全てのカテゴリ
閲覧履歴
ベンザルアセトンについての概要、用途、原理などをご説明します。また、ベンザルアセトンのメーカー5社一覧や企業ランキングも掲載しておりますので是非ご覧ください。
図1. ベンザルアセトンの基本情報
ベンザルアセトンとは、化学式 C10H10O で表される有機化合物です。
ベンジリデンアセトンとも呼ばれ、構造式は C6H5CH=CHC(O)CH3で、ベンゼン環とアセトンが二重結合で結びついた α,β-不飽和ケトンに分類されます。特有の刺激臭を持つ黄色い固体または液体として存在し、CAS登録番号は122-57-6、トランス体のCAS登録番号は1896-62-4です。
国内法規上、当該物質は労働安全衛生法において「変異原性が認められた化学物質等」として指定されています。
ベンザルアセトンは、特徴的な香りと化学反応性により、多岐にわたる分野で活躍しています。
スイートピーのような甘い香りを持つことから、香料として石鹸や香水などに配合されます。とくに、天然油脂とアルカリを主成分とする油くさい石鹸に、人々が好む清潔感のある香りを付加するために重要な役割を果たしてきました。なお石鹸は、人の肌に直接触れる洗浄剤であるため、薬機法 (旧薬事法: 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律) の化粧品に該当し、成分表示が義務付けられています。
医療品の製造においては、さまざまな薬剤の中間体として、医薬品の合成に用いられています。また、化学分野においては、有機合成の試薬として利用され、とくに金属触媒と組み合わせることで、多種多様な有機化合物が生成可能です。その他、食品添加物や工業製品の材料としても利用されることがあります。
ベンザルアセトンは、特有の刺激臭を持つ淡黄色から黄褐色の固体または液体で、融点は37〜41℃、沸点は約262℃、引火点は66℃、分子量は146.19です。有機溶媒には溶解しますが、水にはほとんど溶けません。また、α,β-不飽和ケトンであるため、求核付加反応や還元反応など、様々な化学反応を起こしやすい性質があります。
安全性については、皮膚や粘膜への刺激性が懸念されるため、取り扱いには十分な注意が必要です。
ベンゼン環にアセトンが二重結合しており、α,β-不飽和ケトンの構造を有します。具体的には、ベンゼン環、二重結合、ケトン基、そしてメチル基から構成されています。
ベンザルアセトンは、その分子構造に起因する多彩な反応性を示す化合物です。とくに、分子内に存在する二重結合は、光化学反応や酸化反応の開始点となり、ケトン基は還元反応や他の分子との付加反応の中心的な役割を果たします。
シス異性では、ベンゼン環とメチル基が二重結合の同じ側に位置しています。トランス異性体では、ベンゼン環とメチル基が二重結合の反対側に位置します。シス体は熱力学的に不安定であり、通常はより安定なトランス体に変化するため、シス体として単独で存在することは稀です。一方、トランス体はシス体よりも安定していますが、特定の条件下ではシス体とトランス体の混合物として存在することがあります。
図2. ベンザルアセトンの合成
アセトンとベンズアルデヒドは容易に入手可能であり、ベンザルアセトンはこれらの物質を原料とし、水酸化ナトリウムなどの塩基性物質を触媒として用いるクライゼン・シュミット反応によって効率的に合成できます。
クライゼン・シュミット反応は、アルデヒドまたはケトンと、活性メチレン化合物 (例えばアセトン) を塩基触媒の存在下で反応させ、α,β-不飽和カルボニル化合物を生成する化学反応です。
アセトンは塩基と反応すると、その活性メチレン基からプロトンが引き抜かれ、エノラートアニオンを生じます。このアニオンはベンズアルデヒドのカルボニル基に求核付加し、続いて脱水反応が起こることでベンザルアセトンが生成されます。
図3. ベンザルアセトンの反応
ベンザルアセトンは、分子構造により比較的安定である一方、特定の条件下では多様な化学反応を起こし、有機合成化学の分野において重要な役割を担う化合物です。メチルケトン類と同様、α位とβ位の水素原子が酸性を示すため、脱プロトン化が起こりやすく、エノラート (英: enolate) を生成し、求核付加反応や還元反応など、さまざまな反応に関与します。
また、α,β-不飽和ケトンの構造的特徴から、マイケル付加反応やディールス・アルダー反応も起こします。マイケル付加反応は、求核剤がα,β-不飽和カルボニル化合物のβ炭素に付加する反応で、ディールス・アルダー反応は、ジエンとジエノフィルが環状付加反応を起こす反応です。
ベンザルアセトンは、紫外線照射を受けると異性化を起こして、シス体とトランス体の混合物となります。また、酸化剤との反応ではカルボン酸へ、還元剤との反応ではアルコールへと変化します。
ベンザルアセトンは、独特な反応性を利用して、多岐にわたる分野で応用されています。例えば、エノラートは臭素と反応すると、二重結合に臭素が付加します。また、ヒドラゾン (英: hydrazone) を生成する反応も起こります。さらに、アルケンとヘテロジエンがディールス・アルダー反応を起こすことで、ジヒドロピラン (英: dihydropyran) を合成することも可能です。
さらに、二鉄ノナカルボニル (英: nonacarbonyldiiron) と呼ばれる Fe2(CO)9 と反応すると、(ベンジリデンアセトン) 鉄トリカルボニル (英: (Benzylideneacetone) iron Tricarbonyl) が生成し、Fe(CO)3単位が他の有機化合物に転移します。
エノラートとベンズアルデヒド (英: benzaldehyde) とを反応させると、ジベンザルアセトン (英: dibenzalacetone) という化合物が生成されます。この化合物は、ジベンジリデンアセトン (英: dibenzylideneacetone) とも呼ばれる芳香族ケトンの一種です。
ジベンザルアセトンには、シス-トランス型やシス-シス型などの異性体が存在しますが、通常はトランス-トランス型を指します。また、遷移金属の配位子としても利用され、dbaという略称で呼ばれることもあります。
参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/jp/product/detail/W01W0102-0056.html
*一部商社などの取扱い企業なども含みます。
社員数の規模
設立年の新しい会社
歴史のある会社