フォークリフトタイヤ

監修:株式会社フジエナジー

フォークリフトタイヤとは

フォークリフトタイヤとは、フォークリフトで使用されているタイヤです。

フォークリフトは様々な荷物の積み下ろし作業や運搬に使用される搬送用車両です。フォークリフトの車両にはカウンター式とリーチ式などの種類があり、適切なフォークリフトタイヤが取り付けられます。フォークリフトタイヤは2tを超えることもあるフォークリフトの許容荷重にも耐えられるよう設計されています。 安全なフォークリフトの走行のためには適切なフォークリフトタイヤの交換・メンテナンスが必要です。

フォークリフトタイヤの使用用途

フォークリフトタイヤは、フォークリフトを走行させるために使用されます。フォークリフトは工場や物流倉庫で荷役作業の効率化のために用いられている搬送用車両です。フォークリフトを運搬に用いることで重量の大きな荷物を迅速に移動することが可能です。

フォークリフトタイヤは使用することで徐々に薄くなっていくため、適切な時期に交換することが推奨されています。

フォークリフトタイヤの原理

フォークリフトの車両には、座って搭乗する「カウンター式」と立って搭乗する「リーチ式」との2種類があります。

リーチ式フォークリフトは、3種類のタイヤから構成されています。

・ドライブタイヤ: 後部左側に取り付けられる駆動輪
・キャスタータイヤ:後部右側に取り付けられる補助タイヤ
・ロードタイヤ:前方の左右に1つずつついているタイヤ

カウンター式フォークリフトは、自動車と同様に前・後輪合わせて4輪から構成されます。一般的に、カウンター式の方がリーチ式よりもタイヤの強度が高い場合が多いです。

フォークリフトタイヤの種類

1. 概要

前述の通り、フォークリフトにはリーチ式とカウンター式があり、それぞれで使用されるタイヤの種類が異なります。また、タイヤサイズなども製品によって異なるため、車体にあったものを選択することが必要です。

2. リーチ式フォークリフト用タイヤ

リーチ式フォークリフトで使用されるタイヤには、ウレタンタイヤと黒ゴムタイヤがあります。

ウレタンタイヤは、耐摩耗性や耐荷重能力に優れ、ゴムよりも長寿命で路面にタイヤ跡が目立ちません。

黒ゴムタイヤはウレタンよりも低コストで、グリップ力に優れているため滑りやすい路面でも使用可能です。タイヤ痕が目立ちにくいカラーのバリエーションもあるため、食品加工や薬品、自動車工場でも多く採用されている特徴があります。

一般的な用途としては、倉庫内などの清浄な路面を走行する場合に特にウレタンタイヤが適しており、倉庫外などの滑りやすい路面も走行する場合は黒ゴムタイヤが適しているとされます。

3. カウンター式フォークリフト用タイヤ

カウンター式フォークリフトのタイヤには、主に

  • エアータイヤ
  • ノーパンクタイヤ
  • エアボスタイヤ

の3種類のタイヤがあります。

エアータイヤは、比較的、金額が安いことから比較的標準的に使用されるタイヤです。軽く弾力性が高いタイヤであるため、運転時の乗り心地が良く、交換する際も持ち上げるのが楽です。一方で、パンクの恐れがあることはデメリットであり、空気圧の調整等メンテナンスも必要です。

ノーパンクタイヤは、タイヤ内部まで全体がゴムで作られているタイヤです。タイヤの内部に空気が入っていないため、タイヤがパンクする心配がなく、空気圧調整のメンテナンス作業も不要です。一般的にエアータイヤに比べて長持ちします。タイヤの溝が減るとスリップしやすい点には注意が必要です。

エアボスタイヤは、ノーパンクタイヤのように内部までがゴムで作られているものの、側面に穴を開けることで衝撃吸収や軽量化が図られているタイヤです。全体的に高価であることが多い一方、ノーパンクタイヤの実用性とエアータイヤの乗り心地の良さを併せ持つタイヤです。

路面状況が悪い場合や走行距離が長い場合などは、クッション性が高く乗り心地の良いエアータイヤが推奨されます。また、くぎや金属片などパンクしやすい物が路面に落ちている場合がある現場では、ノーパンクタイヤやエアボスタイヤが適切です。

本記事はフォークリフトタイヤを製造・販売する株式会社フジエナジー様に監修を頂きました。

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マイクロフィルムスキャナ

マイクロフィルムスキャナとは

マイクロフィルムスキャナとは、マイクロフィルムをスキャンし、PDFや画像データに変換することに特化したスキャナです。

マイクロフィルムとは、書類や図面を微小サイズに縮小してフィルムに記録したものです。書類や図面をそのまま保存するよりも大幅に省スペース化できるだけでなく、長期保存に適し記録の法的証拠能力も認められているという特徴があります。マイクロフィルムスキャナは、このようなマイクロフィルムを電子化する際に使用されます。

マイクロフィルムには、ロールフィルム、フィッシュフィルム、ジャケットフィルム、アパーチュアカードなど様々な形状がありますが、多くのマイクロフィルムスキャナはこれらに対応してスキャンを行うことが可能です。

マイクロフィルムスキャナの使用用途

マイクロフィルムスキャナは、マイクロフィルムに保存されているデータを電子化し、PDFや画像ファイルなどに変換することに使用されています。

電子化を行うことにより、

  • パソコン・スマートフォンなどから手軽にデータを閲覧可能になる
  • 電子化した内容をデータベース化することで検索・情報収集などを行いやすくなる
  • 電子化によって、保管スペースやコストの削減、データを検索して取り出す過程が効率化される

