PFAS除去装置

PFAS除去装置とは

PFAS除去装置とは、水道水などに残留するPFAS (有機フッ素化合物) を除去するための装置です。

PFAS (有機フッ素化合物) とは、炭素-フッ素結合を持つ有機化合物の総称であり、様々な機能性物質に活用されている一方で、自然界や人体における残留性と蓄積性が懸念されています。地下水や河川などにおいてPFASが検出されており、様々なPFAS除去装置・除去技術が開発されています。

PFAS除去装置の使用用途

PFAS除去装置は、主に

  • 地下水、井戸水
  • 水道水
  • タンク貯留水
  • 処分場浸出水
  • 半導体関連製造現場の排水をはじめとする工場排水一般
  • 浄水場

などにおけるPFAS除去に使用されています。

PFAS除去装置の原理

1. PFASとは

PFASとは、ペルフルオロアルキル化合物またはポリフルオロアルキル化合物の総称です (英: Per fluoro alkyl substances) 。有機フッ素化合物であり、C-F結合を有します。PFASには数千にも及び非常に多くの種類があり、特にPFOS、PFOA、PFHxSが代表的なPFASとして知られています。耐熱性や耐薬品性、紫外線耐性があり、水と油の両方をはじくという特徴があることから、下記のような様々な機能性製品に活用されています。

  • フライパンコーティング
  • 防虫剤
  • 雨具の撥水加工
  • 耐油・耐水性の食品包装紙
  • 化粧品
  • 汚れを弾くソファやカーペット
  • スマートフォン
  • 半導体産業におけるフォトレジスト (感光剤)
  • リチウムイオン電池におけるセパレーター
  • 泡消火剤

一方で、PFASは、自然界や体内で分解されにくく蓄積しやすい性質があります。特に、水溶性が高いことから工場排水による地下水や水道水の汚染が問題です。PFASの中でも特にPFOAやPFOSは発がん性のおそれがある物質として、現在では製造や使用が禁止されています。数千にも及ぶPFAS全体の毒性や人体への影響は明らかになっていませんが、PFOSやPFOAによる影響としては、免疫力の低下や低出生体重児、コレステロール値の上昇、腎臓がん、前立腺がんなどが指摘されています。

2. PFAS除去技術の原理

PFAS除去装置では、活性炭や樹脂などに吸着させたり分離膜を用いることでPFASを除去することができます。

PFASは通常の浄水器や煮沸消毒によって除去することができません。特に、煮沸の場合、煮沸によってPFASの濃度が高まってしまいます。また、凝集沈殿ろ過、オゾン処理なども効果がありません。

PFAS除去装置に用いられる除去技術には主に下記のようなものがあります。

  • 活性炭などの機能性粉体に吸着させる
  • イオン交換樹脂に吸着させる
  • 逆浸透膜 (RO膜) を利用する
  • 泡沫分離法による浄化

PFAS除去装置の種類

PFAS除去装置は、除去機構の種類によって分類することができます。どの製品も、主に水の浄化を目的とした装置です。

1. 機能性粉体

活性炭などの機能性粉体は、PFASを吸着させて除去することができます。プリーツ型フィルターなどに添加して使用されます。PFASをはじめ、有機汚濁物質、VOCs、重金属等の溶存物質を吸着除去することが可能です。

2. イオン交換樹脂

イオン交換樹脂は、PFAS除去に用いることができます。末端に親水性のスルホン酸基やカルボキシル基を持つPFAS類は、水中では電離して陰イオンとして存在する物質です。そのため、陰イオン交換樹脂が用いられます。

ただし、原水に懸濁物質、油分、金属 (鉄やマンガンなど) 、酸化剤などが含まれていると除去性能が低下するため、前処理としてこれらを除去する装置が併用で用いられます。

3. 逆浸透膜 (RO膜)

逆浸透膜 (RO膜) もPFASの除去に有効です。逆浸透膜とは、水分子のみを通すことができる半透膜です。家庭用の小さな浄水器や、逆浸透膜を利用した大規模な水処理プラントなど、様々なものがあります。PFASに加えて、細菌ウイルス類、塩分、農薬、ダイオキシンなどの有害物質も除去することが可能です。

床材剥がし機

監修:有限会社金装

床材剥がし機とは

床材剥がし機とは、建物内装の床材の撤去作業に使用される機械です。

リフォームなど、建物の内装を撤去する際には、床材を剥がすことが必要になります。床材剥がし機はそのような際に使用される機械です。フロアスクレーパーと呼ばれる場合もあります。刃物を用いて、ビニル床タイルや、CFシートなどを撤去することが可能です。手押し式、搭乗式、油圧式、エンジン式、バッテリー式などの種類があります。床材剥がし機を利用して床材を剥がして分別することで、各種工事における産廃コストの削減にも貢献します。

床材剥がし機の使用用途

床材剥がし機は、主に建物の解体やリフォームにおける床材の撤去作業に使用されます。建物自体の解体の他、内装解体、改修工事など、様々な工事で利用可能です。

床材剥がし機は、低騒音、軽量、無臭で粉塵のでないものが多いため、様々な施設の工事で利用可能です。使用例として、下記のようなものがあります。

  • マンション修繕工事
  • 複合商業施設
  • スーパーマーケット
  • 飲食店
  • ホームセンター
  • ドラッグストア
  • 家電量販店
  • 学校
  • 立体駐車場
  • 建物屋上

また、浸水や地震などの災害時において、被災した店舗内の床材撤去などにも活用されており、このようなケースで早期営業再開に貢献することも可能です。

床材剥がし機の原理

1. 概要

床材剥がし機は、先端に前後運動する刃が付いており、走行しながら前方の床材を剥がします。多くの製品で刃物入斜角調整が可能です。普通刃、シート刃、強力刃など、通常、複数種類の替刃があり、床材に合わせた専用刃が用意されている場合もあります。

