SGCC

SGCCとは

SGCCとは、JIS (日本産業規格) によって規定された亜鉛めっき鋼板の一種です。

低炭素鋼板に亜鉛めっきを施し、鋼板の表面に耐食性を持たせています。JIS G 3302に基づいて分類され、規格によって品質、寸法、形状、質量、およびその他の物理的および機械的特性が定義されています。

溶融亜鉛めっきには「非合金化めっき」と「合金化めっき」の2種類があります。非合金化めっきでは、母材の低炭素鋼と亜鉛とは合金化されていません。合金化めっきでは、母材の低炭素鋼からめっき層へ鉄が拡散して鉄と亜鉛とが合金化されます。

SGCCの使用用途

SGCCの主な使用用途は下記の通りです。

1. 建築材料

建築材料では屋根材、外壁材、ドアフレーム、窓枠、鉄骨などに用いられます。また、ガードレール、標識、防音壁、シャッターなどにも使用されます。

2. 自動車部品

自動車部品では主に自動車のボディパネル、車輪、マフラー・タンクに用いられています。

3. 電気機器

電気機器は主に電気機器のケース、ボックス、フレーム、配線カバーなどに用いられています。

4. 家電製品

家電製品では冷蔵庫、洗濯機、エアコンに用いられています。

SGCCの性質

SGCCの主な性質は以下の通りです。

1. 化学組成

  • 炭素 (C) :0.15%以下
  • マンガン (Mn) :0.80%以下
  • リン (P) :0.05%以下
  • 硫黄 (S) :0.05%以下

2. 防錆性

亜鉛メッキ鋼板では、亜鉛が形成する不動態皮膜によって、通常の鋼板や塗装品よりも優れた防錆性を発揮します。

不動態皮膜は、亜鉛メッキの表面全体に形成される酸化亜鉛の層のことです。酸化亜鉛は、亜鉛が空気中の水分や酸素と反応して生成されます。酸化亜鉛は通気性が低く、劣化しにくいため、鋼板の表面を保護し、錆や腐食から守ります。

3. 耐食性

亜鉛メッキ鋼板の耐食性が優れている理由は、不動態皮膜と犠牲防食という2つの要因によるものです。

不動態皮膜は、亜鉛メッキの表面全体に形成される酸化亜鉛の層で、鋼板の表面を保護して錆や腐食から守ります。犠牲防食は、メッキに傷ができた場合に亜鉛が先に溶解して鉄が空気に触れることを防ぐ作用です。亜鉛は鉄よりもイオン化しやすく、傷部分に溶け出して鉄を守ります。この効果時間は亜鉛めっきの付着量によって異なり、付着量が多いほど耐食性が向上します。

4. 加工性

SGCCは切削や折り曲げ、溶接などの加工が可能です。薄板であり、比較的柔らかい鋼板であるため、比較的容易に曲げ、切断、穴あけ、プレス加工などができます。

5. 安定性

SGCCは高い安定性を持つため、長期にわたって使用される機械部品や建築材料に適しています。外部の環境や負荷変化に対して、安定した機械的特性を維持し、変形や劣化が起こりにくいです。変形や劣化が少ないため、長期にわたって使用される機械部品や建築材料に適しています。

6. コスト

SGCCは鉄鋼材料の中でも比較的安価で、コスト面でも優れています。製造には比較的安価な材料を使用しており、また製造工程が複雑ではなく生産量が多いため比較的安価です。

SGCCのその他情報

合金化溶融亜鉛メッキ鋼板

合金化溶融亜鉛メッキ鋼板を作るには、冷間圧延鋼板を溶融亜鉛メッキ処理した後、鉄と亜鉛を合金化させるために高温で熱処理をします。鉄と亜鉛の間に亜鉛鉄合金層が形成され、耐食性や耐摩耗性が高まります。同時に、めっき層の結晶粒が微細化され、表面の凸凹感が小さくなり、表面の滑らかさが増すため、塗装性が向上します。

合金化溶融亜鉛メッキ鋼板では、非合金化溶融亜鉛メッキ鋼板に対して以下のような特徴があります。

密着性
母材の低炭素鋼と亜鉛メッキ層の間で合金化が起こっているため、亜鉛が鉄とが強く密着しています。亜鉛が鉄とが合金化しているので、衝撃や摩擦に対しても剥がれにくくなります。よって亜鉛メッキ鋼板は、母材の低炭素鋼を保護し、長期間にわたって防錆・防食できます。

長時間の耐食性と防錆力
亜鉛メッキ鋼板が耐食性と防錆力を長期間保てる理由は、亜鉛が鉄と合金化して密着性が高いことに加え、亜鉛の不動態皮膜や犠牲防食の効果があるためです。

