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キナゾリンについての概要、用途、原理などをご説明します。また、キナゾリンのメーカー5社一覧や企業ランキングも掲載しておりますので是非ご覧ください。キナゾリン関連企業の2025年2月注目ランキングは1位:太洋株式会社、2位:林純薬工業株式会社となっています。
図1. キナゾリンの基本情報
キナゾリン (英: Quinazoline) とは、化学式C8H6N2で示される芳香族複素環式化合物です。
その構造は、ピリミジン環とベンゼン環が縮合したものであり、分子量は130.15、沸点は243℃、融点は49-50℃、CAS登録番号は253-82-7です。通常、キナゾリンは白色から淡黄色の粉末または結晶として存在し、特有の臭気を有します。エタノールやアセトンには溶解しますが、水には溶けにくい性質があります。密度は1.351g/cm3、酸解離定数pKaは3.51、引火点は106℃です。
キナゾリンは、天然化合物や医薬品に広く含まれる重要な構造であり、化学、薬学、医学などの分野で広範に研究されています。消防法や毒劇法などの国内法規による指定はありません。
キナゾリン誘導体は、その多様な生物活性から医薬品として広く利用されており、有機合成原料としても重要な役割を果たしています。
医薬品としては、抗がん剤、抗マラリア薬、降圧薬、抗炎症薬など、様々な疾患の治療薬として開発されています。例えば、降圧薬のドキサゾシンは、キナゾリン環を含む薬剤のひとつです。また、がん治療薬としても、脳腫瘍などに対する効果が期待されています。
キナゾリン誘導体は、農薬や色素の中間体として多様な分野で応用されており、とくにエレクトロニクス分野においては、有機EL材料としてディスプレイなどへの応用が期待されています。
図2. キナゾリンの水和反応(上)と位置番号(下)
キナゾリンは、芳香族性を持つ複素環化合物であり、比較的安定です。ただし、反応条件次第では様々な反応を起こし、多様な誘導体を合成できます。
キナゾリン環は、求電子反応、求核反応、酸化反応など、様々な反応に関与可能です。例えば、N3位でプロトン化やメチル化される性質があり、N3位がプロトン化されると、C4位に水分子をはじめとする様々な付加反応が起こります。さらに、キナゾリン溶液をアルカリ性または酸性で加熱すると、加水分解し、2-アミノベンズアルデヒド (またはその重合体)、ギ酸、アンモニア (もしくはアンモニウムイオン) を生成します。
キナゾリンのピリミジン環は芳香族求電子置換反応を受けにくいものの、2位よりも4位の方が反応性は高いです。そして、ピリミジン環よりもベンゼン環部位の方がより求電子置換反応を受けやすく、2位または4位のハロゲン置換体は容易に芳香族求核置換反応を受けます。
キナゾリンは、その構造に多様な置換基が導入された誘導体として存在し、置換基の種類や結合位置によって特性や生物活性が変化します。2-置換キナゾリン、4-置換キナゾリン、6-置換キナゾリンなどが代表的な例です。
キナゾリンおよびその誘導体は、研究開発用試薬として市場に流通しており、有機合成の出発物質として利用されています。これらの試薬は通常、1gや5gといった少量単位で提供され、室温で保管可能な比較的高価な化合物です。
市販されているキナゾリン誘導体としては、4-ヒドラジノキナゾリン、4-クロロキナゾリン、2-メチル-4(3H)-キナゾリノン、キナゾリン-2-カルボン酸塩酸塩などが挙げられます。
図3. キナゾリンの合成
キナゾリンの合成法は多岐にわたりますが、歴史的に見ると、キナゾリン-2-カルボン酸の脱炭酸が最初の報告例です。現在では、4-クロロキナゾリンにトシルヒドラジド基を導入し、塩基を用いて除去する方法が効率的な合成法のひとつとして知られています。
代表的な合成法としては、ニーメントウスキー反応、フリーデル・ランデルクラフツ反応、そしてディールス・アルダー反応などが挙げられます。これらの反応を組み合わせることによって、様々な置換基を持つキナゾリン誘導体を合成することが可能です。
特に有名な人名反応としては、ニーメントウスキーのキナゾリン合成 (英: Niementowski quinazoline synthesis) があります。この反応は、アントラニル酸とアミドから4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン誘導体を合成するものです。
キナゾリン誘導体は医薬品化学で重要な化合物群です。例えば、高血圧症治療薬のプラゾシンはα1-アドレナリン受容体遮断薬です。また、近年注目されている分子標的治療薬であるチロシンキナーゼ阻害薬のゲフィチニブ、エルロチニブ (非小細胞肺がん治療薬)、アファチニブ、ラパチニブなど、様々な薬剤に用いられています。
さらに、抗マラリア剤や降圧剤など、キナゾリン環を持つ分子は多岐にわたる疾患の治療薬として利用されています。
参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0232-5326JGHEJP.pdf
*一部商社などの取扱い企業なども含みます。