などの効果を得ることが可能です。

マイクロフィルムスキャナによるこのような電子化は、国立国会図書館をはじめとする多くの図書館、歴史資料館、大学、自治体新聞社、民間企業などで利用されています。スキャンによって作成されたデジタル画像データは施設・組織内で利用されたり、WEBサーバーを通じて活用されたりしています。

マイクロフィルムスキャナの原理

1. 概要

マイクロフィルムスキャナは、基本的に通常のスキャナと同様にフラットヘッド式でスキャンを行います。フラットヘッド式スキャナとは、コピー機のようにガラス台に置いた原稿を読み取るスキャナです。フィルム 原稿を固定し光を遮断した状態でスキャンします。

フィルムスキャンに特化した機能としては、ロールフィルム用のキャリアなどがオプションもしくは標準で搭載されます。スキャン機構は主にCCD素子などによる高画質スキャンです。製品にもよりますが、多くの製品では、光学ズームや電子ズームを備えており、幅広いズーム倍率を利用できる場合が多いです。

保存できるファイル形態の種類には、JPEG、JPEG2000、BMP、PNG、PDF、TIFFマルチページ、PDFマルチページなどがあります。

2. スキャン設定

マイクロフィルムスキャナのスキャンの設定には主に下記のような項目があります。

  • フィルム種別: フィルムのサイズやネガ・ポジの判別
  • 階調: モノクロ2値、グレースケール、カラーなど
  • 解像度: 1インチあたりのドット数 (dpi)
  • スキャン倍率
  • ファイル形式

3. 使用される書類の種類

マイクロフィルムが使用される書類には下記のようなものがあります。長期保存に適しており、法的に記録の証拠能力も認められている記録媒体です。そのため、多くの企業・団体に用いられています。

  • 国・自治体の公文書、届出書類
  • ゼネコンなどにおける建築物の設計図、竣工図面、完成図書など
  • 大学・研究機関、博物館、歴史資料館などにおける新聞、
  • 古文書、貴重図書などのアーカイブ
  • 生命保険の申込書、請求書

マイクロフィルムスキャナの種類

マイクロフィルムスキャナは、様々な種類の製品が販売されています。

マイクロフィルムのタイプには、ロールフィルム、フィッシュフィルム、ジャケットフィルム、アパーチュアカードなど、様々な種類・形状があります。マイクロフィルムスキャナは、それぞれの製品はこれらのうち1種類もしくは複数種類に対応可能です。ロールフィルムに対応した製品では、専用のキャリアを使用します。

解像度では、上限は600dpi、1200dpi、6400dpiなどの種類があり、カラー対応可能な製品とモノクロのみのものとがあります。その他、製品によっては、下記のような機能が搭載されています。

  • パソコンに接続されたプリンターへの直接出力
  • タッチパネルディスプレイでのデータ操作
  • 画像反転機能

使用する際は用途等に合わせて選択することが必要です。

ブックスキャナ

ブックスキャナとは

ブックスキャナとは、本を裁断することなくそのままスキャンすることができるスキャナです。

本や資料などをpdfなどの電子データとして保存することに使用されています。多くの製品ではスタンド型のオーバーヘッドと呼ばれる形状をしており、通常のスキャナと異なって本や資料を上向きにしたままスキャンすることができます。他方、省スペース化が必要なシーンなどでは、通常のスキャナと類似の形状であるフラットベッドスキャナと呼ばれる製品が使用されます。ブックスキャナは、通常のスキャナと異なり、本の厚みや本の背の部分の影や文字の歪みの処理に適応しているのが大きな特徴です。通常300dpi以上の高解像度に対応しています。

ブックスキャナの使用用途

1. 概要

ブックスキャナは、通常、資料や本を電子化する用途で使用されます。電子化によって既存の紙の書籍の保管よりも省スペース化を図ることができるため、

  • 大きくかさばる書籍 (特に専門書や図録) のデータ化
  • 書籍のポータブル化や断捨離のためのデータ化

などの用途に使用されます。また、OCR機能を合わせて使用することで、書籍の内容を電子データ上で検索することができるようになります。そのため、

  • 書籍、書類中の記述の中から必要な情報を瞬時に探せるようにする
  • 重要な箇所やコンテンツの切抜きを行う
  • スキャンしたドキュメントを分類して整理する

などのデータ的処理を行えるようにすることが可能です。

2. 活用シーン

ブックスキャナは様々なシーンで活用されています。研究者の文献収集や学術論文執筆、ライター・レポーターなどでは、文献や資料のデジタル化、収集プロセスや整理の効率化に活用することが可能です。

ブックスキャナの原理

1. 概要

ブックスキャナには、主に上向きに本を開いて読み取る「オーバーヘッド型」と本を伏せてガラス台に乗せてスキャンする「フラットベッド型」があります。

読み取りセンサーには、主にCCDとCISの2種類がありますが、多くの製品で画質の良いCCDセンサーが使用されています。解像度は、300dpi〜600dpiの場合が多く、文書だけのスキャンであれば300dpiで十分であり、図表がある場合も600dpiであれば綺麗にスキャンすることが可能です。大きさはA4見開きをスキャンすることが可能である、A3型の製品が多いです。

2. オーバーヘッド型

オーバーヘッド型は、デスクライトのような形状をしているブックスキャナです。本を真上から見開きの状態でスキャンできます。

見開き部分に生じる歪みや、本を抑えたときの指などが映り込みやすいという特徴もありますが、補正機能によって歪みや映り込みを修正を行うことができる製品も多いです。

2. フラットベッド型

フラットベッド型は通常のスキャナと同様に本を伏せたままスキャンを行う形状のブックスキャナです。通常のスキャナと異なり、エッジ部分に工夫が施されたモデルが多く、見開き部分の歪みや影の映り込みを抑えるよう、本のスキャンに特化して設計されています。