亜鉛の不動態皮膜とは、亜鉛メッキ鋼板などの表面に形成される薄い酸化亜鉛の皮膜のことです。亜鉛は空気中の水分や酸素と反応して酸化し、酸化亜鉛が形成されます。

酸化亜鉛は水や空気を通しにくく、亜鉛の状態で存在する時よりも劣化しにくくなります。不動態皮膜は、亜鉛メッキ鋼板の表面を覆い、鉄素地を空気中の水分や酸素から遮断して錆や腐食から守ります。不動態皮膜が形成されたことで、亜鉛メッキ鋼板はさらに耐食性が向上します。

関連する金属材料

SD345

SD345とは

SD345とは、鉄筋コンクリート構造物に使用される異形棒鋼に分類される鉄筋の一種です。

異形棒鋼は鉄筋の表面にリブを付けることで、コンクリートとの密着性を高め、強度を発揮するために使用されます。SD345の「SD」は、Steel Deformedの略です。またSD345の「345」は、降伏点もしくは耐力が345 (N/mm2) 以上であることを示しています。降伏点または耐力は、材料が変形し始める限界値を表す指標であり、SD345の機械的性質として規定されています。

SD345の使用用途

SD345の主な使用用途は下記の通りです。

1. 鉄筋コンクリート梁や柱の補強

鉄筋コンクリート構造物において、コンクリートが圧縮力に耐える役割を果たし、鉄筋が引っ張り力に耐える役割を果たしています。SD345は、鉄筋の中でも高強度であり、主に鉄筋コンクリート梁や柱の補強に使用されるのが特徴です。

2. 地震対策としての耐震補強

地震によって建物が揺れたり、崩壊することがありますが、耐震補強によって建物の構造物を強化し、地震の揺れに対する耐久性を高められます。SD345は高い引張強度を持つため、柱や壁などの構造物に使用することで、地震時の揺れによる変形を抑え、建物全体の安定性を向上できます。

3. 高層ビルや大型構造物の鉄筋

SD345は高層ビルや大型構造物の建設において、鉄筋コンクリート構造物の強化に使用されることがあります。高層ビルや大型構造物では、重量や高さなどの理由から強度が非常に重要です。また長期間にわたって使用されることが想定されているため、耐久性も求められます。

4. 道路橋などの構造物の補強

道路橋や高速道路の橋梁、トンネルなどは、長期間にわたって使用されることが多く、また、車両の荷重や地震の揺れにさらされるため、強度と耐久性が重要です。

5. ダム、堤防などの補強

ダムや堤防などは、大量の水や地盤の圧力にさらされるため、強度と耐久性が重要となります。

6. 道路、鉄道の線路や踏切の補強

道路や鉄道の線路、踏切などは、車両の通行によって大きな荷重や振動にさらされ、また、地震などの自然災害にも影響を受けることがあるため、強度と耐久性が必要です。道路に鉄筋コンクリートの舗装をしたり、鉄道の線路、踏切に鉄筋コンクリート製の枕木を使用したりします。

7. 堤防、防波堤、防潮堤などの補強

河川改修や海岸保全のための堤防、防波堤、防潮堤などは、大量の水の圧力や波浪にさらされ、長期間の使用によって劣化が進むため、強度と耐久性が求められます。

8. 建築物の基礎や基盤の補強

建築物の基礎や基盤は、建物の安定性や耐久性に関わる非常に重要な部分であり、強度が求められます。特に、建物が長期間にわたって使用される場合、基礎や基盤の劣化が進むため、定期的な補強が必要です。

SD345の性質

SD345の主な性質は下記の通りです。

1. 化学組成

  • 炭素 (C) : 0.27%以下
  • シリコン (Si) : 0.55%以下
  • マンガン (Mn) : 1.60%以下
  • リン (P) : 0.040%以下
  • 硫黄 (S) : 0.040%以下

2. リブ

SD345には、通常、軸方向に沿って間隔を開けて複数の突起部 (リブ) があります。リブ (英: rib) の主な目的は、コンクリートと鉄筋の密着性を高め、強度や耐久性を向上させることです。コンクリートが硬化すると、リブとコンクリートがしっかりと固着し、鉄筋とコンクリートの接着力が高まります。これにより鉄筋がより強力な力を受け止めることができ、鉄筋コンクリート構造物の強度や耐久性を向上できます。

またSD345が使用される場合、建物の柱や壁などの構造物に使用されることが多いため、地震による揺れに対しても耐久性を向上できることがメリットです。鉄筋とコンクリートが固く結合するため、地震時に発生する振動に対しても強度を発揮できます。

