帯電防止材とは
帯電防止材とは、電気抵抗が大きく帯電やすい素材に対して、帯電防止剤を練りこんで静電気が溜まりにくいようにして成形された材料のことです。
素材の表面に帯電防止フィルムを貼るなどして帯電を防いだ素材を指す場合、帯電防止フィルムや帯電防止テープなど、帯電を防止するための材料を指す場合があります。
静電気はプラスチックなど電気を通しにくい物質の表面に溜まります。プラスに帯電しやすい物質とマイナスに帯電しやすい物質を相対的に並べたものを帯電列と言います。帯電列によるとプラスに帯電しやすい物質としてナイロンがあります。一方でマイナスに強く帯電しやすい物質としてテフロンやポリエステルがあります。電気を投資にくい物質の中で相対的にプラスとマイナスの中間にあるものとして綿があります。
このように、プラス若しくはマイナスの静電気が溜まった物質を反対側の電気が溜まった物質に近づけたり、金属のように電気を通しやすい物質に近づけると、急激な電気の移動、即ち放電が発生します。この放電に伴う悪影響には放電で発生した火花で周りのものに引火、爆発を起こす危険が有るほか、電子回路などを破壊する、人の場合は電気ショックを感じるなどがあります。
また、静電気が溜まっている物質には空気中の埃を電気的に吸い寄せる力があります。プラスチックの表面が短時間で均一に汚れてくる場合には静電気の力が働いている可能性があります。
帯電防止材の使用用途
帯電防止材は、静電気が原因による破壊や故障を嫌う、製造現場や電子機器類などで広く使われています。
半導体や電子部品の製造工程では静電気によっておこる破損、静電気破壊に非常に気を付けています。半導体の製造工場ではウエハーをハンドリングするロボットのアームをはじめ、治具類、保管や移動のためのケースなど至る所で、発塵対策と共に静電気対策が施された部材を使用しています。それは、クリーンルーム内で働く人たちに対しても同じで、クリーン・スーツやクリーン・ブーツ、クリーン・グローブなども帯電防止機能を持っています。
身近なところでは、セルフ式のガソリンスタンドにある給油前に触れる静電気除去シートが挙げられます。静電気除去シートはゴムでできていて、緩やかに、体内に溜まった静電気を逃がす機能を持っています。
帯電防止材の原理
ここでは、プラスチックに帯電防止剤を加えて成形加工し、帯電防止材とする方法について記述します。
帯電防止機能を持った部材を製造する方法としては、母材となるプラスチックに帯電防止材を添加剤として混ぜ込み一体成型する方法と、射出成型法を使った成形の最後の方で、帯電防止材を母材に流し込み、表面に帯電防止膜を作る方法の2つがあります。
前者の方法では、帯電防止材として界面活性剤系の添加剤を使用しています。プラスチックの表面付近にある帯電防止剤は、親水基を外側にして膜を形成します。親水基は空気中の水分子を取り込み、表面に水の薄膜を作ります。帯電した電子は、この水の膜を通って外部に流れてゆきます。
このタイプの添加剤は、プラスチックの上面にある添加剤が時間の経過とともに少しづつ蒸発したり、拭き取りなどによって失われてゆきます。それに従ってプラスチックの内部にある添加剤が表面付近へと移動してきます。やがてプラスチック中の添加剤の量が少なくなり、帯電防止効果は低下してきます。
後者の射出成型法で添加剤を注入する方法では、プラスチックの中で移動しない永久帯電防止剤を使います。永久帯電防止剤は母材のプラスチックよりも溶融温度が低い高分子であり、成型の際に母材の表面に帯電防止の膜を形成します。プラスチックの表面に永久帯電防止膜を成型するためには、高度な成形技術が必要とされています。
帯電防止材の種類
帯電防止材には、帯電防止機能を付加されたプラスチック以外にも、既存の製品や部品の帯電を防ぐための様々な製品があります。
ディスプレイなどパネルの表面に貼って静電気を防ぐ透明の帯電防止フィルム、フロアに敷いたり、大きな機械などの覆いにつかう帯電防止シート、プラスチックの表面にスプレーなどで吹きかけて使う帯電防止剤など、様々な帯電防止のための製品が市販されています。