また、床材剥がし機での作業後細かい床材や塗膜、接着剤が残っている場合には、床研磨機が使用されます。

2. 床材剥がし機で剥がせる床材

床材剥がし機では様々な床材を撤去することが可能です。主な床材の例は下記の通りです。

  • ビニル床タイル
  • Pタイル
  • CFシート
  • カーペット
  • 長尺シート
  • エポキシ材
  • 屋上防水シート、アスファルト防水、各種防水材
  • 屋上ゴムマット
  • ゴムチップ
  • 木材床
  • セラミックタイル
  • ウレタン材

床材剥がし機の種類

床材剥がし機は、手押し式や搭乗式、油圧式やバッテリー式などの種類があります。それぞれ、違った特徴を持ち、用途に応じて使い分けられます。

1. 手押し式

手押し式とは、手で押して走行させる床材剥がし機です。コンパクトで持ち運びしやすいことが多いです。通常、防振ハンドルがついているため、手腕の振動が軽減され、刃の運動に妨げられることなく、走行させることができます。特に、階段や通路などの狭い場所の剥離作業に適します。

2. 搭乗式

搭乗式とは、機体に座って操作するタイプの床材剥がし機です。エンジンやバッテリーなどを動力として稼働し、機体は手押し式より重量が大きくなります。最大約1,000kgにもなる機体の全重量をかけて剥がすため、手押し式よりも威力が強く、迅速に作業を進めることが可能です。レバーなどによる操作を行い、製品によってはシートベルトを外すと自動的にエンジンが切れます。

搭乗式の床材剥がし機であっても、小型エレベーターや狭い廊下にも搬入できるものもあり、狭い現場での利用も可能です。

3. 搭乗式床材剥がし機の動力

搭乗式床材剥がし機には、プロパンエンジン式や、バッテリー式などがあります。

プロパンエンジン式は、パワフルな稼働力が特徴で、大規模な現場に向いています。ボンベ缶を取り付けて使用する構造になっており、ボンベ1本でおよそ10〜12時間の稼働が可能です。

バッテリー式は、排気が出ないことが特徴です。1回の充電につき8~12時間稼働することができます。ただし、バッテリーのフル充電には6〜12時間かかります。

4. バックホー取り付け型

床材剥がし機の中には、既存のバックホー (油圧ショベルの一種) の排土板部分に取り付けることで床材剥がし機とすることができるものもあります。床材を剥がしながらバケット作業を行うことも可能です。替刃の種類には、標準刃、幅狭刃、シート刃など、豊富な種類があります。

本記事は床材剥がし機を製造・販売する有限会社金装様に監修を頂きました。

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組版ソフト

監修:NECネクサソリューションズ株式会社

組版ソフトとは

組版ソフトとは、本などの編集において、組版 (文字組みやデザイン、写真や図版などをページに配置する工程) を効率的に行うためのソフトです。

組版という言葉は、もともと活版印刷において、活字を組み合わせて印刷の元となる版を作る作業を指します。一般的な文字組版の他、書籍、雑誌など、目的に応じて様々なレイアウトをデザインすることが可能です。また、関連して、印刷物をパソコン上で作成することや、作成した印刷データを出力するまでの工程をDTP (Desk Top Publishing) と呼び、組版ソフトはDTPソフトと呼ばれることもあります。

組版ソフトの使用用途

組版ソフトは、様々な出版物や印刷物をレイアウトすることに用いられます。一般の書籍だけでなく、多様な印刷物のレイアウトが可能です。主な用途には下記のようなものがあります。

  • 書籍
  • 雑誌
  • 新聞
  • カタログ
  • パンフレット
  • 学習参考書
  • 辞書・法令集
  • 鉄道時刻表
  • 名刺・カード
  • ポップ・チラシ
  • シール
  • ポスター
  • アパレル商品タグ
  • 宛名印字

組版ソフトの原理

組版ソフトの基本的な機能は、レイアウト設計、文字組版、画像の配置、ページ割りなどです。

例えば、文字組版では、文字や行の間隔の調整を行います。間隔が詰まりすぎると読みにくく、開きすぎると間延びした印象になります。文字組版には下記のような要素があります。

  • 書体 (フォント) の選定
  • 文字の大きさ (本文/見出し)
  • 行間の幅
  • 1行の文字数と行数、行送り
  • 字間の調整
  • ルビ

同じ文字組設定でも、原稿によって見え方は大きくなります。ひらがな、カタカナが多いもの、改行の多いもの、少ないものなど、組版ソフトでは、1文字単位で字間調整が可能です。このような1文字単位の微調整において、組版ソフトは、ワープロソフトと根本的に操作性が異なります。

その他、写真や図版原稿のレイアウト、ページヘッダ及びフッタ、オブジェクト調整なども組版ソフトで行われます。組版が完了したファイルはPostScript、PPML、EPS、JPEG、PDF、PNGなどの形式で保存されることが多いです。

組版ソフトの種類

1. テンプレートと自動組版

組版ソフトには様々な製品があります。製品によっては、テンプレートによって自動組版を行うことが可能です。備えられているテンプレート群は製品によって異なりますが、例えば

  • 新聞
  • 辞書
  • 学習参考書
  • カタログ
  • はがきの宛名書き
  • 名刺

などのテンプレートがあります。これらを使用することで迅速に印刷物の組版を行うことが可能です。台紙と小組などで構成される複数のテンプレートを結合して配置するレイアウトを行う場合もあります。

特に、新聞組版用のテンプレートには、ニュース配信の標準フォーマットである「NewsML」形式の記事を受け取って自動組版する機能が搭載されています。

自動組版機能のある組版ソフトは、

  • 繰り返し作業の時間短縮
  • 人為的ミスの回避
  • 部分差し替え作業を簡単に実現
  • 短時間に大量の画像やPDFの配置が可能

などの省力化効果を得ることが可能です。

2. データベースとの連携

データベースと連携して自動でテキストを流し込むことができる組版ソフトもあります。このようなソフトは特に、辞書や法令集などに有効です。特に、辞書テンプレートなどの自動組版では、紙面上の見出し語や任意の文字列のページを抽出して、目次・索引を作成できる場合があります。

