ガス吸着測定

ガス吸着測定とは

ガス吸着法とは、材料に気体を吸着/脱着させて、吸着等温線と呼ばれるプロットを得る材料分析方法です。

吸着等温線を解析することで、材料の比表面積、細孔容積、細孔分布などの情報を得ることができます。吸着とは、ガス分子が気相から固体表面に取り去られる現象のことです。脱着はその逆で、固体表面に吸着しているガス分子が取り去られる現象です。

また等温線とは、横軸に相対圧 (平衡状態に達した圧力をガス分子の飽和蒸気圧で割ったもの)、縦軸に吸着量をとってプロットしたもののことです。等温線は細孔の有無やその大きさ、吸着エネルギーの大小により形状が変わります。ガス吸着法で、試料の特徴をつかむ場合に等温線を測定するのが一般的です。

ガス吸着測定の使用用途

ガス吸着測定は、材料の開発や品質保証などの分野でよく用いられます。触媒や吸着剤、さらには電池材料の性能はそれらの比表面積 (単位質量当たりの表面積) や細孔特性に大きく依存することが知られています。

例えばよりたくさんの水分子を吸着する材料を考えると、比表面積が大きければ大きいほど、少量の材料で大量の水分子を吸着することができるため競争力のある材料と言えます。
また、体積変化を極力させたくない材料の場合は、細孔量ができるだけ少ない方がよいでしょう。

ガス吸着測定のイメージ

図1. ガス分子の吸着量の違いによる表面積の差

上記のように、材料のマクロな特徴が、比表面積や細孔特性といったミクロな物性に紐づいているケースは多く存在します。そのため、試料の性能や特徴を知るために、ガス吸着測定が多く用いられます。

ガス吸着法といっても様々な測り方があり前処理条件なども重要になります。例えば試料と反応を起こしにくい窒素ガスなどを吹き込む窒素吸脱着測定などでは、試料を冷却して試料表面に物理吸着をさせることで、得られた測定系の容積及び圧力変化から窒素吸着量が算出できます。

ガス吸着測定の原理

1. 吸着等温線とは

吸着等温線とは、横軸に相対圧、縦軸に試料へのガス分子の吸着量を取ったプロットのことです。どれくらいの圧力でガスを圧入したときに、どれくらいのガス分子が吸着したかを知ることができます。

等温吸着線のイメージ

図2. 吸着等温線

材料へのガス分子の吸着量は温度依存性があるため、等温下で測定する必要があります。そのため吸着「等温」線と呼びます。通常液体窒素で試料を冷却しながらガスの圧入を行います。

2. 吸着等温線の解析方法

得られた吸着等温線を解析することでデータを得ることができます。様々な解析手法がありますが、比表面積の解析と細孔分布の解析に大別することができます。

比表面積を求める解析手法としてBET法やLangmuir法、細孔分布を求める解析手法としてBJH法やDH法、tプロット法など、様々な解析手法があります。

比表面積の解析
一般的に用いられることが多いのはBET法です。吸着等温線にBETの式をあてはめ、比表面積を算出します。BETの式とは、一定温度で吸着平衡状態であるとき、吸着平衡圧Pとその圧力での吸着量Vの関係を示す式で、以下の通りです。

   P/{V(Po-P)}=1/VmC+(C-1)/(VmC)×P/Po

Po: 飽和蒸気圧
Vm: 単分子吸着量 (気体分子が固定表面で単分子層を形成した時の吸着量)
C: 吸着熱などに関するパラメータ>0

※この関係式は、P/Po:0.05~0.35の範囲でよく成立します。

P/PoとVはガス吸着分析から得ることができます。この値をもとにBETプロットと呼ばれる直線をプロットし、傾きと切片からVmとCが算出できます。

BETプロット

図3. 吸着弾面積を乗算し比表面積を求める方法

単分子吸着量にガス分子の吸着断面積 (ガス分子一個が占有する面積。窒素の場合、0.162nm2) を乗算することで、表面積を求めることができます。

BET法による解析はC値が正でないと精度がありません。C値も併せてチェックし、負になっている場合は測定条件や試料の状態の確認が必要です。

3. ガス種類による違い

ガス吸着測定は一般的に窒素ガスが用いられますが、比表面積の小さいサンプルを測定する際は、アルゴンやクリプトンが用いられる場合もあります。

これは、アルゴン・クリプトンは窒素に比べて吸着断面積が小さいため、小さな比表面積の試料でも精度よく分析できるためです。窒素に比べ、アルゴン・クリプトンは高価なため、分析したい試料の素性に応じてガスが選択されます。

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