ページを伏せる必要があるため、オーバーヘッド型に比べて本への負荷が大きく、また都度本を表に返してページをめくる必要があります。

ブックスキャナの種類

ブックスキャナには様々な製品があります。製品ごとに異なる機能が搭載されており、その具体的な例には下記のようなものがあります。

  • 本へのダメージを抑えるため、紫外線、赤外線フリーのLED光源を採用している
  • 本を開いた時に発生する中央の歪みを自動補正することができる
  • 綴じ部の影や原稿押さえの指跡を消去することができる
  • 自動めくり (自動的にページめくりを行ってスキャンを行う)
  • 小さな複数枚の原稿を、一度にまとめてスキャンし、自動的に切り抜く
  • 様々なクラウドサービスとの直接連携

また、ブックスキャナには、スキャナ部分だけでなく、出力部もシステムの一部としてパッケージングされているものもあります。このような場合の複合機は、コピーやFAX、ネットワークプリンタとしての利用などにも活用可能です。

サーマルプロテクター

監修:高野精密工業株式会社

サーマルプロテクターとは

サーマルプロテクターとは、一定の温度を超えると自動的に電流を制御して温度を下げる役割を持つ過熱保護装置の1つです。

モーターや、電池・バッテリーの他、回路や部品の過熱保護、過電流保護、発火防止に使われています。一般的にはバイメタル材を使用し、形状変化によりスイッチの開閉、温度調整を行う仕組みです。ヒューズの場合は過大電流が流れた際に溶断するのに対し、サーマルプロテクターは温度による形状変化を利用していることから、温度が下がると再度通電可能になるという違いがあります。また、スイッチの開閉を行うことから、ON-OFFは瞬時に切り替わる特長をもっています。スマートフォンをはじめとする様々な小型機器の電池や、医療機器やサーバーなど様々な産業機器に使用されています。

サーマルプロテクターの使用用途

サーマルプロテクターは、家庭用から業務用まで様々な電気製品・バッテリー類において過熱防止装置として使用されています。下記は主な使用用途の例です。

  • リチウムイオン電池 (ノートパソコン、タブレット、スマートフォン、電動工具、デジタルカメラなどに使用される)
  • ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池 データサーバー、緊急・非常用バックアップ電源、無線通信機器、(医療機器、などに使用される)
  • ACモーター
  • 各種家電製品 (ヘアドライヤー、コーヒーメーカー、トースター、洗濯機、エアコンファンなど)
  • 電気ヒーター
  • LED照明
  • 変圧器
  • バラスト
  • 業務用の冷凍用圧縮機

これらの製品において、サーマルプロテクターは、過電流や異常な温度上昇から製品を保護し、発火などの事故を未然に防止するために使用されている装置です。

サーマルプロテクターの原理

サーマルプロテクターは、バイメタル材などの、温度によって形状が変化する素材を用いて動作する機器です。回路に接続するリード線や端子・バイメタル材・絶縁キャップなどの外装材から構成されます。使用している機器・回路の温度が上昇すると、材料の熱膨張によりバイメタルシートが曲がり、それによってスイッチまたは接点が開閉する仕組みです。

バイメタル材とは、クラッドメタルの技術を用いて熱膨張係数の異なる異種金属を圧延接合したものです。表と裏で熱膨張係数が異なることにより、温度変化とともに一定の曲率で変形します。サーマルプロテクターで使用されるバイメタル材には、銅と鉄のクラッド材などがあります。

サーマルプロテクターの動作機構では、通常時に閉じている回路の接点を温度の上昇によって開放するものが多いですが、温度の上昇により通常時に開いている回路をクローズにするものもあります。

サーマルプロテクターの種類

1. 概要

サーマルプロテクターは、様々な製品が販売されています。設定温度帯は、5〜150℃、5〜200℃、30〜90℃などの中から様々な製品があり、5℃刻みや10℃刻みで用意されていることが多いです。大きさも様々であり、小さいものでは外形寸法9mm前後のものもあります。

定格電流や最大許容電流なども製品によって異なるため、用途に合わせて適切なものを選択することが必要です。

2. 自動復帰型と自己保持型

温度上昇により接点が開いて回路保護が行われた後の動作については、自動復帰型と自己保持型があります。

自動復帰型とは、設定温度に達して電流が流れなくなったあと、温度が下がって復帰温度になれば自動的に接点が閉じて通電状態になります。

自己保持型は、温度上昇によって達すれば電流が流れなくなった後、温度が下がっても通電状態に戻らない仕組みです。自己保持型の一つの仕組みには、PTCヒーターを内蔵させるものがあります。温度上昇による接点開放と同時に可動接点板がPTCと導通し、回路からの電圧によるPTCの発熱を利用して、バイメタルが接点開放状態を保持します。自己保持の間はPTCを通してサーマルプロテクターに微小の電流が流れます。尚、通電状態にするには、回路を他動的に切断して温度が下降すると復帰します。 

本記事はサーマルプロテクターを製造・販売する高野精密工業株式会社様に監修を頂きました。

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2色成形

2色成形とは

2色成形とは、2色成形機と呼ばれる専用の射出成形機を用い、異なる材料を一体化させて成形する射出成形工法です。

異材質・異材異色・同材異色など、様々な組み合わせの樹脂素材を成形することができます。他工法では2部品を別々で成形して組合せていたものを、2色成形では成形工程内で一体化して成形機より取出す事が可能です。製造工程において部品点数削減や組立て工数削減などの効果があります。