3. 高強度

SD345は通常の鉄筋に比べて強度が高いことが特徴です。SD345には高張力鋼が使用されています。高張力鋼は、一般的な鉄筋よりも引っ張り強度が高いため、大きな荷重に耐えられます。そのためSD345は通常の鉄筋よりも強度が高い材料です。また、SD345には鉄筋の表面にリブがあります。リブはコンクリートと鉄筋の密着性を高め、強度を向上させたり、曲げ応力に対する耐久性も向上させたりできます。リブがあることで鉄筋の表面積が増え、コンクリートとの接着力も増強されるため、強度を向上させることが可能です。

4. 耐震性

SD345は鉄筋コンクリート構造物に使用される異形棒鋼の一種で、耐震性に優れている材料です。高強度で鉄筋の中でも特に強度が高いため、鉄筋コンクリート構造物の補強や高層ビル、道路橋、ダム、堤防などの補強に使用されることがあります。

耐震性に優れている理由は、高強度鋼材が使用されているため、通常の鉄筋に比べて引張強度が高く、地震による引っ張り力に対しても耐えられる点が挙げられます。また、SD345にはリブがあり、コンクリートとの密着性を高め、強度を発揮できることも注目すべき点です。地震時に発生する振動に対しても、鉄筋とコンクリートが固く結合するため、耐震性を向上できます。

さらにSD345を使用することで、構造物の剛性を向上できます。剛性が高い構造物は、地震時に発生する振動を吸収でき、建物の損傷を最小限に抑えられることが特徴です。SD345は鉄筋コンクリート構造物の耐震性を向上させるために使用されることがあり、耐震性に優れた材料です。

4. 加工性

SD345は鉄筋の中でも高強度で比較的硬い材料ですが、可塑性にも優れています。そのため、曲げや引っ張りなどの加工に適しており、鉄筋コンクリート構造物に使用されることが多く、建物の形状に合わせて自由に曲げられます。また、異形棒鋼で様々な形状に加工できるため、SD345は建築物の補強材料として幅広く使用されます。

5. 溶接性

SD345は一般的に溶接性が良い材料です。異形棒鋼であるSD345には表面にリブがあり、コンクリートとの密着性を高めるために用いられます。リブが溶接時に融解し、周囲の鉄筋と融着しやすくななるためです。また、SD345は高強度で引張強度が非常に高いため、建造物の強度を高められます。

SD345のその他情報

SD345の耐食性

SD345は耐食性が比較的高い材料です。SD345は、一般的に鉄筋表面に酸化被膜を形成し、腐食を防げます。耐食性の高い被膜を施すことで、腐食に対する耐性を向上できます。ただし、環境要因によってはSD345も腐食する可能性があるため注意が必要です。特に海岸や海水浴場の近く、工場排出物が多い地域、酸性雨が多い地域など、腐食が進みやすい環境に置かれた場合は適切な対策が必要です。

関連する金属材料

SD295

SD295とは

SD295とは、異形棒鋼に分類される鉄筋の一種です。

鉄筋コンクリート構造物に使用されます。異形棒鋼は鉄筋の表面にリブ (英: rib) を付けることでコンクリートとの密着性を高め、強度を発揮するために使用されます。SD295の「SD」は、Steel Deformedの略です。またSD295の「295」は、降伏点もしくは耐力が295 (N/mm2) 以上であることを示しています。降伏点または耐力は、材料が変形し始める限界値を表す指標であり、SD295の機械的性質として規定されています。

SD295の使用用途

SD295の主な使用用途は下記の通りです。

1. 基礎鉄筋

基礎鉄筋とは、建物の基礎部分に使用される鉄筋のことです。建物の基礎は建物の重量を支えるための重要な部分であり、地震などの自然災害に対しても耐える必要があります。そのため、基礎鉄筋は強度や耐震性が求められます。