3. 数式

組版ソフト製品の中には、高度な数式組版機能が組み込まれているものもあります。学習参考書、専門書や学術論文などの組版作業に特に有効です。

4. その他

組版ソフトの中には、他のアプリケーションとの連携に優れているものもあり、レイアウトしたデザインをモバイルアプリやWebコンテンツとしてリリースすることが可能なものもあります。

その他に組版ソフトに搭載されることがある機能としては下記のようなものがあります。

  • 自動保存
  • タグ流し込み
  • テキスト置換
  • ページ分割
  • 文字のアウトライン化
  • 画像ファイル自動検出
  • ログレポート

本記事は組版ソフトを製造・販売するNECネクサソリューションズ株式会社様に監修を頂きました。

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MILコネクタ

監修:グレンエアジャパン

MILコネクタとは

MILコネクタとは、MIL規格に準拠したコネクタです。

MIL規格とは、アメリカ国防総省が調達する物資に対して定められている品質基準です。角形と丸形があります。MILコネクタは、米軍の航空機に搭載される電子機器接続用として開発された歴史を持ちます。現在では民生用途でも多く用いられますが、軍用コネクタとして開発された経緯から信頼性、堅牢性、耐久性が非常に高いつくりとなっています。

MILコネクタの使用用途

1. MILコネクタが使用される分野・領域

MILコネクタは、もともと米軍の航空機に搭載される電子機器接続用として1930年代に開発されました。現在では軍事用の他に民生用産業機器でも多く使用されており、航空宇宙、工業用、船舶用、自動車産業用などに使用されます。

主な用途には下記のようなものがあります。

  • 各種軍事用途 (通信、ナビゲーション、レーダー、空中、海洋誘導制御)
  • 航空・宇宙
  • コンピュータ
  • FA機器、工作機器、産業用ロボット
  • 半導体製造設備
  • 急速充電器
  • ATM
  • アミューズメント機器
  • 建設機械
  • プラント、発電所
  • パワーコンディショナー
  • 鉄道
  • 計測機器、屋外通信機器

例えば、堅牢なMILコネクタと、ノイズの影響を受けない光ファイバー技術を組み合わせることによって、長距離の通信を行うことも可能です。高帯域幅能力を備えているので、音声、映像、データ等の種々の用途に利用することができます。

2. MILコネクタが特に有効である使用目的

MILコネクタは耐久性・堅牢性に優れていることから、特に下記のような目的で使用される場合に有効です。

  • 振動や衝撃による断線や瞬断を防ぎ安定した通信を行う
  • 結露や高湿度によるショートを避ける
  • 信号と電源の配線を1本化する
  • 多芯高密度による省スペースを図る
  • メンテナンスができない場所で使用する

MILコネクタの原理

一般的なMILコネクタには丸形と角形とがあります。角形タイプは、フラットケーブルやその他のタイプのケーブル圧着結線もしくははんだ付け結線してハーネスします。丸形の基本的な構成は、マルチピンコネクタと、内部にコンタクトインターフェースを持つ円筒形のハウジングです。他の多くの電気コネクタと同様に、オス側のプラグとメス側のレセプタクルを組み合わせて、信号の伝送が行われます。

MIL規格を満たす堅牢性を担保するため、丸形では下記のような加工・構造の特徴があります。

  • ピンコンタクト: 導電性に優れた銅合金の丸棒を削り出して精密加工され、腐食と耐久性に強い金めっきが標準
  • ソケットコンタクト: クローズドエントリー構造
  • インサート: コンタクトの保持や位置決め、絶縁機能や機械的保護をする金属、ゴムやプラスチック
  • シェル: 頑丈で堅牢なアルミニウム合金製やステンレススチール製など

また、適切なアダプタ(バックシェル)を付ける事でIP67の防塵防水性のクリアだけでなく、外部の電磁ノイズから保護するEMI/RFIシールド、機械的保護することが可能です。半田タイプだけでなく圧着タイプでも単体防水型になるようにグロメットシールが施されており、誤嵌合を防止するためにキー位置を指定することができます。

MILコネクタの種類

1. 概要

MILコネクタには角形と丸形とがあります。角形のものは、フラットケーブルやその他のタイプのケーブルの接続に使用されます。

芯数は製品によって様々な種類があり、最小では2、最大では187のものがあります。多くの製品でコンタクト間隔は2.54mmピッチです。

また、インサート配列が極めて豊富で、信号、電源、同軸、光ファイバの組合せ配列の種類が多いとされます。幅広いケーブルサイズに対応可能です。

2. 丸形MILコネクタの種類

丸形MILコネクタには様々な形状があります。コネクタの外殻であるシェル形状は、

  • プラグ側: ストレート、アングル
  • レセプタクル側: ウォールマウント、中継、ボックスマウント、ジャムナット、ガラスハーメチック

などです。また、コンタクトを保持する絶縁部品であるインサートの種類として、

  • ソルダー (半田) タイプやクリンプ(圧着)タイプ
  • メタルクリップリテンションタイプや絶縁リテンションタイプ

などに大別されます。

本記事はMILコネクタを製造・販売するグレンエアジャパン様に監修を頂きました。

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自動車シート製造設備

自動車シート製造設備とは

自動車シート製造設備とは、自動車の座席用部品を製造するために使用される一連の工場設備のことです。

自動車シートの製造作業には溶接や穴開け、組立などが含まれます。縫製や最終的な仕上げなど、人の手によって行われる工程も多いですが、自動化可能な部分には溶接機や搬送機など様々な機械が使用されます。