2色成形の使用用途

1. 概要

2色成形は、様々な製品製造用途で使用されています。2色成形の採用目的には主に下記のようなものがあります。

  • 防塵防⽔部品 (押しボタンやパッキン) と筐体を⼀体成形する
  • 有⾊材と透明材のような異色2層構造を⼀体成形する
  • エラストマーと硬質素材のような触感の異なる素材を一体成形する (グリップ力のある部品と嵌合部)
  • パッキンやボタンのような多機能多部品を⼀体成形する

2. 具体的な製品例

  • ウェアラブルバンド
  • カメラグリップ 
  • 電⼦機器の外装
  • スマートフォン部品
  • バーコードリーダー、リモコンなどのケース類の防塵・防滴パッキン、操作パネルの押しボタンなど
  • 服飾ヒモ留めパーツ
  • 工具等のグリップ
  • 透明材での厚肉成形・表示マークの文字
  • 各種外観部品
  • 車載用内装部品 

透明材での表示マーク・文字は、各種機器の他、車載用オーディオ製品やドアノブなどの文字やマークにも使用されます。また、めっき加工製品においては、めっきが析出するプラスチック (ABS樹脂など) と析出しないプラスチック (PC樹脂など) の組み合わせで生地の2色成形を行うと、設計意図した部分のみに綺麗に部分めっきを施すことが可能です。主に加飾用途などで使用され、車載内装部品をはじめとする様々な製品に使用されます。

2色成形の原理

1. 概要

2色成形機には、2本のノズル、シリンダーがあります。それぞれから金型内部に順次、射出充填することで2層を組み合わせた一体成形製品を製造する仕組みです。一般的な2色成形では、金型の凹側、キャビティの異なる2つの金型を用い、1次型へ射出した後、2次型へ射出する際に180度回転や反転などの工程が加わることが特徴です。

2色成形は、1つの工程で2つの樹脂や異材を組み合わせることからダブルモールドと呼ばれることもあります。

2. 2色成形に使用される素材

2色成形には、様々な樹脂が使用されます。下記は主な樹脂素材の例です。

  • ポリカーボネート樹脂 (PC): 耐衝撃性、耐熱性、耐候性に優れており、伸縮性があるため加工性も良好。
  • アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂 (ABS): 光沢があり、印刷や塗装などの加工が容易。耐熱性、強度、耐油性、耐衝撃性にも優れる。
  • アクリル樹脂 (PMMA) : 高い耐久性と透明性が特徴。
  • アクリロニトリルスチレン樹脂 (AS) : 耐酸性、耐アルカリ性、耐薬品性があり、透明性や耐熱性 (80度〜100度) に優れる。
  • 熱可塑性エラストマー (TPE) : ゴムのような高い弾性を持ち、熱を加えると軟化する。材料の配合によって柔軟性、硬度などの調整が可能。

2色成形の種類

前述の通り、2色成形では様々な材料が使用されており、材料によって柔らかさや性質などが異なるため、組み合わせに注意することが必要です。例えば、軟質材料と硬質材料の組み合わせでは、素材の特性により密着力が低い場合が多く、剥離が起きやすくなります。異なる材料同士で密着性が低下する可能性がある場合は、接着面積を多めに取ることが必要です。

また、1次成形で着色材料を成形し、2次成形で透明樹脂を上から成形する場合では、2次成形時に1次成形品が溶け出してしまわないよう、樹脂の組み合わせを注意する必要があります。

所望の外観や機能が得られるように、設計においては、材料同士の密着性、適切な金型構造、成形条件 (射出圧力や射出速度、保持圧力や冷却時間)  などが綿密に検討されます。

薄膜コーティング

薄膜コーティングとは

薄膜コーティングとは、ベースとなる基材・基板の上に薄膜層を作り、様々な機能を付与する技術・サービスです。

一般的には、10μm以下の膜が薄膜と呼ばれますが、100μmでも薄膜と呼ぶ場合もあり、厳密な定義はありません。薄膜は、基材表面の保護、意匠性の付与、反射防止、絶縁など様々な機能性向上のために使用されます。CPU、HDDの記録面、液晶ディスプレイや、レンズ、電子部品の電極、工具の耐久性向上など、さまざまな製品に使用されているテクノロジーです。

薄膜コーティングの使用用途

1. 概要

薄膜コーティングは、主に下記のような用途で使用されています。

  • 物体の表面の強化や保護
  • 光学的性質の付与 (反射防止膜・反射膜・蛍光・光学フィルタ)
  • 低摩擦化
  • 導電性付与・絶縁性付与
  • 意匠性の付与
  • 撥水・撥油

薄膜コーティングによって付与されるこれらの表面効果は、様々な産業分野で活用されています。

2. 電子工業

電子工業産業において、薄膜コーティング技術は、電子機器・ディスプレイ機器の高性能化、小型・薄型化、耐久性向上などに貢献しています。成膜される薄膜の種類は、絶縁膜、保護膜、磁性膜などです。主な用途には下記のようなものがあります。

  • 集積回路・半導体素子の電極や配線
  • 表示素子の透明導電膜、絶縁膜、保護膜、蛍光体
  • 磁気素子の軟磁性膜、硬磁性膜、ギャップ材、絶縁膜
  • オプトエレクトロニクス素子

2. エネルギー関連分野

薄膜コーティングはエネルギー分野においても活用されている技術です。特に、太陽電池にアモルファスシリコン膜が使用されています。アモルファスシリコン膜とは、シランガスという物質をプラズマ化学蒸着して得られる薄膜です。エネルギー分野における主な用途には下記のようなものがあります。

  • 太陽電池用薄膜
  • 透明導電膜
  • 電極
  • 反射防止膜
  • 光熱変換素子用薄膜 (選択吸収膜、反射膜、選択透過膜など)