2. 柱や梁の鉄筋

SD295の鉄筋を使うことで建物の耐荷重性を高められ、建物の強度を確保できます。

3. 壁の鉄筋

壁の中にSD295の鉄筋を埋め込んで壁の強度を高め、建物全体の耐震性を向上できます。

4. 床の鉄筋

床にSD295が埋め込まれる場合、通常水平方向に鉄筋が配置され建物全体の剛性を高めます。

5. 橋梁やトンネルの鉄筋

大きな荷重や振動などに対して強度を持ち、安全性を確保するために、SD295のような高張力鋼材が使用されます。

6. マンションやビルの鉄骨構造

SD295などの鉄筋が使用されることで、建物の強度を確保し、耐震性を向上させます。

7. 商業施設の天井や床の鉄筋

天井には、軽量鉄骨構造の下地にSD295などの鉄筋を配置している場合があります。また、床には鉄筋コンクリートを使用している場合があります。

8. 地盤改良工法の鉄筋

地盤改良工法は、地盤を強化するために行われる工法であり、鉄筋が埋設されたコンクリート柱や板を地中に設置することで地盤の強度を向上させます。

SD295の性質

SD295の主な性質は下記の通りです。

1. 化学組成

  • 炭素 (C) : 0.27%以下
  • シリコン (Si) : 0.55%以下
  • マンガン (Mn) : 1.50%以下
  • リン (P) : 0.050%以下
  • 硫黄 (S) : 0.050%以下

2. リブ

SD295のリブとは、鉄筋の表面に刻まれた複数の突起のことです。リブはコンクリートと鉄筋の密着性を高め、強度や耐久性を向上させます。リブがあることで鉄筋表面とコンクリートの接着力が向上します。コンクリートが硬化した後には、リブとコンクリートがしっかりと固着し、強度や耐久性が向上します。

SD295は柱や梁などの部材に使われるため、曲げ応力がかかることがありますが、リブによって鉄筋の強度が向上し、曲げ応力に対する耐久性が向上します。また、鉄筋の断面積が増加します。これにより鉄筋の強度が向上し、建造物の強度や耐久性が向上します。

3. 高強度

SD295は通常の鉄筋に比べて強度が高いです。理由は次の通りです。SD295には高張力鋼が使用されています。高張力鋼は通常の鉄筋に比べて引張り強度が高いため、より大きな荷重に耐えることができます。SD295には表面にリブと呼ばれる突起があります。リブがコンクリートと鉄筋の密着性を高めるため、強度が向上します。また、曲げ応力に対する耐久性も向上させます。

4. 耐震性

SD295は鉄筋コンクリート構造物に使用される異形棒鋼の一種で、耐震性に優れている材料です。

SD295には高強度鋼材が使用されているため、通常の鉄筋に比べて引張強度が高く、地震による引っ張り力に対しても耐えられます。また、表面にはリブがありコンクリートと鉄筋の密着性を高めるため、構造物全体の強度が向上します。地震時に発生する振動に対しても、鉄筋とコンクリートが固く結合するため、耐震性を向上させます。

SD295を使用することで構造物の剛性を向上できます。剛性が高い構造物は地震時に発生する振動を吸収でき、建物の損傷を最小限に抑えられます。

5. 加工性

SD295は高強度の鋼材が使用されているために通常の鉄筋に比べて硬い材料です。一般的に、硬い材料は加工性が低下する傾向がありますが、SD295は比較的柔軟な加工が可能な材料です。曲げや切断、穴あけといった加工において、比較的容易に行えます。よって建築現場などで使用される鉄筋として、加工性に優れたSD295が好まれることがあります。また、製品の形状によっては冷間曲げや折り曲げなどが可能であり、様々な用途に利用されます。

6. 溶接性

SD295は溶接性に優れた鉄筋の一種であり、様々な種類の溶接方法に対応できます。溶接部の強度が高く、割れや欠けが生じにくいため、構造物全体の耐震性を高めることができます。特に橋やトンネル、高層ビルなどの耐震性が要求される構造物の建設において、SD295のような溶接性に優れた鉄筋が使用されることがあります。

SD295のその他情報

SD295の腐食対策

SD295は鉄筋の一種であり、コンクリート構造物に使用される際、外部からの環境要因により腐食する可能性があります。例えばコンクリート構造物が海岸や海水浴場の近くにある場合、塩害による腐食が生じることがあります。

しかし、SD295には鉄の表面に酸化被膜を形成する性質があるため、腐食に対して比較的耐性があります。酸化被膜は鉄の表面を保護し、腐食を防ぐ役割があります。また、鉄筋表面に耐食性の高い被膜を施すことにより腐食に対する耐性を向上できます。

関連する金属材料

S55C

S55Cとは

S55Cとは、日本工業規格 (JIS) では炭素鋼に分類され、JIS G 4051で規定されている機械構造用炭素鋼鋼材の一種です。

炭素鋼炭素含有量が高いほど硬度が高くなります。機械構造用炭素鋼鋼材は一般的にはSC材とも呼ばれ、SはSteel (鋼) 、CはCarbon (炭素) を意味します。S55Cは、炭素量が高いため硬くて強い材料であり、熱処理により硬度を調整できます。また比較的低価格であり、耐久性や加工性に優れています。

