ノックピン

ノックピンとは

ノックピン

ノックピンは、工業製品の組付け精度を確保するために用いられる治具です。

工業製品の分解整備の際、特に組み付け精度が求められる接合部に用いられ、接合時のガイドとしての役割のほか、組み付け時のズレや外部からの衝撃によるズレを防止しています。

通常、機械部品にノックピンが入る穴を設け、片方にノックピンを打ち込んだ後もう片方の部品を組み合わせるという方法で、接合部1箇所あたり2本使用されるのが一般的です。

ノックピンの使用用途

ノックピンは、高精度な位置決めが必要な部品同士の組み合わせに使用されます。特に、自動車部品で使用される場合が多いです。具体的な使用用途は以下の通りです。

  • シリンダーヘッドとシリンダーブロック (クランクケース) の接合部
  • エンジンとトランスミッション (クラッチハウジング・トルクコンバータハウジング) の接合部
  • ディファレンシャルギヤとアクスルハウジングの接合部等

そのほか、回転部分や駆動部分など、動力伝達を行う部分の合わせ面にもノックピンが使用されています。

ノックピンの原理

ノックピンはラジアル方向 (軸と垂直) のズレを食い止めるものです。一般的に、1本だけではその部分を支点としたズレが発生してしまうため、2本以上が等間隔もしくは対角線上に並ぶようにして使用されます。ピン径公差がプラス側にしか設定されておらず、圧入による使用が前提とされているため、平行ピンよりも精密な組付けを行うことができます。

ノックピンの種類

ノックピンはJISにおいては、ダウウェルピンと呼びます。ダウウェル (Dowel) はダボと訳され、ダボとは木材や石材同士を接合するためのものです。主に木工事や石工事などで使用されます。

部材間の位置ずれを防ぐために、互いの部材に穴を開けて差し込まれるものであり、ノックピンと同じ役割を果たします。またJISではダウウェルピンについて、2つの規格があります。

  • JIS B1355: ダウウェルピン
  • JIS B5062: 金型用ダウウェルピン

JIS B5062は名前の通り、金型に使われるダウウェルピンの規格です。プレス金型、プラスチック金型、ダイカスト金型、ゴム金型に使うノックピンについては、こちらのJISに従って製造されています。特徴的なのは、ねじ穴があるものが規定されていることです。

ピンの内径にねじ穴があり、相手部品にねじ込むことで固定することができます。ねじがないタイプをA形と呼び、ねじ穴があるものはB形と呼びます。

ノックピンのその他情報

1. 平行ピンとダウウェルピンの違い

ノックピンと同様に扱われるものとして、平行ピンがあります。平行ピンは外観上はノックピンと同じです。また、前述したダウウェルピンのJIS B1355は、「Dowel pins (Parallel pins, hardend) 」という意味で、ダウウェルピンを硬化した平行ピンと表記しています。実用上両者を厳密に区分けする必要性は低いのですが、JISの定義は異なります。

平行ピンはJIS B1354で定められており、ダウウェルピンとの大きな違いは以下の3つです。

  • 直径
    ダウウェルピンが直径d=1~20mmで定めているのに対して、平行ピンは直径d=0.6~50mmとより幅広く規定しています。
  • 材料と熱処理
    ダウウェルピンは硬化処理したものに限定していますが、平行ピンでは硬化処理については言及していません。ただし、硬さについての規格は設けられています。材料はダウウェルピンが鋼製およびマルテンサイト系ステンレス鋼製であるのに対して、平行ピンは鋼製およびオーステナイト系ステンレス鋼製としています。
  • はめあい公差域
    ピンの直径の公差が異なります。ダウウェルピンの公差域はm6であるのに対して、平行ピンではm6かh8で規定しています。m6はH7の穴と組み合わせた場合、組立・分解に鉄ハンマ・ハンドプレスを使用する程度のはめあいとされています。h8の軸はH8と穴と組み合わせた場合、潤滑剤を使用すれば手で動かせるはめあいです。

2. ノックピンの使用上の注意

ノックピンがついた部品の脱着の際には、ノックピンも共に引っ張られてしまい抜けてしまう場合があります。再組付け時にはノックピンがきちんと奥まで挿入されているか確認してから組み付ける必要があります。

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