自動車シート製造設備の使用用途

自動車シート製造設備は、様々な車種の自動車用シートを製造するために使用されます。一般的な乗用車の他、軽自動車、SUV、ミニバン、商用車、トラック、スポーツカーなど様々な車種があり、それぞれに適した自動車シートが製造されています。

1つの車両の中でも運転席、助手席、後部座席では異なった種類のシート製品が必要です。また、機能性の高いものでは、骨盤の沈み込みを深くして自動車レース等のドライバーの着座姿勢の安定性を高めたスポーツシートや、空気ばねとダンパーを用い、フロアからの振動を吸収するトラック用シートなどの製品もあります。

自動車シート製造設備の原理

1. 自動車シートの製造工程

自動車シートの製造作業は、大きく分けて、

  1. 裁断
  2. 縫製
  3. 発泡
  4. 組立

の工程があります。シートは温度や湿度の影響を受けやすいため、専用施設で安定した環境で行われるのも特徴のひとつです。

裁断工程では、主に自動裁断機を使って、部材の切り出しを行います。切り出した部材を縫い合わせる縫製工程は、工業用のミシンを用いて人の手で行われることが多いです。発泡工程は、裁縫したシートカバーでウレタン資材を覆います。通常、一体発泡工程と呼ばれる工法が使用されます。一体発泡工程は、シートカバーを型に入れ、ウレタン原料を注ぎ込む工法です。無駄や漏れを生じることなくウレタンを隅々まで充填することができます。

組立作業の多くは手作業で行われますが、 中にはシートトラック自動組立設備・シートアジャスター自動組立設備などの専用設備が使用される場合もあります。シートフレームの製造工程では、溶接機を用いてプレス品やパイプの溶接作業が行われます。手作業での組み立ては、専用工具でのクッション・カバー・フレーム部品取り付けを行い、アイロンやドライヤーでシワなくつやを出す作業です。

2. 自動車シート製造設備で使用される機器

上記の各工程において、自動車シート製造設備で使用される機器には下記のようなものがあります。

  • 自動溶接機
  • 各種組立機
  • 各種孔開け機/潰し、抜きプレス機
  • 自動搬送機
  • 各種試験機
  • 各種ゲージ、ハンダ付、ロー付機

自動車シート製造設備の種類

自動車シート製造設備には様々な機械が使用されます。主には、溶接機、組み立てなどの各種専用機、搬送機に分けられます。

1. 自動溶接機

自動車シート製造設備で用いられる自動溶接機は、ロボットによるCO2溶接機、スポット溶接機などです。シートフレームの溶接やシートトラックの溶接に使用されます。特にアームロボットは、溶接作業の無人化のために汎用され、溶接ロボットアームと超音波溶接源で構成される超音波ロボット溶接システムもあります。

2. 組み立て・プレス

シートの組み立てでは、シートトラック自動組立設備、シートアジャスター自動組立設備などの設備が用いられます。また、その他各種専用機では各種孔開け機やプレス機、ベンダーなどがあります。ドアトリム、シートフレームの加工やパイプ孔開け、など様々な加工に使用されている機械です。

リクライナーやスライドレールの組み立てでは、ロボットが活用されている場合もあり、これらの活用により、省スペースでの生産、生産の自動化が可能となっています。

3. 搬送機

搬送用途では、トランスファー、パレット搬送、反転機、コンベアーなどの搬送機械が使用されます。

また、自動搬送車の活用も進んでおり、例えばサーバーによる生産機械の管理と自動搬送車の制御を連動させる活用もあります。製品が箱出しされるタイミングを予測し、箱出しと同時に自動搬送車が到着するよう制御することが可能です。

自動車シート

自動車シートとは

自動車シートとは、自動車の座席です。

大きく分けて運転席や助手席に使用されるフロントシート、後部座席に使用されるリアシートがあり、 1席ずつ離れているセパレートシート、左右がつながっているベンチシートなどの形状の種類があります。使用される素材にはファブリックやレザーなどの種類があり、機能性を高めた様々な製品が開発販売されています。

自動車シートの使用用途

自動車シートは、様々な種類の自動車で使用されています。一般的な乗用車の他、軽自動車、SUV、ミニバン、商用車、トラック、スポーツカーなど様々な車種があり、それぞれに適した自動車シートが使用されています。

1つの車両の中でも運転席、助手席、後部座席では異なった種類のシートです。また、骨盤の沈み込みを深くして自動車レース等のドライバーの着座姿勢の安定性を高めたスポーツシートや、空気ばねとダンパーを用い、フロアからの振動を吸収するトラック用シートなど、機能性を追求して使用される製品もあります。

自動車シートの原理

自動車シートの一般的な構造は、

  • シートフレーム (基本骨格)
  • ウレタン製のシートクッション (座面) 
  • トリムカバー (表皮材) 
  • シートフレームワイヤー (ワイヤー状のスプリング)
  • シートバック(背もたれ)
  • ヘッドレスト
  • シートバックの角度を調整するリクライニングアジャスタ
  • シートの前後調整を行うシートレール
  • 腰の負担を軽減するランバーサポート
  • シート座面サイドを支えるサイドサポート

で構成されます 。これらのパーツは金属の基本骨格であるシートフレームに、各パーツがアッセンブリされている構造です。1席ずつ離れているものをセパレートシート、左右がつながっているものをベンチシートと呼びます。

運転席、助手席、後部座席で求められる座席の機能性は異なっており、それぞれに適した機能が備わっているようデザインされています。例えば、運転席で使用されるフロントシートのフレームは、乗員の体を適切に支持するための剛性を持ちますが、それだけでなく自動車が衝突した際に加速度によって生じる大荷重に耐えられるよう強度が高められている部品です。

自動車シートの種類

1. 概要

自動車シートには、布素材、もしくは、革素材が使用されており、素材によってファブリックシートとレザーシートに分けることができます。

また、それ以外でも、機能性によって様々な種類の製品があります。例えば、バケットシートは、左右の縁が高く立ち上がっており、体の固定機能を高めたシート形状です。運転時間が長時間となるトラック用には、フロアからの振動を吸収するエアサスペンション付きシートが使用されることもあります。その他特殊シートとしては、疲労低減シートや車酔い低減シートなどが開発されています。

