ジョイスティックコントローラとは
ジョイスティックコントローラとは、手でスティックを前後左右に動かすことによって、乗り物や装置を動かすコントローラです。
手首を中心とした少ない動きで大型の機械を制御することができ、長時間の使用でも比較的疲労が少ないことから、多くの産業機械で使用されています。一方、精密機械の微妙な操作には、指先の僅かな力加減で機械を操作できる小型のジョイスティックコントローラが機械の制御版や制御卓に組み込まれています。
また、パソコンやゲーム機のコントロールデバイスとしても広く活用されています。ゲーム機のジョイスティックコントローラは、バーチャルの世界で主人公や乗り物を少しでも早く動かすためのツールとして使われています。産業ロボットや自動で動く機械・装置が、プログラムに従ってコンピュータ制御で動くのに対して、ジョイスティックコントローラは人が機械や装置をマニュアルでリアルタイムに操作するための道具です。
ジョイスティックコントローラの使用用途
産業分野で活用されているジョイスティックコントローラは、輸送関連機器、建設機械、製造装置など多岐にわたります。
コンテナふ頭で海上輸送用のコンテナをコンテナ船に積み込むガントリークレーンでは、高さ30mの操縦席で真下を観ながらジョイスティックコントローラを使って、クレーンをコントロールしながら、コンテナの積み下ろしを行います。風が吹けば揺れる中での、微妙なクレーンのコントロールにはジョイスティックを使った操縦が適合しています
土木現場や建設現場で働く油圧ショベルやホイールローダなどの重機は、頻繁に進行方向を変えながら動き回ると同時に、ショベルやアームを動かして地面を掘ったり砂を積み上げるなどの作業を行います。この複雑な動きを、いくつかの操作ボタンを周りに配置したジョイスティックを操作してコントロールしています。
半導体産業をはじめ数多くの製造業では、ワークの精密な位置決めができるXYステージを持った製造装置や検査装置が多種あります。これらの装置はワークをXYステージに乗せて、制御用コンピュータにコントロールされて動きます。しかし、ワークのアライメント調整、スタートポイントの決定や検査領域の指定など、オペレーターが装置の画面に映し出されるワークを観ながら、手動で操作することが多くあります。このようにX方向、Y方向の微妙な位置決めにもジョイスティックコントローラが多く使われています。
ジョイスティックコントローラの原理
ジョイスティックコントローラはスティックの傾きを前後方向、即ちY軸と、左右方向、即ちX方向の2軸に分解して、電気信号として読み取り、サーボモータや油圧シリンダーなどのアクチュエーターを動かし、機械を操作します。
アクチュエーターの動かし方には、スティックを傾けている間は一定速度で動かす方式と、傾ける角度に応じて速度を増す方式があります。いずれの場合にも、スティックから手を離すと、スティックは中立の位置に戻り、アクチュエーターは力を加えるのを停止します。
このようにジョイスティックコントローラは、スティックを傾ける方向で機械の進む方向を、傾ける大きさで機械の速度をコントロールできます。また、スティックの先端部や中間部、根元などにスイッチを付けると、そのスイッチに別の機能を割り当てることができます。このように、ジョイスティックコントローラは一本のスティックとその周辺のスイッチなどで、様々に機械を動かすことができます。
ジョイスティックコントローラの選び方
ジョイスティックコントローラには様々な大きさと形状があります。正確な操作と疲労の少ない作業を考えた場合には、使用時の姿勢と操作の性格、作業環境を考えて最適な形状を選択することが推奨されます。
例えば、下を向きながらコンテナを移動させるガントリークレーンの操縦席と、顔の前や上部に広がる計器盤を観ながら作業を行う制御室の中では、スティックを操作するときの姿勢が全く違います。作業時の疲労低減を考えるならば、作業時の姿勢と配置場所にあった形状と大きさのジョイスティックコントローラを選ぶことが大切です。
また、精密機械のXYステージに置かれたワークの位置決めや観察のために、微妙にステージの位置を調整する場合と、ゲーム機で対戦相手とゲームを楽しむ場合では、スティックの動かし方が全く違います。
さらに、工事現場の重機のように、雨風に晒される中での作業に用いる耐久性が求められるものや、クリンルーム内で使用する装置に組み込むために発塵が許されないものなど、使用環境の影響を受ける場合もあります。