネルギーは家庭用のエアコンと比べて20分の1程度です。ドライミストの散布量は、真夏のクスノキ林の蒸散量を目安にして開発したとされています。人体へ霧を接触させるかどうか、または滴下の可否など、要求される冷却効果や設置施設の特性を考慮して、散布量は決められます。

ドライミストの使用用途

ドライミストは水と少量のエネルギーのみで、気温を効率的に下げるため、環境にやさしい技術です。そのため、都市部のヒートアイランド現象を緩和し、半屋外空間での暑さ対策に有効です。とくに夏に、歩行中の熱中症リスクを軽減できます。加えて、工場の作業場にある機械の排熱などにも役立ちます。

具体的には、イベント会場を代表として、バス停、駅、空港、アミューズメント施設、アーケードのような、さまざまな場所での暑さ対策に使用可能です。それに加えて、地球温暖化対策にも効果があります。実際に愛知万博では、グローバルループ、オーストラリア館、ワンダーサーカス電力館などに設置され、六本木ヒルズ、新丸ビル、五稜郭タワーなどで用いられています。

ドライミストの使用によって、夏の電気使用量を抑制可能です。ドライミストの代わりに、エアコンを使用した場合には、低い温度で使用し続けると、電気代も高くなります。さらに、エアコンが排出する二酸化炭素 (CO2) の量も増加し、地球温暖化が促進されます。

ドライミストの原理

ドライミストは、水が蒸発するときの気化熱が吸収される原理を利用しています。気化熱とは、水分が巻き上げられた際に、空気中に漂っている熱も同時に奪うことです。

専用の機器へ接続し、水を大量に流すと、空気中にミストが生じます。発生したミストは、空気中に見えないサイズのまま漂っており、風によって周囲に拡散します。そして、空気中の熱を包み込んでくれるため、水分の蒸発とともに熱を相殺可能です。結果として、周辺の熱が奪われて、体感温度が下がる効果を発揮しています。

レーザーを噴射ノズルから50mmの距離で用いた際に、フランホーヘル回折 (英: Fraunhofer Diffraction) による水の粒子のザウター平均値 (英: Sauter mean) は、16μmと非常に小さいです。そのため、ドライミストで服や肌が濡れることもなく、水はすぐに蒸発します。散布に必要となるエネルギーは、毎分20.3Lで3.35kWほどです。

ドライミストの構造

ミスト装置には、ラインミストシステムとミストファンシステムがあります。ラインミストシステムはミストノズルと給水管を取り付けるシステムで、ミストファンシステムはミストノズルとミスト専用送風機を取り付けるシステムです。標準的なミスト装置は、ミストファン、水抜きドレイン、フィルター、給水管、ミストノズル、ミストポンプ、水源、電源などで構成されています。

ミストファンは、大気中のミストの漂流時間を長くでき、気化を促進し、広範囲にミストによる効果を与えます。自動水抜きドレインを加圧ポンプ周辺の給水管に取り付けると、カルシウムの付着が原因のミストノズルの目詰まりを防止可能です。また、ポンプを停止したときに、水滴の落下を防止します。フィルターも、加圧ポンプの前にある給水管への目詰まりを防ぎます。ミストノズルには、さまざまな噴霧孔サイズがあります。噴霧孔が小さいほど、ミストの粒子が細かくなり、気化もしやすいです。ミストノズルの水量に合わせて、ミストポンプにより流量を決定可能です。

それ以外にもミスト装置は、エアレギュレーター、ボールバルブ、ウレタンチューブ、ワンタッチチーズ、ワンタッチストレート、水減圧弁などの部品で構成されています。ウレタンチューブの配管にワンタッチチーズが必要です。ボールバルブや水減圧弁は、複数台に使用できます。

ドライミストの種類

噴霧の方法には、水と空気の2液式のほか、特殊高圧ポンプを用いて水だけを圧送できる1液式もあります。機器やホースが大型の装置の場合には、設置できる箇所が限られます。

ドライミストの噴霧装置は、気象条件に応じて、自動で運転制御も可能です。湿度、気温、日射、降雨、風速などの、それぞれのセンサーの信号に基づいて、自動的にドライミスト運転制御盤によってコントロールしています。その一方で、コンピュータを使用した遠隔操作も可能です。

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