2. ファブリックシート (布素材)

自動車シートで使用されるファブリックシートの種類には、主に、

  • 織物ジャージ
  • トリコット
  • モケット

があります。

織物ジャージとは、経糸と横糸を交互に与わせることで織り上げられる (平織) 素材です。柔らかいものから固いものまで種類は様々ですが、さらっとした手触りがあります。ファブリックシートの中では比較的汚れが付きにくい素材です。

トリコットはなめらかでややつるつるとした手触りであり、モケットはしっとりとした手触りが特徴の素材です。トリコットは、編み生地と織り生地の中間のような質感ですが、モケットは柔らかいパイルの風合いと強い摩擦強度を兼ね備えた繊維です。特に毛が長いタイプのモケットは滑りにくく、電車やバスなどの公共機関でも多く使われています。

3. レザーシート (革素材)

レザーシートの素材の種類は主に

  • アルカンターラ
  • セミアニリン
  • ナッパレザー

があります。

アルカンターラとは、人工皮革の一種です。名称は、日本の化学メーカー東レとイタリアのアルカンターラ社が作っていることによります。人工皮革なので、本革に比べて耐久性、耐光性、通気性に優れており、天然スエード材の手触りと外観を持っています。

セミアニリンとは、本革の一種であり主に高級車のシートに使われる素材です。ナッパレザーとは、柔らかく薄めのレザーの総称です。

粉体受託加工

監修:ハクスイテック株式会社

粉体受託加工とは

粉体受託加工とは、粉体の加工業務を外部の専門業者が受託するサービスを指します。

粉体加工は、粉砕、混合、分級、乾燥、焼成、造粒、表面処理など、様々な加工工程を含むことが一般的です。

粉体受託加工には以下のような利点があります。

1. 専門技術の活用:粉体加工に特化した技術や設備を持つ業者に委託することで、スピーディに高品質な加工が可能です。

2. コスト削減:自社で設備を導入し維持するコストを削減できます。

3. 生産効率の向上:加工工程を外部に委託することで、自社の生産ラインを効率的に運用できます。

4. 柔軟な対応:短期間での大量生産や小ロットの試作品の製造など、柔軟な対応が可能です。

粉体受託加工の使用用途

1. 概要

顧客の要望に応じ粉末を加工する粉体受託加工は、様々な目的で使用されます。下記は具体例の一部です。

  • 粉体化と同時に粒子コーティングによって親水性物質を疎水性粒子にする
  • 大粒径をミクロン、ナノ粒子へと細粒化する
  • ブロード粒度分布をシャープ粒度分布にする
  • 数種類の物質を均一に混合する
  • 結晶を粒成長させる

2. 粉体受託加工の加工物

粉体受託加工で加工される主な素材には下記のようなものがあります。様々な産業用途で使用される多様な素材で粉体受託加工が可能です。

  • ガラス粉末、ガラス繊維
  • セラミックス (窒化アルミ、ジルコニアなど)
  • 金属酸化物 (酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナなど)
  • 樹脂 (熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂) 
  • カーボン材料、CNT、活性炭
  • 合金
  • 希土類
  • 触媒担体
  • 蓄光材料
  • 顔料
  • 蒸着材料
  • 放熱フィラー、封止材
  • 農薬、抗菌材、化粧品
  • 医薬品原体、医薬品中間体各種薬品
  • 食品、香料、食品添加物

粉体受託加工の原理

1. 粉体加工の概要

粉体加工には、

  • 粉砕
  • 分級
  • 造粒
  • 表面処理
  • 混合
  • 乾燥
  • 焼成

などの加工があり、それぞれの目的に応じて適切な加工が行われます。 (詳細は後述)

粉体加工は、製品の特性や性能に直接影響を与えるため非常に重要であり、多くの産業分野で利用されています。

2. 受託の流れ

基本的な粉体受託加工の依頼の流れは下記のようになります。

  • 加工依頼
  • 見積書提示
  • 加工スケジュール
  • 試作品製造
  • 実機製造

粉体受託加工の種類

粉体受託加工で行われる主な粉体加工には下記のようなものがあります。

1. 粉砕加工

粉体の粉砕加工とは、各種材料をボールミル、ハンマーミル、ピンミル、ビーズミルなどを用い機械的に砕き、微細な粉末にする工程を指します。粒子サイズの縮小、均一化、混合性の向上などを目的とし、任意の粒子径に粉砕することが可能です。

2. 分級加工

粉体の分級加工とは、粉体を粒子サイズや密度などの特性に基づいて分類する工程を指します。このプロセスは特定の用途に適した粒子サイズを得るために重要となります。主な分級方法はふるい分け、空気分級、遠心分級などがあります。

3. 造粒加工

粉体の造粒加工とは、微細な粉末を集めて一定の大きさや形状の粒子(グラニュール)に成形するプロセスを指します。湿式造粒、乾式造粒、噴霧乾燥造粒方式などが用いられ、多様な目的や用途に合わせて、数十ミクロンサイズからミリサイズの粒状物を成形します。造粒された粉体は、流動性の向上、粉塵の減少、圧縮性の向上、均一な混合などの利点があります。

4. 表面処理加工

粉体の表面処理加工とは、粉体の表面にコーティング、表面改質、化学修飾などの処理を施し、特定の機能や特性を付与するプロセスを指します。表面処理は、粉体の物理的および化学的性質を改善し、製品の性能を向上させるために行われます。この加工は、粉体の付着性、流動性、耐腐食性、耐摩耗性、親水性・疎水性などを改善するために使用されます。