S55Cの使用用途

S55Cの使用用途の例は下記の通りです。

1. 金型

金型はプレス金型、鋳造金型、プラスチック成形金型、精密プレス金型などで使用されます。鋳造とは、金属を液体状態で型に流し込んで成形する方法です。

2. 切削工具

切削工具ではドリル、タップ、研磨ホイールなどに用いられます。タップとは、ネジを切るための工具の一種で、金属やプラスチックなどの素材に穴を開けて内部に螺旋状の溝を切り、ネジを作成するための工具です。研磨ホイールとは、金属、木材、プラスチックなどの素材を研磨・磨耗加工するために使用される工具です。

3. 機械・電子部品

機械部品では歯車、シャフト、軸、ボルト、ナット、バネに使用され、電子部品ではモーターシャフト、コネクタ、端子に使用されています。

4. 刃物

刃物では主に包丁、ハサミ、カッターナイフ、チェーンソーに使用されています。

5. 自動車部品

自動車部品ではクランクシャフト、ギア、スプリング、ホイールハブに使用されます。ホイールハブとは、車輪を車両に取り付けるための部品です。

6. 精密測定工具

精密測定工具では定盤、マイクロメーターに使用されています。定盤とは、測定器具の一種で、平面度・直線度・平行度などを測定するための板状の器具です。マイクロメーターとは、測定器具の一種で、小さな寸法を正確に測定するために使用される器具です。

7. 建築材料

建築の分野では建物の支柱、階段、手すり、柵、鉄骨構造などに使用されます。

S55Cの性質

S55Cの主な性質は下記の通りです。

1. 化学組成

  • 炭素 (C): 0.52%~0.58%
  • シリコン (Si): 0.15%~0.35%
  • マンガン (Mn): 0.60%~0.90%
  • リン (P): 0.030%以下
  • 硫黄 (S): 0.035%以下

2. 強度

S55Cは機械部品や金型、工具などの材料として使用する場合に十分な強度を持っています。焼入れにより非常に高い硬度を得られます。焼入れ後のS55Cは、金型や工具などの高強度、高耐摩耗性が必要な部品に適しています。ただし、高炭素鋼であるため焼入れ後に脆くなることがあります。そのため焼入れ後の焼戻しや使用条件の管理が必要です。炭素鋼は、炭素含有量によって以下のように分類されます。

  • 低炭素鋼 (炭素含有量: 0.25%未満)
  • 中炭素鋼 (炭素含有量: 0.25%-0.6%)
  • 高炭素鋼 (炭素含有量: 0.6%を超える)

3. 切削性

S55Cの切削性は、以下のような特徴があります。

切削性が良好
S55Cの炭素量は約0.55%であり、硬度が比較的高いため切削性が良好です。溶接性は一般的に良好とは言えません。

粗い表面ができやすい
非常に硬い材料であるため、切削時には粗い表面ができやすいです。表面加工をする場合は追加の加工工程が必要になることもあります。

切削速度と切削深さに注意が必要
S55Cは硬度が比較的高いため、切削時には切削速度と切削深さに注意が必要です。切削速度が低い場合は、スムーズに切削できず、表面が荒くなることがあります。また、切削深さが深過ぎる場合は、工具の破損する可能性があります。

冷却剤の使用が推奨される
S55Cは切削時に発生する熱が多くなるため、冷却剤の使用が推奨される材料です。冷却材の使用により工具の摩耗が減少し切削精度が向上します。

4. 耐食性

S55Cは錆びやすいため適切な表面処理が必要です。表面処理には、塗装、めっき (ニッケルめっき、クロムめっき) 、黒染めなどがあります。黒染めは、酸化皮膜を形成して表面を保護する方法です。

S55Cのその他情報

チップの処理

S55Cを切削加工する場合、大量のチップが発生するため、その処理に注意が必要です。チップを取り除かないと、切削加工品の表面に傷がついたり、加工品自体が破損したりする可能性があります。

チップとは、工具によって削り取られた材料の切れ端のことです。切削工具が材料に接触する際に、摩擦力や圧力によって材料が削り取られチップが発生します。

関連する金属材料

S50C

S50Cとは

S50Cとは、機械構造用炭素鋼鋼材の一種です。

日本工業規格 (JIS) では炭素鋼に分類され、JIS G 4051で規定されています。炭素鋼は炭素含有量が高いほど硬度が高くなります。機械構造用炭素鋼鋼材は一般的にSC材とも呼ばれ、SはSteel (鋼) 、CはCarbon (炭素) を意味します。炭素量が高いため硬くて強い材料であり、熱処理により硬度を調整できます。また比較的低価格で耐久性や加工性に優れています。

