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図1. ジアゾメタンの基本情報
ジアゾメタン (Diazomethane) とは、有機化合物の一種で、分子式CH2N2で表される物質です。
分子中にジアゾ基を持つため、ジアゾ化合物に分類されます。ジアゾメタンはジアゾ化合物の中で最も単純な構造の物質であり、CAS登録番号は、334-88-3です。
分子量42.04、融点-145℃、沸点-23℃であり、常温ではカビ臭を呈する黄色の気体として存在しています。密度は1.4 (空気=1) です。爆発性が高いため、衝撃、熱、光、アルカリ金属の存在によって爆発する場合があります。
水とは反応しますが、エーテルないしはジオキサン溶液は比較的安定です。それ以外では、ベンゼンに容易に溶解し、エタノール、エチルエーテルに僅かに溶けますが、アルコールとも徐々に反応して分解する性質があります。
また、皮膚刺激や吸入によって人体に害を及ぼす物質であるため、取り扱いには注意が必要です。労働安全衛生法では、名称等を表示すべき危険有害物、危険物・可燃性のガスに指定されています。
ジアゾメタンの主な使用用途には、メチル化剤、農薬原料、医薬原料などがあります。有機合成の実験室では、特に、カルボン酸やフェノール性ヒドロキシ基のO-メチル化 (メチルエーテル誘導体やメチルエステル誘導体を生成する) やケトンのエポキシド化を経由するC-メチル化などの反応に使用されています。
爆発性があるため、通常はエーテル溶液、もしくはジオキサン溶液として用時調整して使用されますが、より安全で扱いやすい代替試薬が用いられることも非常に多いです。
図2. ジアゾメタンの共鳴構造式
ジアゾメタンはπ電子が非局在化しているため、ルイス構造は共鳴混成体として表現され、分子構造は直線構造です。非常に不安定な物質であるため、前述の通り、衝撃、摩擦、振動を加えると、爆発的に分解することがあります。
100℃への加熱や、粗面との接触も爆発を誘引する因子です。さらに、希釈していない液体や濃縮溶液中に不純物や固体が存在する場合にも、高強度の光の下で爆発することがあります。
ジアゾメタンそのものは、非常に不安定で危険な取り扱いにくい物質であるため、市販されていません。前述の通り、通常はエーテル溶液、もしくはジオキサン溶液として用時調整して使用されます。
一方、トリメチルシリルジアゾメタン ((CH3)3SiCHN2) は、ジアゾメタンとほぼ同様な反応性を持つ物質でありながら、爆発性のない安定な液体です。扱いやすいため、化学試薬として一般に市販もされています。
どうしてもジアゾメタンそのものを用いないとならない特別な場合を除いて、一般的にはこちらを用いることが主流であり、安全面からも望ましいとされます。トリメチルシリルジアゾメタンの試薬製品は、通常は10%ヘキサン溶液などの状態です。5mL , 25mL , 100mLなどの種類があり、冷蔵保管が必要な試薬として取り扱われます。
図3. ジアゾメタンの合成法
ジアゾメタンは前述の通り爆発性があるため、エーテルまたはジオキサン溶液として用時調整して使用します。アシル化またはスルホン化されたN-メチル-N-ニトロソアミンを濃アルカリ水溶液中と反応させて合成する方法が一般的です。
具体的な実験操作としては下記の流れで得ることができます。
ジアゾメタンは、光分解によりメチレンCH2を発生する物質です。酸塩化物と反応させると、ジアゾメチルケトンまたはクロロメチルケトンが生成します。
活性なアセチレン類の三重結合やエチレン類の二重結合とは、1,3-双極子付加反応してピラゾール誘導体ないしはピラゾリン誘導体を生成します。また、アーント・アイシュタート合成による環状ケトンの環拡大反応などにも利用される物質です。
フェノールあるいはカルボン酸のO-メチル化剤として汎用される場合、氷冷した過剰量のジアゾメタンのエーテル溶液を攪拌し、フェノールあるいはカルボン酸の溶液にに少量ずつ加えて反応を進行させる実験操作が一般的です。
*一部商社などの取扱い企業なども含みます。
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