5. 混合加工

粉体の混合加工とは、ミキサーなどを用い異なる粉体を均一に混ぜ合わせる工程を指します。混合の均一性は、最終製品の性能や品質に直接影響を与えるため、適切な混合方法と装置を選定することが重要です。

6. 乾燥加工

粉体の乾燥加工とは、粉末材料の水分や溶媒を取り除く工程を指します。乾燥加工は、粉体の流動性、保存性、化学的安定性を向上させるために重要なプロセスです。乾燥にはスプレードライ、流動層乾燥、真空乾燥、熱風乾燥などといった方法があり、粉体の性質や用途に応じて選ばれ、効率的に行われることが求められます。

7. 焼成加工

粉体の焼成加工とは、ガス炉や電気炉などを使用し粉末状の材料を高温で加熱し、物理的および化学的変化を促進する工程を指します。焼成は、粉体を固化、焼結、または特定の物性を持つ材料に変換するために行われます。主にセラミックスや金属粉末の製造に使用され、材料の強度、硬度、耐熱性、電気的特性などを向上させるために重要なプロセスです。

粉体受託加工のその他情報

1. 品質管理に使用される機器の種類

粉体受託加工においては、テスト加工品の測定・評価及び受託業務開始後の品質管理が重要とされます。品質管理に使用される機器の種類は企業によっても異なりますが、下記のようなものがあります。

  • 粒度測定機
  • 蛍光X線分析装置、X線回析装置
  • SEM
  • 比表面積測定装置
  • 熱分析装置
  • 色差計
  • 赤外線水分計
  • 分光計
  • 嵩密度計

本記事は粉体受託加工を製造・販売するハクスイテック株式会社様に監修を頂きました。

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ハイコンテント・スクリーニング(HCS)

監修:ライフテクノロジーズジャパン株式会社

ハイコンテント・スクリーニング (HCS) とは

ハイコンテント・スクリーニング (HCS) とは、細胞内の変化を同定する表現型スクリーニングの一種で、細胞の表現型に変化を与える物質やなんらかの刺激などを評価する分析手法です。

ハイコンテント・スクリーニング (HCS) は、蛍光顕微鏡と画像分析を用いて高感度な蛍光測定を行い、様々な定量的解析を行います。これにより複雑な細胞表現型を解析することが可能となり、評価される条件は、低分子、ペプチド、RNAiなど多岐にわたります。創薬研究・生物学研究における様々なステージで活用されている独自性の高い分析技術です。

ハイコンテント・スクリーニング (HCS) の使用用途

ハイコンテント・スクリーニングは、創薬研究や疾患モデリング研究、各種生物学研究において有用な解析手法として広く活用されています。画像上で細胞を個々にセグメントすることでシングルセル解析や、マルチプレート等のウェル全体の細胞カウントも可能です。具体的な用途例には下記のようなものがあります。

  • ハイスループットスクリーニングにおけるサンプルの蛍光測定
  • 細胞内におけるターゲット分子の増減、局在の変化や細胞の運動性や形態情報
  • 正常細胞及び病変細胞の表現型の差異
  • 創薬研究におけるターゲットバリデーション
  • 薬物スクリーニング
  • オーファン受容体のリガンドスクリーニング

これらの分析・解析を実現する上で、ハイコンテント・スクリーニングで測定・観測される具体的な細胞事象には下記のようなものがあります。使用する製品機器によっては、生細胞の観察を行うことも可能です。

  • スフェロイドの3D解析・分化評価
  • 各種細胞・コロニーカウント
  • アポトーシス
  • 細胞周期・細胞老化
  • 血管新生
  • 神経突起伸長
  • 心筋拍動
  • 細胞内顆粒
  • オートファジー
  • 紡錘体の変化
  • 細胞の多核化
  • DNA修復、遊走、接着
  • 細胞内共局在
  • 核移行・核内顆粒

ハイコンテント・スクリーニング (HCS) の原理

ハイコンテント・スクリーニングの基礎的な実験例として、適当な条件で培養した細胞に対して、表現型を発現すると期待される物質を暴露し、一定期間後に細胞の構造や分子成分の変化を解析します。細胞の取り扱いの多くは、マイクロプレート上で行われます。

このような条件設定がなされた細胞サンプルを分析する例として、ターゲットタンパク質を蛍光色素で標識し、その蛍光画像を自動撮影および画像解析を行うことで、細胞表現型の変化を蛍光量の変化として定量的に検出する手法が考えられます。使用する蛍光色素は、吸収極大値と発光極大値が異なるものを複数使用でき、異なる細胞成分(細胞質、核、他の細胞小器官など)を同時に測定することや、細胞内の局在ごとに複数のターゲットの変化を測定することが可能です。

ハイコンテント・スクリーニング (HCS) の種類

1. 機器

ハイコンテント・スクリーニングは複数のメーカーより様々な測定機器が提供されています。基本的には、

  • 蛍光を励起するための光源
  • 高解像度蛍光カメラ (CMOSカメラ)
  • 対物レンズ (顕微鏡)
  • 自動撮影するための電動ステージ
  • 蛍光フィルター

が装置に備えられています。

製品によって対物レンズの倍率は異なりますが、低倍率から100倍程度の高倍率レンズに対応する製品もあります。また、共焦点観察、明視野観察、位相差観察、環境制御ユニットなどの機能がオプションもしくは標準で実装されています。生細胞の観察を行うため、温度、湿度、CO2などの環境制御ユニットや、マイクロプレート分注用の分注ユニットを選択できる製品も販売されています

2. 解析ソフトウェア

ハイコンテント・スクリーニングでは、それぞれの機器によって専用のソフトウェアによる画像解析を行います。測定画像から個々の細胞のプロファイルを数値化し、そのデータリストを作成します。測定された定量データは、データベースに保存され、興味ある変化を可視化することが可能です。製品によっては、機械学習やディープラーニングを解析に活用しており、これまで検出しにくかった領域での検出力の向上が期待されています。