S50Cの使用用途

S50Cの主な使用用途は下記の通りです。

1. 金型

金型では、プレス金型、ダイカスト金型、プラスチック成形金型、精密プレス金型などに用いられます。ダイカスト (英: die-casting) とは、溶かした金属に圧力をかけて金型に流し込んで成型する方法です。

2. 工具

工具ではハンマー、ドリル、チゼル、やすり、包丁、ハサミ、カッターナイフ、ノミなどに使用されます。チゼル (英: chisel) とは、 木工や金属加工などの作業に使用される切削工具です。

3. 機械部品

機械部品では歯車、シャフト、軸、ボルト、ナット、バネに使用されます。

4. 建築資材

建築資材では橋梁、建物の支柱、鉄骨構造などに使用されています。

S50Cの性質

S50Cの主な性質は下記の通りです。

1. 化学組成

S50Cの化学組成は下記の通りです。

  • 炭素 (C) が0.47%~0.53%
  • シリコン (Si) が0.15%~0.35%、
  • マンガン (Mn) : 0.60%~0.90%
  • リン (P) : 0.030%以下
  • 硫黄 (S) : 0.035%以下

2. 強度

S50Cの強度は、一般的には、機械部品や工具の材料として使用されるのに十分であり、低炭素鋼よりも高く、高炭素鋼よりもやや低い程度になります。炭素鋼は炭素含有量によって以下のように分類されます。

  • 低炭素鋼 (炭素含有量0.25%未満)
  • 中炭素鋼 (炭素含有量は0.25%-0.6%)
  • 高炭素鋼 (炭素含有量が0.6%以上)

3. 切削性

S50Cの切削性は比較的良好です。切削性とは、材料が切削加工でどの程度容易に削れるかを示す指標であり、切削に必要な切削力や切削温度などが影響します。機械部品や工具、歯車などの製造に適しています。ただし、硬度が高く靭性が低いため、切削や加工には適切な工具を使用し、適切な加工条件を設定する必要があります。また、加工後の材料の表面には、酸化や焼け、バリ、歪みなどが生じることがあるため、適切な仕上げ加工が必要です。

また、炭素含有量が比較的多く硬度が高いため、加工時には適切な切削条件が必要です。通常、切削速度を適切に設定して、切削時の切削力や切削温度を抑えられます。また、切削液を使用して、切削時の温度を低く保ち、切削面の精度を向上できます。

4. 熱処理

S50Cは、適切な熱処理によって硬度や耐摩耗性、耐久性を向上できます。熱処理には焼入れや焼き戻しなどがあります。

焼入れ (英: Quenching) とは、高温に加熱してから急冷却する処理です。急冷却によって、鋼の組織を変化させ、硬度を高められます。冷却速度が遅いと、硬度が低くなるため、適切な冷却速度を選択する必要があります。焼戻し (英: Tempering) とは、焼入れ後に低温で加熱して、硬さを緩和する処理です。焼戻し処理によって硬さを下げつつ、鋼の強度や靭性を改善できます。

5. 溶接性

S50Cは焼け付きや歪みなどの問題が発生しやすく、溶接にはあまり適していません。

6. 耐食性

S50Cは錆びやすいため適切な表面処理が必要です。表面処理には、塗装、めっき (ニッケルめっき、クロムめっき) 、黒染めなどがあります。黒染めとは、酸化皮膜を形成して表面を保護する方法です。

S50Cのその他情報

1. 物性の変化

S50Cを熱処理しない場合は、比較的柔軟で加工が容易な材料になります。熱処理により硬度が向上しますが、熱処理の前後で物性に違いが生じます。熱処理によって硬度や強度などが変化するため、十分な注意が必要です。

2. 靭性の改善方法

S50Cは硬いため、靭性が良くない傾向があります。靭性 (じんせい) とは、材料が外力や衝撃に対して変形し、その後も破壊せずに元の形状に戻る能力を示す物質の性質の一つです。靭性を改善するためには以下のような対策があります。

熱処理
焼入れで硬度を高め、焼戻しで靭性を向上できます。

加工方法
S50Cを加工する際には、加工方法にも注意が必要です。例えば、硬度が高いため、切削によって熱が発生し、歪みやクラックが発生する可能性があります。そのため、適切な切削条件を設定したり、冷却して加工時の熱影響を抑えたりする必要があります。