3. 工業

各種工業製品では、ガラス表面などの反射膜、反射防止膜、保護膜などに薄膜コーティングが施されます。これらの薄膜コーティングが施されたガラスは、

  • 電車・鉄道車両の窓
  • 鉄道の信号機・表示灯
  • 航空機の計器類・ディスプレイ
  • 車載ディスプレイ機器

などに使用されます。また、各種切削工具や金型の表面に施される薄膜コーティングは、耐摩耗、耐食、耐熱、潤滑などの機能を付与することなどが目的です。その他、レーザー加工機、医療機器、分析装置、プロジェクターなどにも薄膜コーティングは使用されます。

薄膜コーティングの原理

1. 概要

薄膜を形成する方法で一般的なものは、真空成膜です。
真空成膜では、真空中で膜の材料を基板の表面に堆積させます。真空成膜には、物理蒸着 (PVD) 、化学気相成長 (CVD) などがあります。

真空成膜以外には、メッキ、溶射、塗装、スプレー法なども薄膜コーティングの一種として含まれることがあります。ただし、これらは真空成膜よりも膜が厚くなることが多いので、塗膜や皮膜と呼ばれることのほうが一般的には多いです。

2. PVD

PVD (英: Physical Vapor Deposition) とは、真空容器内で発生させた原料の蒸気を工具や部品などの成膜対象物に付着させることで薄膜を形成する方法です。最も一般的な PVD法にはアーク放電とスパッタリングがあります。処理温度は 70 ~ 600℃程度で、原料や条件を変えることで様々な薄膜を作製することが可能です。

構造は単層膜、多層膜、グラデーションをつけたもの
など多種にわたり、TiN、AlTiN、TiAlN、CrNなどがあります。膜の種類や構造,組成などを変えることで、膜の硬さや弾性、密着性などの特性を変化させることが可能です。

3. CVD

CVD (英: Chemical Vapor Deposition) は、原料の蒸気を気相中もしくは成膜対象物の表面において分解及び化学反応させ,薄膜をコーティングする方法です。主には熱CVDとプラズマCVDがあります。

熱CVDとは減圧下において原料ガスを熱のエネルギーによって分解・反応させる方法です。700~1050℃の処理温度で、TiC、TiCN、TiN、Al2O3 (アルミナ) などの単層膜や多層膜を形成します。ガスが触れるすべての表面にコーティングが可能であるため、複雑な形状や内側への均一なコーティングも可能です。

プラズマ CVDとは、原料ガスをプラズマ放電のエネルギーによって分解・反応させる方法です。成膜温度は 200℃程度と、熱CVDに比べて低くなります。プラズマ CVD で形成される DLC 膜 (Diamond-Like Carbon) 膜はアモルファス構造をしており、これによって潤滑不足の条件でも硬さや耐摩耗
性、低摩擦特性に優れているという特徴があります。

薄膜コーティングの種類

薄膜コーティングの成膜材料には、金属 (Zn、Au、Al、In、Ag、Cr、Tiなど) 、誘電体 (Al2O3、Nb2O5、SiO2、TiO2) など様々な種類が使用されます。平面、曲面、ドーム、フィルムロール、円筒、ワイヤーや繊維、特殊立体物などの様々な形状に適用可能です。

機能別の種類では、主に下記のようなものがあります。

  • 反射防止膜: 光の反射を抑えて透過率を向上させる薄膜
  • フィルタ膜: 光を弱めたり、特定の波長範囲の光だけを透過させたりする目的で使われる光学薄膜
  • 透明導電膜: 導電性と可視光を透過する性質の両方を持った材料で作られた薄膜
  • 耐摩耗性膜: 耐摩耗性を向上させる機能を持ち、工作機械やドリルビットなど、さまざまな工具・金型の表面に施される薄膜
  • 固体潤滑膜: 潤滑油やグリースなどを使用できない部品や機械などに使用される薄膜

タープ取付金具

監修:浅野金属工業株式会社

タープ取付金具とは

タープ取付金具とは、各種タープ・シェード・オーニングなどの設置に使用される金具です。

タープ・シェード・オーニングとは、日差しを遮る目的で張られる布製のシートです。夏を中心に紫外線対策・熱中症対策で使用されることが多くなっています。これらの日除けは、専用の金具 (タープ取付金具) を用いて支柱や柵などに固定されます。幼稚園・保育園や、飲食店及び商業施設などのテラス、屋上スペース、個人住宅の庭など、幅広く使用されている製品です。

また近年のアウトドアブームで、車やテントにタープを金具で連結して使用する人が多くなってきました。

タープ取付金具の使用用途

1. 取り付け場所

タープ取付金具は、日除けのためのタープ・シェード・オーニングを設置することに使用されます。金具の種類にもよりますが、取り付ける場所は主に下記のような場所です。

  • 柵・フェンス・支柱
  • 物干しざお・手すり
  • サッシ枠
  • 窓 (ガラス面)
  • シャッター・雨戸
  • 建物外壁 (木・金属・コンクリート)

また、キャンプなどのアウトドアシーンでは、テントや車にタープを連結する用途もあります。車に取り付けるタープは、カーサイドタープと呼ばれ、そのタープを連結する金具はカージョイントと呼ばれることがああります。

2. 使用シーン

タープ取付金具は、個人使用・業務利用を問わず様々な分野での用途があります。

  • 個人住宅の庭・ベランダ
  • 幼稚園・保育園の園庭・プール・砂場など、教育施設の屋外
  • オフィスビルやマンションなどの屋上施設
  • 飲食店・商業施設・ホテルなどのテラス・屋上施設
  • キャンプなどのアウトドア