3. 染色抗体

蛍光色素による標識は、抗体免疫反応を用いた蛍光染色を行う手法もあります。蛍光抗体による標識により、より特異的なターゲットを検出し、様々な表現型解析を行うことができます。例えば、翻訳後修飾に特異的なターゲット分子の抗体や、トータル修飾基質を標的とする抗体を蛍光標識することにより、疾患に関連したシグナル伝達経路の解析に用いることができます。

本記事はハイコンテント・スクリーニング (HCS)を製造・販売するライフテクノロジーズジャパン株式会社様に監修を頂きました。

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フォークリフトバッテリー

監修:株式会社フジエナジー

フォークリフトバッテリーとは

フォークリフトバッテリーとは、電気で動くバッテリー式フォークリフトとエンジン式フォークリフトに使用されるバッテリーです。

バッテリー式フォークリフトは、モーターを動力として電気で動きます。ガソリンで動くエンジン式のフォークリフトに比べてランニングコストが低いという特徴があります。

フォークリフトバッテリーの使用用途

フォークリフトバッテリーは、電気で動くバッテリー式フォークリフトとエンジン式フォークリフトに使用されています。

バッテリー式フォークリフトは、フォークリフトバッテリーシステムに溜め込んだ電気で動くためエンジン式と異なり排気が出ないことから、特に室内での使用に適しています。また、騒音が少なくなるため、住宅街など、騒音への配慮が必要な現場で使用されることも多いです。エンジン式よりも小回りがきくため、取り回し良く作業を行うことが可能です。燃費が良いため、コストダウンの観点から導入されることもあります。

エンジン式フォークリフトはエンジンを始動するバッテリーを使用します。エンジン始動のため、バッテリーサイズはバッテリー式フォークリフトより小さく、自動車バッテリーと同じくらいのサイズです。

フォークリフトバッテリーの原理

1. 概要

フォークリフトバッテリーは、通常の充電池と同様、充電の際に電気エネルギーを化学エネルギーとして蓄え、蓄えた化学エネルギーを電気エネルギーとして放電し、こうした充放電サイクルを繰り返すことができます。

エンジン式フォークリフトとの比較では、バッテリーフォークリフトは基本的に燃費が良いため、コストが低くなる傾向にあります。また、バッテリー式フォークリフトはエンジン式フォークリフトに比べて比較的車体の全長が短く、狭い場所での作業に適しています。一方、バッテリーフォークリフトは、連続稼働時間が短くなりがちであり、また、充電にある程度の時間を要するという点がデメリットです。

2. メンテナンス

フォークリフトバッテリーは二次電池であることから、定期的なメンテナンスを必要とします。

最も基本的なメンテナンスは、バッテリー液(精製水)の定期的な補充です。電解液は、毎回充電前と後に点検する必要があります。特に夏場や、作業環境によって高温な場所、寿命末期のバッテリーでは、頻繁なバッテリー液面チェックが必要です。

日常の取扱いでは、過放電防止、過充電防止に気をつける必要があります。すなわち電圧が全容量の20%以下にならないように充電を行い、充電時は電解液温度が50℃を超えないように注意することが必要です。充電は電圧残量が全容量の30~35%になった時に一度に行うことが適切です。放電後に充電を行わず放置をした場合、バッテリー内のマイナス極板にサルフェーション(結晶物質)が付着し、バッテリーの電気の流れを阻害します。サルフェーションは通常充電で液中に溶けますが、放置期間が長いバッテリーはサルフェーションが固着化し、充電では液中に溶かすことができずにバッテリーの寿命を迎える結果となります。放電後は必ずこまめに充電を行うようにしてください。

フォークリフトバッテリーの種類

フォークリフトバッテリーの種類には主にリチウムイオン電池と鉛蓄電池があります。更にそれぞれの種類の中でも様々な製品があります。

1. 鉛蓄電池

鉛蓄電池 (鉛バッテリー) は正極に二酸化鉛、負極に鉛を使用しており、電解液として希硫酸を用いています。正極・負極の双方から電解液中に硫酸イオンが移動することで充電され、電解液中の硫酸イオンが正極・負極の双方に移動することで放電を行う仕組みです。

一般的に鉛蓄電池はリチウムイオン電池と比較し安価で提供されています。運用期間中はバッテリーメンテナンス、単セル交換や電解液補充などのランニングコストがかかります。一般的に充電時間は8〜10時間程度、稼働時間は4〜5時間程度です。一般的に寿命はサイクル数で表すことが多いです。以下写真参照

フォークリフトバッテリー

現在、市場では2種類の鉛蓄電池がフォークリフトバッテリーで使用されています。

①鉛溶接式:従来のバッテリーセル同士を鉛棒でガス溶接を行い、バッテリーシステムをくみ上げる方式です。バッテリー単セルの交換の際にはディーラーまたはガス溶接の熟練者による作業が必要です。以下写真参照

フォークリフトバッテリー

②ボルトコード接続式:欧米で主流のボルトコード接続式はバッテリーセル同士をボルトとコードで接続してバッテリーシステムをくみ上げる方式です。従来の鉛溶接式と異なり、バッテリー単セル交換の際にはディーラーまたはガス溶接の熟練者による作業が不要なため、容易に補修が可能です。ケーブル接続のため、振動が大きい現場などでは溶接棒の亀裂や破損の心配がありません。以下写真参照

フォークリフトバッテリー

2. リチウムイオン電池

リチウムイオン電池 (リチウムイオンバッテリー) は、正極にリチウム含有金属酸化物、負極に炭素系素材、電解液は有機電解液が使用されます。充電時には正極側にあるリチウムイオンが、電解液を通って負極側に移動し、放電時には負極に蓄えられていたリチウムイオンが正極に向かって移動することで電流が流れる仕組みです。フォークリフトバッテリー用では安全性の高いリン酸鉄リチウムイオン電池が多く採用されています。