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s45c

s45cとは

s45cは、機械構造用炭素鋼鋼材の1種です。s45cは、炭素鋼鋼材S-C材であり、JIS規格に基づき、炭素含有割合が0.42~0.48%の炭素鋼を指します。炭素鋼は、炭素含有割合が高いほど、硬くなり、高い耐摩耗性を有します。s45cの炭素含有割合は高く、鉄鋼の中では、硬鋼に分類されます。

s45cの主な成分含有割合は、炭素が0.42%から0.48%、ケイ素(シリコン)が0.15%から0.35%、マンガンが0.6%から0.9%、リンが0.03%以下、硫黄が0.035%以下になります。

s45cは、汎用性が高く、市場で最もよく流通している炭素鋼の1つです。

s45cの使用用途

s45cは、値段が高すぎず、加工性にも優れており、さらに、焼入れなどの熱処理により硬度の向上も期待できるため、最も一般的に使用されている炭素鋼です。

s45cは、一般的に、熱処理を行い、機械的性質を向上させてから、さまざまな部品の材料として使用されます。

s45cの具体的な使用用途例として、自動車の部品、特に自動車駆動部品、エンジンの部品などが挙げられます。その他にも、s45cは、ギアやシャフトの材料としてもよく使用されています。s45cを用いて作られたギアやシャフトは、ポンプやコンプレッサを作る際に組み込まれます。

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s35c

s35cとは

s35cは、S-C材と呼ばれる機械構造用炭素鋼の1種です。s35cは、JIS規格により、炭素含有割合が0.32%から0.38%の炭素鋼とされています。また、s35cは、中炭素鋼に分類されます。

s35cの主な成分含有割合は、炭素が0.32%から0.38%、ケイ素(シリコン)が0.15%から0.35%、マンガンが0.6%から0.9%、リンが0.03%以下、硫黄が0.035%以下になります。

s35cは、焼入れ処理などの熱処理によって、硬度を向上させることができます。

s35cの使用用途

s35cの使用用途として、ボルト、工具、ナット、そしてエンジンの部品などが挙げられます。

s35cは、例えばs45cなどに比べて、炭素含有割合が比較的低く、焼き入れ性に劣ります。このような理由で、s35cは、焼き入れ度合いにあまり影響を受けない製品を作る際の材料として、主に使われています。

また、s35cは、焼き入れ時に中央深部まで焼入れが入らず、中央部が硬くならない場合があります。s35cのその焼入れ性の悪さを逆に利用して、表面だけを硬くしたい場合などにs35cが重宝されます。

s25c

s25cとは

s25cは、機械構造用炭素鋼の1種です。s25cの炭素含有割合は、約0.25%です。炭素鋼の硬さは、炭素の含有割合に左右されます。炭素含有割合が高くなると、鉄が硬度を増し、炭素含有割合が低くなると、鉄の硬度が下がります。s25cの炭素含有割合は、上記したように約0.25%で、軟鋼のなかでは比較的硬い炭素鋼です。

s25cの主な成分割合としては、炭素が0.22%から0.28%程度、ケイ素(シリコン)が0.15%から0.35%程度、マンガンが0.3%から0.6%程度、リンが0.03%以下、そして、硫黄が0.035%以下になります。

s25cの使用用途

s25cの主な使用用途として、機械類の材料に幅広く使用されています。これは、s25cが加工しやすく、溶接も可能であるためです。

また、s25cのその他の使用用途として、特に高い硬度を要求しないネジ、ナット、ピン、ボルトなどが挙げられます。s25cが高い硬度を必要としない部品の材料に使用される理由は、以下の通りです。s25cは、焼き入れをすることによる硬度の向上がほとんど見られません。そのため、通常、s25cは、焼き入れを施されず、そのまま使用されます。上記の理由からs25cは、特に高い硬度を必要とする部品の材料には、不向きであるとされています。

s20c

s20cとは

s20cは、機械構造用炭素鋼の1種です。s20cは、Steel 20 Carbonとも呼ばれます。s20cの名前は、鉄(Steel)に約0.2%程度の炭素(Carbon)が含まれた炭素鋼という意味に由来します。s20cの主な成分割合としては、炭素が0.18%から0.23%程度、ケイ素(シリコン)が0.15%から0.35%程度、マンガンが0.3%から0.6%程度、リンが0.03%以下、そして、硫黄が0.035%以下となります。

s20cは、浸炭焼入れが可能です。この浸炭焼入れをs20cに施すことで、表面にとどまらず、内部まで強度を増すことができます。

s20cの使用用途

s20cの使用用途は、非常に幅広く、小部品全般に使用できます。具体的なs20cの使用用途として、各種機械類のナット、ボルト、ピン、フレームや軸の材料などが挙げられます。

上記のように、s20cが広い使用用途を有する理由として、s20cの溶接性の良さが挙げられます。s20cは、成分割合で、他の炭素鋼に比べて炭素の含有量が低いので、溶接の熱による硬化をあまり起こしません。そのため、s20cは、溶接時に割れなどの問題が起こりにくいことが知られています。