それぞれの利用シーンにおいて、用途にあったタープ・シェード・オーニングを設置することに使用されています。

タープ取付金具の原理

タープ取付金具は、用途に合わせて、フック・吊り滑車・カラビナなどのうち一種類もしくは複数の種類を組み合わせて使用されます。

1. 個人用

個人住宅で使用する場合は比較的タープも小型で簡易的な使用であるため、サッシ・外壁用のフックが使用されることが多いです。製品によりますが、ねじ留めもしくはマグネットや粘着テープで取り付けることが可能です。

アウトドアなどで車に取り付けるカーサイドタープでは、吸盤式のフックが用いられます。また、窓などのガラス面に取り付ける場合も吸盤式のフックを使用することが可能です。

2. 業務用

業務用の使用では、タープの使用期間も長く大型になる傾向があります。安全に設置するために、カラビナなどが使用されることが多いです。更に吊り滑車などを併用することで昇降式として利用される場合もあります。フェンスなどに設置したり、専用の支柱などに取り付けたりします。

使用の都度外す必要のない商業施設の屋上などでは、ステンレスワイヤー・滑車・カラビナなどを使用し、タープにパイプを通して吊り上げている場合もあります。ワイヤーを使用することで大規模まで広く対応することが可能です。また、滑車を組み合わせて用いることで、開閉式として使用することができ、利便性が向上します。

タープ取付金具の種類

タープ取付金具は、前述の通り様々な種類があり、用途に合わせて一種類もしくは複数種類を組み合わせて使用されます。

材質では、ステンレス製の金具は特に耐食性、耐久性に優れており、腐食しやすい屋外での使用に適しています。雨や雪の多いエリア、沿岸地域などでも劣化しにくく使用することが可能です。

1. 家庭用

家庭用では、サッシ枠取り付け用・外壁用 (木・コンクリート・金属) などの種類があり、ねじ留め・マグネット・粘着テープ・接着剤・吸盤などの設置方法があります。タープ側はフック形状になっていることが一般的です。耐荷重等は大きくないことが多いですが、取り付けが比較的容易であるものが多いです。

2. 業務用

業務用では、カラビナ、滑車、シャックル、リングキャッチなど、家庭用よりも丈夫な金具が使用されることが多く、必要に応じてステンレスワイヤーやタープ用のパイプなども併用されます。滑車などの可動式の金具を組み合わせることで、開閉式や昇降式のタープとして使用することが可能です。

本記事はタープ取付金具を製造・販売する浅野金属工業株式会社様に監修を頂きました。

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マイクロバンプ

マイクロバンプとは

マイクロバンプとは、半導体デバイスと回路基板側の電極を接合するために形成する微細なはんだの突起です。

一般的に、ピッチが50μm未満であるバンプがマイクロバンプと呼ばれています。近年高性能化が求められるIC製品において、TSVとマイクロバンプ でICチップを接合する積層型三次元IC (3D-IC) 技術などの開発が進められています。ICチップを貫通電極とマイクロバンプで接続することに より、チップ間の配線長を劇的に短くすることが可能です。これにより、配線遅延時間の低減、省電力化を実現することができます。

マイクロバンプの使用用途

1. 概要

半導体チップの小型化、高性能化に伴って、接続ピン数は増加し、接続ピッチや電極サイズは微細化する傾向にあります。マイクロバンプとは、このような微細化、狭ピッチ化に対応することを目的とした接合プロセスです。

マイクロバンプによって接合部の機械的ストレスが分散され、特性の変動を防ぐことができます。また、一対の電極をたくさんのマイクロバンプで接続することにより、歩留まりをあげることが可能です。

2. 具体的な用途

マイクロバンプの具体的な用途例には下記のようなものがあります。

  • 半導体パッケージ一般
  • 3次元集積回路
  • 非破壊検査用X線センサ
  • 医療用X線センサ
  • 遠赤外線イメージセンサ
  • 高エネルギー物理学研究用の素粒子検出器

マイクロバンプは、X線センサの解像度を従来の100倍以上に上げる効果があり、医療用などのセンサの性能向上に貢献しています。これにより、X線の照射量が少なくて済むため、人体への影響を軽減することができます。また、マイクロバンプは、従来のデザインで作った積層チップにも適用可能です。

マイクロバンプの原理

1. 半導体はんだバンプ

半導体デバイスの実装方式には、ワイヤーボンディング実装方式と、フリップチップ実装方式があります。

ワイヤーボンディング実装方式は、半導体デバイスの電極と回路基板側の電極を金などのワイヤーで接続します。

一方、フリップチップ実装方式は、半導体デバイスと回路基板側の電極同士を直接接続する実装方法です。 反転 (フリップ) させた半導体デバイスと回路基板を熱や超音波で圧着します。圧着のためには、あらかじめ半導体ウエハの電極部に突起を形成する必要があり、この突起がはんだバンプです。また、この作業工程を半導体はんだバンプ加工工程と呼びます。

2. Cuピラーバンプ形成

マイクロバンプの接合は、一般的なバンプよりもピッチが狭いため電解めっき法によるCuピラーが主流です。

はんだボールではリフロー時に横方向に大きく広がるため、端子間ピッチを確保する必要があり、マイクロバンプにはあまり適しません。Cuピラーは、はんだボールよりも少量のはんだで接合することが可能です。

Cuピラーバンプ形成工程では、下記の順に工程が進められます。

  1. スパッタリングによるTi/Cuシード層 (導電層) 形成
  2. フォトリソグラフィによるレジストパターンの形成
  3. 電極形成部におけるCuめっきによる柱状の電極形成
  4. バリア層としてのニッケル層の形成及び、スズ-銀 (Sn-Ag)などの鉛フリーはんだの連続的な積層めっき形成

