冗長電源

冗長電源とは

冗長電源とは、ネットワーク上のサーバーやネットワークスイッチなど、瞬時の停電でも他に与える影響が大きい機器が2つ以上の電源ユニットを持ち、電源トラブルに対してより安全な対策をしていることを指します。

病院や工場などで電力会社からの電気の供給が途絶えた停電の際に、自家発電装置を起動して、最低限必要な電力を確保して、電気の供給の復帰を待つ仕組みのことを言う場合もあります。

IT分野における「冗長」とは、1つのシステムや機器が故障などで動作不能に陥った際に、その影響を最小限にとどめるために予めバックアップを用意し安全性を高めることを意味します。

ここでは、サーバーやネットワークスイッチなど個々の機器の電源について、その機器に複数の電源ユニットが組み込まれていて、電源トラブルに対応できるようになっている状態を「冗長電源を備えている」と指し、これに関連した技術や製品について説明します。

冗長電源の使用用途

コンピューターで予期せぬ停電が起きると、メモリー上で処理されていたデータは消失します。サーバーのように多くのコンピューターやIT機器とデータの送受信を行っているコンピューターでは、データの整合性が失われると復旧に大きな労力が必要になります。

ハードディスクは読み書きを行っている際に、電源が切れるとそのセクターのデーターが消失し、さらにヘッダーがディスクの表面に落ちてディスクドライブ全体の故障に至る場合もあります。同様にネットワーク上のデーターの中継を行っているネットワークスイッチも電源を失うと、ネットワークに大きな影響を及ぼすことになります。

電源関係のトラブルに起因するネットワークやデータ処理への影響を防ぐために、サーバーやネットワークスイッチなど、故障したときに被害が及ぶ範囲が大きい機器ほど、冗長電源を用意しています。

冗長電源の原理

サーバーやネットワークスイッチに組み込まれる冗長電源は、同じ規格の電源ユニットが2つ組み込まれています。それぞれの電源ユニットは常に電源に繋がっていて、ベースボードをはじめ、その装置に内蔵されているその他の機器に分担して電気を供給しています。もしどちらかの電源ユニットに故障が発生した場合には、故障していない方の電源ユニットから故障した電源ユニットが受け持っていた機器類に電気が供給されます。

そのため、1つの電源供給ユニットは単体でその装置全体が必要とする電力を賄える能力を持っている必要があります。ただし、ここではラックマウント型のサーバーのように1つのラックに多数のユニットが組み込まれている場合には個々のユニットをそれぞれ装置として記述しています。

また、冗長電源に対応した装置は殆どの場合、電源のホットスワップにも対応しています。ホットスワップに対応した装置では、その装置の電源を落とすことなく、故障した電源ユニットを交換することが可能なので、電源ユニットの交換に伴う装置のダウンタイムが発生しません。

このようにして冗長電源ユニットを組み込まれた装置を揃えても、停電が起こった際には対応できません。大きなデーターセンターや工場では、電力会社から送られてきた電気を構内に引き込んだところで2系統に分離し、どちらかの系統に障害があっても装置に供給する電気が滞らないようにしています。また、冗長化された電源ユニットの片方と、電源コンセントとの間に無停電電源装置 (Uninterruptible Power System, UPS) を設置することで、ある程度の時間の停電に対処できるようになります。

冗長電源の選び方

冗長電源を装置に組み込んだとしても、それだけで完全に電源関係のトラブルを防げるものではありません。構内で発生する電源関係のトラブルに備えるには電源系統を元から分離しなければなりません。また、電力会社から送られてくる電気の停電に備えるためにはUPSが必要となります。

このように、冗長電源を選択する際には様々なリスクを想定して、必要な用意を電源系統全体で考え、その中で冗長電源の位置づけと期待する効果を元に選択することが大切です。他方、電源ユニットには多少の電源の変動を受けても安定して機器類に電気を供給する役割もあります。電源ユニット単体としての、性能や仕様を吟味することも重要です。

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