ガス吸着測定

ガス吸着測定とは

ガス吸着法とは、材料に気体を吸着/脱着させて、吸着等温線と呼ばれるプロットを得る材料分析方法です。

吸着等温線を解析することで、材料の比表面積、細孔容積、細孔分布などの情報を得ることができます。吸着とは、ガス分子が気相から固体表面に取り去られる現象のことです。脱着はその逆で、固体表面に吸着しているガス分子が取り去られる現象です。

また等温線とは、横軸に相対圧 (平衡状態に達した圧力をガス分子の飽和蒸気圧で割ったもの)、縦軸に吸着量をとってプロットしたもののことです。等温線は細孔の有無やその大きさ、吸着エネルギーの大小により形状が変わります。ガス吸着法で、試料の特徴をつかむ場合に等温線を測定するのが一般的です。

ガス吸着測定の使用用途

ガス吸着測定は、材料の開発や品質保証などの分野でよく用いられます。触媒や吸着剤、さらには電池材料の性能はそれらの比表面積 (単位質量当たりの表面積) や細孔特性に大きく依存することが知られています。

例えばよりたくさんの水分子を吸着する材料を考えると、比表面積が大きければ大きいほど、少量の材料で大量の水分子を吸着することができるため競争力のある材料と言えます。
また、体積変化を極力させたくない材料の場合は、細孔量ができるだけ少ない方がよいでしょう。

ガス吸着測定のイメージ

図1. ガス分子の吸着量の違いによる表面積の差

上記のように、材料のマクロな特徴が、比表面積や細孔特性といったミクロな物性に紐づいているケースは多く存在します。そのため、試料の性能や特徴を知るために、ガス吸着測定が多く用いられます。

ガス吸着法といっても様々な測り方があり前処理条件なども重要になります。例えば試料と反応を起こしにくい窒素ガスなどを吹き込む窒素吸脱着測定などでは、試料を冷却して試料表面に物理吸着をさせることで、得られた測定系の容積及び圧力変化から窒素吸着量が算出できます。

ガス吸着測定の原理

1. 吸着等温線とは

吸着等温線とは、横軸に相対圧、縦軸に試料へのガス分子の吸着量を取ったプロットのことです。どれくらいの圧力でガスを圧入したときに、どれくらいのガス分子が吸着したかを知ることができます。

等温吸着線のイメージ

図2. 吸着等温線

材料へのガス分子の吸着量は温度依存性があるため、等温下で測定する必要があります。そのため吸着「等温」線と呼びます。通常液体窒素で試料を冷却しながらガスの圧入を行います。

2. 吸着等温線の解析方法

得られた吸着等温線を解析することでデータを得ることができます。様々な解析手法がありますが、比表面積の解析と細孔分布の解析に大別することができます。

比表面積を求める解析手法としてBET法やLangmuir法、細孔分布を求める解析手法としてBJH法やDH法、tプロット法など、様々な解析手法があります。

比表面積の解析
一般的に用いられることが多いのはBET法です。吸着等温線にBETの式をあてはめ、比表面積を算出します。BETの式とは、一定温度で吸着平衡状態であるとき、吸着平衡圧Pとその圧力での吸着量Vの関係を示す式で、以下の通りです。

   P/{V(Po-P)}=1/VmC+(C-1)/(VmC)×P/Po

Po: 飽和蒸気圧
Vm: 単分子吸着量 (気体分子が固定表面で単分子層を形成した時の吸着量)
C: 吸着熱などに関するパラメータ>0

※この関係式は、P/Po:0.05~0.35の範囲でよく成立します。

P/PoとVはガス吸着分析から得ることができます。この値をもとにBETプロットと呼ばれる直線をプロットし、傾きと切片からVmとCが算出できます。

BETプロット

図3. 吸着弾面積を乗算し比表面積を求める方法

単分子吸着量にガス分子の吸着断面積 (ガス分子一個が占有する面積。窒素の場合、0.162nm2) を乗算することで、表面積を求めることができます。

BET法による解析はC値が正でないと精度がありません。C値も併せてチェックし、負になっている場合は測定条件や試料の状態の確認が必要です。

3. ガス種類による違い

ガス吸着測定は一般的に窒素ガスが用いられますが、比表面積の小さいサンプルを測定する際は、アルゴンやクリプトンが用いられる場合もあります。

これは、アルゴン・クリプトンは窒素に比べて吸着断面積が小さいため、小さな比表面積の試料でも精度よく分析できるためです。窒素に比べ、アルゴン・クリプトンは高価なため、分析したい試料の素性に応じてガスが選択されます。