3種類の積層めっきは1台のめっき装置で連続処理が行われます。Cuピラーの高さのバラツキが大きいと実装する際の接続性に直接影響するため、めっき工程においては膜厚均一性を確保することが非常に重要です。

マイクロバンプの種類

マイクロバンプには、Cuピラーバンプ形成の他、無電解スズめっきによる形成などの方法があります。無電解スズめっきには還元型と置換型の2種類が有り、置換型の無電解スズめっきは原理的にスズの膜厚を厚くすること ができません。一方、塩化チタン (Ⅲ) を還元剤とする無電解スズめっきは自己触媒反応により連続析出することが可能であり、バンプ形成に適しています。

被加工物は、通常のSiウェハをはじめとして、SiC、GaAs、 InP、サファイアなどです。ウェハ以外の四角形状基板や、FPCなども加工される場合があります。ウェハサイズは2〜12インチ程度様々なものがあります。バンプ径は最小φ3μm程度から有り、バンプピッチは最小6μm前後から幅広くあります。

自動乳鉢

監修:株式会社石川工場

自動乳鉢とは

自動乳鉢とは、乳鉢と乳棒をモーターで動かして硬質物質や分析試料などを粉砕、混合、分散、混練する機械です。

電子部品材料分野、砥石分野等の各種産業や医学・理科学分野における実験・研究の現場で活用されています。ポットミルなどに比べて、小さな粉砕エネルギーであることが特徴で、その特徴により、電子部品材料分野では、メカノケミカルやメカニカルアロイングが達成できます。また、粉砕中の試料を肉眼で容易に確認することができます。

自動乳鉢は単に手擂りの代替手法として用いられるだけではなく、従来になかった事象を発現させ、新たな材料開発に寄与するものです。さらには、量産まで見据えた工法であるため、量産立ち上げ時間も短縮できます。

自動乳鉢の使用用途

1. 概要

自動乳鉢は、食品、電子部品材料、金属化学などの産業分野や、各種分野の試験研究用途で使用されている機器です。研究では、特にメカノケミカル反応やメカニカルアロイング反応を用いた状態で使用されることもあります。具体的な活用事例には、

  • 全固体電池の試作とその評価
  • ゼオライトの粒子分布の擂潰時間依存性の評価
  • ガラス粉砕実験
  • 磁器杵を原材料とした磁器ナノ粒子の生成

などがあります。

2. 分野と被加工物

自動乳鉢は多くの分野で活用されており、分野と被加工物には下記のような例があります。

  • 理化学: 金属・ガラス・カーボン・シリカなどの各種ペースト、スラリー、カーボンナノチューブ、磁気材料
  • 電気・電子: 導電性インク、半導体材料 (導電性接着剤など)、各種センサー素材、フェライト磁石素材、ハンダ材、セラミック材料 (チタン、ジルコニア、アルミナなど) 、パッケージ封止材
  • 電池用材料: 全固体電池の電極材、リチウム電池電解質
  • 医療・医学: 歯科材料 (義歯素材など) ・人工骨、軟膏材、香料、漢方薬、健康食品
  • 塗料: 塗料用粉末、インク材料、染料、顔料、絵具・漆材、七宝釉薬、朱肉、墨汁
  • 樹脂・油脂: 触媒、接着剤添加物、グリース添加物、火薬類
  • 窯業・金属・ガラス: ファインセラミック粉、貴金属粉末及び各種金属粉末、カーボン粉末、ガラス添加物、粉末治金、酸化アルミナ、鉱物試料、陶芸釉薬
  • 砥石・研磨剤: 砥粒、研磨剤、ダイアモンド、ボロンナイトライド、シリコンカーバイド、コランダム
  • 化粧品: ファンデーション、色材、金属粉
  • 食品: 蕎麦・うどん、菓子材料、製餡、豆腐、こんにゃく、練り物 (蒲鉾・はんぺん、竹輪)、ハム、カレールウ・粉末スープ、すりごま・味噌すり、ピーナッツペースト

自動乳鉢の原理

自動乳鉢は、鉢もしくは乳棒をモーターによって回転させ、粉体の粒子を細かくすり潰ししながら、同時に均一に混ぜ合わせて分散させ、混練する機械です。材料を擂り潰しながら、同時に撹拌も行えるのが大きな特長になります。ポットミルなどに比べて、粉砕エネルギーが小さいため、時間をかけて、少しずつ繰返し行われます。

このことにより、被加工物に発熱や衝撃などの負荷を与えず、意図しない変質を防ぎながら、均一に混練することが可能です。また、メカノケミカル現象やメカニカルアロイングなども発現し、ポットミル等ではできない加工が可能となります。

機構には大きく分けて2つあります。乳棒と乳の両方が回転するタイプと、乳棒のみが自転公転をするタイプです。乳棒と乳の両方が回転するタイプの装置は、乳鉢側の装置内部に強力なモーターが設置されて乳鉢が回転し、乳棒の垂直圧力と壁面圧力によって、強い摩擦力と圧力で試料を粉砕します。

乳鉢用、乳棒用の2つのモーターが必要になります。乳棒のみが自転公転するタイプの装置は、乳鉢と乳棒の両方が回転するタイプと同様の強い摩擦力と圧力が発生します。また、ギアの設計が必要にりますが、モーターは1つでよいので部品点数は少なくなります。

乳棒が自転公転回転するタイプは、ギアの組み合わせにより、乳鉢は固定されてますが、乳棒が公転しながら自転する複雑な動きとなります。杵筒にばねが内蔵されているため、圧力をかけながら撹拌・擂潰が行われます。