リチウムイオン電池は、一般的に充電時間は1〜2時間程度、稼働時間は10時間以上、耐用年数は10〜15年です。価格は鉛蓄電池より高いものの、鉛蓄電池よりも寿命が長く買い替えの回数が少なくなるため、長期的にはコストが低くなります。また、鉛蓄電池で必要なバッテリーの補水作業も不要であり、充電時間が短いことからスペアバッテリーの用意も不要です。

本記事はフォークリフトバッテリーを製造・販売する株式会社フジエナジー様に監修を頂きました。

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UPSバッテリー

監修:株式会社フジエナジー

UPSバッテリーとは

UPSバッテリーとは、停電などにより電源障害が生じた際に負荷機器に電力を供給するUPS (無停電電源装置) に使用するバッテリーです。

UPSバッテリーは、停電時に負荷機器に送れるよう、電気を貯めておくバッテリーです。普段はコンバータの電力を用いて充電されており、商用電力が遮断された場合にインバータへ電力を給電します。UPS無停電電源装置用のバッテリーの主な種類には、リチウムイオン電池と鉛蓄電池とがあり、鉛蓄電池にはさらにMSE型とUPS専用型の2種類があります。

UPSバッテリーの使用用途

UPSバッテリーは、UPS (無停電電源装置) において電気を蓄える目的で使用されます。

UPS無停電電源装置は、停電などにより電源障害が生じた際に一定時間だけ電力を供給する目的で使用されます。コンピュータなどの電子機器は突発的に停電すると、故障したり内部データが消えたりする危険があります。UPSを接続することで、電源トラブル時にデータを保護したり、電子機器を安全にシャットダウンしたりするのに要する時間の電力を供給することができます。

以下はUPSが使用される機器・用途の例です。

  • パソコン、OA機器
  • ネットワーク機器、サーバー、データセンター
  • 店舗におけるPOS端末や顧客情報端末
  • 防犯・防災関連機器、監視カメラ、信号機
  • 金融: 運営サイトや金融システム、及びATM端末やオンライン端末
  • 放送機器や電装機器
  • 医療現場:医療機器、手術室や集中治療室など

UPSバッテリーの原理

UPSバッテリーは電気を蓄えておき、停電時にUPSより各機器に電気を供給するために使用されます。UPSの給電方式には下記のようなものがあります。

  • 常時商用給電方式: 通常は交流入力をそのままスルーで出力し、電源から給電が途絶えて停電や過電圧を感知した瞬間にバッテリからのインバータ給電に切り替える
  • ラインインタラクティブ給電方式: 通常時は交流入力をスルー出力し、一定範囲内の電圧変動にはトランスのタップ切り替えで対応し、停電や一定以上の変動に対してはインバータ給電に切り替える
  • 常時インバーター給電方式: 交流入力をいったん直流に変換し、常にバッテリーを充電しながらインバータによって安定した交流に再変換し、電力を供給する

バッテリーの日常的な保守としては 外形、周囲温度、測定電圧などの管理などを行うことが必要です。通常、UPSバッテリーを使用する際の推奨環境温度は20℃~25℃です。メーカー公表の期待寿命値は基本的に上記の理想的な環境下でのフロート寿命期間となり、実際の運用下での寿命ではありません。寿命がメーカー公表値より短い原因としては、環境温度が高い、放電が多い (停電が多い) 、設置したバッテリー間の隙間がない、負荷が大きいなどが考えられます。バッテリー寿命が短いと感じる場合は、環境や設置場所の改善も対応策の一つです。

UPSバッテリーの種類

UPSバッテリーには鉛蓄電池、リチウムイオン電池などの種類があり、更にそれぞれの種類の中でも様々な製品があります。

1. 鉛蓄電池

鉛蓄電池は、UPSで使用される最も一般的な電池です。正極に二酸化鉛、負極に海綿状の鉛を使用しており、電解液として希硫酸を用いています。正極・負極の双方から電解液中に硫酸イオンが移動することで充電され、電解液中の硫酸イオンが正極・負極の双方に移動することで放電を行う仕組みです。

UPSで使用される鉛蓄電池には、MSE型と通常AGM型と純度の高いピュア鉛ACM型のUPS専用とがあります。MSE型は一般的に容量50〜3000Ahであり、UPS専用型は容量50, 100, 150, 200, 300Ahなどです。UPS専用型に使用されるバッテリーは、FVHと呼ばれる高率放電タイプです。寿命は、通常のMSE型で2~7年、長寿命型MSE型で9〜12年、UPS専用型で7~9年程度となっています。 (現在はバッテリー設置個所の省スペース化に伴い、MSE型とFVH型は通常AGM型とピュア鉛AGM型へ移行しています。)

通常AGM型は価格が比較的安価で汎用性の高いバッテリーで、9Ah~200Ahまでの幅広い容量範囲があります。大型UPS用バッテリーのキャビネットに収納が容易なサイズ設計となっています。

世界で3社でしか製造していないピュア鉛AGM型は、従来の通常鉛蓄電池と比較すると高いエネルギー密度と出力性能を併せ持っています。ピュア鉛を使用することにより1Cでの充放電が可能となり、バックアップの際に瞬時に大きな電気を流すことで、次の停電に備えた早期の充電を実現します。大型UPS用バッテリーのキャビネットに収納が容易なサイズ設計となっています。

2. リチウムイオン電池

リチウムイオン電池は、鉛蓄電池と比べて、はるかに小型で軽量です。一般的に、鉛蓄電池の約45%の重量とされます。

鉛蓄電池よりもより高いエネルギー密度を持つ上に、より長いサイクルライフを提供します。また、リチウムイオン電池は、最大で充放電サイクルが鉛蓄電池の10倍であり、寿命も8〜10年と最大で通常のMSE型鉛蓄電池の3倍長持ちします。メンテナンスの手間や交換頻度が大幅に少なくなります。

本記事はUPSバッテリーを製造・販売する株式会社フジエナジー様に監修を頂きました。

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