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シクロオクタテトラエンについての概要、用途、原理などをご説明します。また、シクロオクタテトラエンのメーカー4社一覧や企業ランキングも掲載しておりますので是非ご覧ください。
図1. シクロオクタテトラエンの基本情報
シクロオクタテトラエン (Cyclooctatetraene, COT) とは、環状の不飽和炭化水素に分類される有機化合物の一種です。
分子式はC8H8で表され、分子内に4つの2重結合を含みます。アヌレン類の一種であることから、[8]アヌレンとも呼ばれます。IUPAC命名法による名称は、シクロオクタ-1,3,5,7-テトラエンです。通常、二重結合が全てシス型の (1Z, 3Z ,5Z, 7Z)-シクロオクタテトラエンを指します。CAS登録番号は、629-20-9です (all-cis体) 。
分子量は104.149、融点は-3 ℃、沸点は143 ℃であり、常温では密度0.919 g/cm3の黄色の液体です。悪臭をもち、空気中において徐々に重合します。水には溶解せず、エーテル、ベンゼン、エタノールなどの有機溶媒に溶解します。
シクロオクタテトラエンは、シリコン表面用の高有機膜の合成に使用されます。その他に、液体状態の有機色素レーザーや、2色素のまばたきを低減するための三重項状態消光剤としても使用用途があります。
また、有機合成化学においても合成上有用な化合物として扱われます。主な用途は、環状の化合物の合成中間体や、テレフタルアルデヒドやフェニルアセトアルデヒドの合成原料などです。
シクロオクタテトラエンの原理を合成と化学的性質の観点から解説します。
図2. シクロオクタテトラエンの合成
シクロオクタテトラエンは、アセチレンをテトラヒドロフランに溶解させてシアン化ニッケルを触媒として15~25気圧に加圧し、加熱しながら重合させる方法 (レッペ法) によって合成されます。
歴史的には、1912年にドイツのR・ウィルシュテッターにより、天然物のペレチュリンから初めて合成されました。
図3. シクロオクタテトラエンの化学反応
シクロオクタテトラエンは、8π(パイ)電子系の環状不飽和炭化水素です。ヒュッケル則では、π電子の数が4n + 2 (n は0を含めた正の整数) であれば芳香族性を有するとされますが、シクロオクタテトラエンは該当しません。4nπ電子系の分子ですが、平面構造を取らないため、反芳香族にも分類されず、非芳香族の分子に分類されます。
all-cis型のシクロオクタテトラエンの配座は、おけ型 (ボート型) 構造です。炭素原子間の距離は結合の種類によって異なります。また、シクロオクタテトラエンは付加反応が起こりやすい化合物です。異性体であるビシクロオクタトリエンに転位しやすく、臭素化、付加反応、酸化反応などは、ビシクロオクタトリエンの形の反応生成物を与えます。
シクロオクタテトラエンの化学反応の中にはπ電子の数を変化させ、非芳香族から芳香族へと変わるものがあります。例えば、カリウムとの反応です。カリウム原子より二つ電子を受け取ってジアニオン (シクロオクタテトラエンジアニオン) となり、π電子数が10となってヒュッケル則を満たします。この二カリウムシクロオクタテトラエニドは、ウラノセン (シクロオクタテトラエンジアニオンとウランの化合物) の前駆体となります。
シクロオクタテトラエンは、有機合成上有用な化合物として、主に研究開発用試薬として販売されています。容量には、1mL , 5mL , 1g , 5gなどの種類があり、ガラス瓶容器で販売されている物質です。通常、冷蔵もしくは冷凍保管が必要な試薬として取り扱われます。
製品としてのシクロオクタテトラエンには0.1%程度の重合禁止剤 (ヒドロキノンなど) が含まれています。これは、シクロオクタテトラエンが非常に重合しやすい化合物であるためです。
その他に関連する物質では、シクロオクタテトラエン鉄トリカルボニルが研究開発用試薬として販売されています。この物質中では、シクロオクタテトラエンは鉄配位子としての機能を果たしています。
参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/yukigoseikyokaishi1943/25/1/25_1_25/_article/-char/ja/
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