自動乳鉢の種類

自動乳鉢には様々な種類の製品があります。鉢と乳棒の素材も製品によって異なり、小型機以上の大きさでは、鉢は花崗岩、磁器、砲金、ステンレスなど、乳棒 (杵) は木、テフロン、磁器などです。微量機では、メノウ、アルミナ、炭化タングステンなどが鉢・杵共に使用されます。乳棒が2軸式になっている製品では効率よく粉砕が可能です。

また、製品によっては、自動乳鉢に真空機能や加熱機能などの付帯機能があるものもあります。真空機能のある製品では、真空/減圧雰囲気、アルゴンや窒素ガスなどの不活性ガス置換雰囲気で濃縮、乾燥、脱泡、撹拌擂潰処理を行うことが可能です。

酸化を避けたい材料処理など、嫌気性素材に最適です。兼ねる機能が付加されたものは、通常温度では非常に粘度が高く、混錬が出来ないものも、加熱することにより、粘度が小さくなり、混錬が可能となります。また、微量機はグローブボックス内で使用することのできる製品もあります。

大きさ別では、微量機 (加工容積0.05 L程度) ・小型機 (加工容積0.2〜7.0L程度) は実験机の上に乗せて実験が可能なため、研究開発向けに最適です。大型機 (12〜150L) は、また、一度に多くの材料の処理が可能なため、量産用として使用されることが多くなっています。

本記事は自動乳鉢を製造・販売する株式会社石川工場様に監修を頂きました。

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自動設計ツール

監修:新明和ソフトテクノロジ株式会社

自動設計ツールとは

自動設計ツールとは、各種パラメーターを設定して仕様に合った3Dモデルや図面を自動生成するプログラムです。

あらかじめプログラミングされた設計ルールやロジックを元に、3D CADなどを活用して設計を行うシステムや、AIを駆使して設計を行うようなシステムなど設計の自動化度合いには様々な製品があります。特に、マスターモデルから各顧客に合わせた細かな仕様変更・寸法変更を行うような設計での使用が多く、構成部品・関連部品や図面まで自動で変更することができます。全ての変更を人の手で行う必要がなくなるため、作業時間短縮や人件費の削減、ヒューマンエラーの削減などの業務効率化に活用されています。

自動設計ツールの使用用途

自動設計ツールは、様々な製造業分野で部品や製品の設計に使用されています。具体的な活用事例には下記のようなものがあります。

  • 鋼鈑桁橋
  • 鉄道信号装置 (自動列車制御装置、列車集中制御装置、連動装置)
  • 自動車部品
  • 航空機部品
  • 産業機械
  • 送風機などの風力機械
  • 構造設計などの建築設計

製造現場では、手作業で設計をする場合、一箇所サイズを変更するために、それを取り巻く周囲の部品のサイズや配置に多大に影響を及ぼし、管理が難しく、見積り・設計・エンジニアリングの作業が煩雑で時間がかかり、エラーが発生しやすくなります。例えば水処理システムの沈殿ユニットの設計仕様を作成するには100以上の図面が必要なため、複雑な設計により修正にかなりの工数がかかってしまいます。しかしこれらの作業も自動設計ツールであれば効率的に工程を進めることが可能です。また精密な設計が必要箇所など、自動設計ツールは顧客ニーズに合わせてカスタム設計がされることがあります。

自動設計ツールの原理

1. 概要

自動設計ツールは、自動化の程度によっていくつかの段階があります。自動化の程度が簡易的であるほど、コストを抑えることができます。例えば、AIを用いて最適な設計を算出するシステムも自動設計ツールですが、簡易的なルールやマスターモデルを設定しておき、仕様の変更・修正に合わせて数値を入力すると自動で修正数値や図面を出力するようなシステムも自動設計ツールの一種です。

2. テンプレート設計

テンプレート設計は、ひな型であるマスターモデルに3Dモデルや図面にパラメーターを設定しておき、最低限のプログラムで自動設計を実現する手法です。仕様に応じた組み立てモデル、部品、図面がすべて自動で出力されます。例えば、Excelシートに条件を入力すると、ひな型モデルが変形して3Dモデルが完成し、更に3Dモデルが投影されて自動で承認図が作成されるようなツールがあります。コストを抑えつつ、効果的で即効性の高い自動設計を行うことが可能です。また、最近では、オリジナルの設計ツールを使用して、プログラミングレスでの自動設計を行うことも可能になっています。

3. トポロジー最適化

他の方法では、トポロジー最適化を活用した設計自動化の事例もあります。トポロジー最適化を使用することで、材料の配分と形状の最適化により、製品の軽量化や強度向上の実現が可能です。必要な強度を確保しながら不要な材料を削減することができるため、例えば自動車では車両の軽量化により、燃費の向上や環境への負荷の軽減につながります。また、航空機の部品でも軽量化や強度向上により、燃費改善や運航コストの削減を効果的に行うことが可能です。

自動設計ツールの選び方

自動設計ツールを選定する際には、機能性やコスト、サポート体制に注意して選定することが必要です。また、既に導入されているその他のシステムとの互換性も重要です。

高機能になればなるほどコストは高くなりますが、ニーズに合わせて適切に機能を絞ればコストダウンを行うことが可能です。例えば、同じような設計課題が目的であれば、テンプレートやルール化を使用することで時間やコストを節約できます。また、ツールのカスタマイズは、設計自動化の効果を最大限に引き出すために重要な要素であり、使用のニーズに合っていることが重要です。

総合的に検討し、使用用途・シーン・予算などに合ったものを選択することが必要です。

本記事は自動設計ツールを製造・販売する新明和ソフトテクノロジ株式会社様に監修を頂きました。

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