監修:株式会社ウエスコットイースト
繊維補強コンクリートとは
繊維補強コンクリートとは、合成繊維などの繊維素材を混和してコンクリートの靭性を高めた複合材料です。
コンクリートは、圧縮には強い素材であるものの、引っ張る力には弱く、延性に極めて乏しいという特性があります。加えて、コンクリートは硬化の進行や乾燥などにより体積が収縮する素材であるため、変形が生じてひび割れが起こりやすいです。コンクリートに繊維を練り混ぜた繊維補強コンクリートは、繊維の靭性によってひび割れの拡大を防ぎ、ひいてはそれによって生じうる構造物の崩壊を防ぐことが可能です。使用される繊維には、鋼繊維、ガラス繊維、炭素繊維、有機系繊維などがあります。例えば鋼繊維の場合は、長さ数mmから十数mmの短繊維としてコンクリートに混ぜ込まれます。
繊維補強コンクリートの使用用途
繊維補強コンクリートは、コンクリートのひび割れ防止、耐久性向上、建築物・構造物の崩壊防止のために使用されています。土木・建築に幅広く使用されており、各種のコンクリート剥離防止対策、既存の構造物の補修や、新規建造物の素材など様々な場面で利用可能です。
主な用途例には下記のようなものがあります。
- トンネル (吹付・覆工)
- シールドトンネル (セグメント)
- 橋脚、橋梁
- 道路の舗装 (鋼床版補強・床版増厚など)
- 建築物の土間コンクリート
- コンクリート二次製品
- 高性能耐震部材 (耐震壁など)
繊維補強コンクリートの原理
繊維補強コンクリートは、コンクリート中に、短繊維を一様に分散させて製造します。繊維がコンクリート中に一様に分散することによって強度が高められる仕組みです。下記は繊維を混ぜ込むことによって向上するパラメータの代表的な例です。
- 引張強度
- 剪断強度
- 曲げ強度
- ひび割れに対する抵抗性
- 靭性
使用される繊維には、金属等の無機材料または合成樹脂等の有機材料を原料とした様々な種類があり、一般的に数mmから十数mmの長さの短繊維が用いられます。
繊維補強コンクリートが性能を正しく発揮するためには、製造段階において正確な計量と十分な混和が必要です。通常のコンクリートよりも粘性が 高いため、オムニミキサ、ホバートミキサ、強制練りミキサなど、練混ぜ性能・効率の高いミキサが使用されます。
繊維補強コンクリートの種類
繊維補強コンクリートで使用される繊維の種類には、鋼繊維、ガラス繊維、炭素繊維、有機系繊維などがあり、それぞれ違った特性を持ちます。繊維の長さは切断などによって任意に加工できますが、太さは素材の製造工程によって決まり、強度に影響を及ぼします。
また、引張強度、比重、破断時伸び率やコストなども繊維の種類によって様々です。
1. 鋼繊維
繊維補強コンクリートに使用される鋼繊維は、主にカットワイヤーが使用されます。カットワイヤーとは、伸線された鋼線を、圧延や引抜きにより所定の長さに切断したものです。一般的に、直径0.2~0.5mm、長さは10~60 mm程度の寸法の繊維が使用されます。スチールファイバーとも呼ばれています。
鋼繊維は鋼線を切断しているので形状寸法が安定しており、引張強度も比較的高いことが特徴です。
2. ガラス繊維
耐アルカリガラス繊維も繊維補強コンクリートに使用される素材です。ジルコニアが16%前後含有される場合が多く、ガラス繊維を含有する繊維補強コンクリートは、特に「ガラス繊維強化コンクリート (GRC) 」と呼ばれます。軽量、表面が緻密で加工性に優れているなどの特徴から、特に建築における装飾目的の構造物やファサードなどに使用される場合が多いです。
3. 炭素繊維
繊維補強コンクリートで使用される炭素繊維には、PAN系とピッチ系があります。PAN系は、ポリアクリロニトリル (英: Polyacrylonitrile, PAN) を原料とし、1000℃以上で焼かれて炭素繊維となったものです。ピッチ系とは、石炭ピッチを精製・重合して製造された炭素繊維です。炭素繊維の特徴として、軽い (鉄の1/4の比重)、強い (鉄の 10 倍の引張強度) 錆びない、腐食しないなどの特性が挙げられます。
4. 有機系繊維
有機系繊維としては、様々な合成ポリマーが用いられます主な種類には下記のようなものがあります。
- PVA繊維
- ポリエチレン繊維
- ポリプロピレン繊維
- ナイロン繊維
- ビニロン繊維
- アクリル繊維
- PBO繊維
有機系繊維は、密度が小さく軽量です。特に、コンクリートと混和した際に流動性への影響を与えにくいことが特徴です。特にポリエチレン繊維などは、耐疲労性、耐衝撃性にも優れ、耐薬品性、耐水性、耐光性の点でも高い性能を持ちます。
本記事は繊維補強コンクリートを製造・販売する株式会社ウエスコットイースト様に監修を頂きました。
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