PPE樹脂

PPE樹脂とは

PPE樹脂 (英:Poly Phenylene Ether) とは、ポリフェニレンエーテル樹脂のことで、2,6-ジメチルフェノールを原料とする非晶性のプラスチックです。

PPE樹脂は、1965年にアメリカのGE社で発明された高耐熱性のエンジニアリングプラスチックです。軟化点が高く、機械的特性・吸水性・寸法安定性が優れているなどの長所があります。しかし、溶融粘度が高く、成形性に劣るため、他の樹脂との混合により、流動性を改良して変性PPEとして、多く使われます。

PPE樹脂の使用用途

PPE樹脂は、耐熱性が高く、低温でも耐衝撃性に優れ、硬質で粘り強く、幅広い温度帯で安定している特性を活かして、幅広い分野で使用されます。変性PPEとして多くの用途があります。

OA機器では、ファクシミリやプリンター等のハウジング、電子基盤の固定部品、端子盤、コンピューター・TV・ビデオカメラ・VTR・オーディオ機器の部品、高圧ケース、光ファイバーのコネクタ、コイルボビンなどの用途です。

家電類では、エアコン、空気清浄機、炊飯器、食器洗い機、洗濯機、カメラ、時計などの部品や筐体、スイッチ、コネクタ、端子台などに使われます。

自動車では、コネクター類、ドアハンドル、インストルメントパネル、ホイールキャップやフェンダーなどの外装部品などです。この他、計測機器類などの精密機器、各種ポンプ、バルブ、配管継手などにも使用されます。

PPE樹脂の原理

PPE樹脂の製法は、まず、フェノールとメタノールを合成して、アルキル反応により2,6-キシレノールを作ります。これを原料にして、酸化重合あるいは酸化カップリングさせることで、PPEを得ることが可能です。

具体的には、2,6-キシレノールをトルエンに溶融し、触媒に塩基性銅Ⅱ塩を用いて反応させます。塩基性銅Ⅱ塩は、塩化銅Ⅰにピリジンを使用して酸素吸収させたものです。この反応は、フェノキシラジカルによる炭素-酸素カップリングが行われる方法です。効率よく鎖状の高分子が重合されます。

炭素-酸素カップリングによる重合は、水のみが排出され、ハロゲンを含まない原料を使うので、環境に優しい工法です。さらに、水溶媒重合法が開発され、トルエンを使用しない方法です。

PPE単体では、溶融時の流動性が悪く、射出成形する場合の温度が高いので、他の合成樹脂とコンパウンドしたものが多く使われます。

PPE樹脂の特徴

長所

PPE樹脂は比重が小さく、エンジニアリングプラスチックの中でも低い部類に入ります。耐熱性・難燃性に優れ、硬質で粘り強く、広い温度範囲で安定性が優秀です。160℃の焼付塗装が可能で、優れている特性は、引張強さ、降伏強さ、伸び率、耐衝撃性などの機械的性質です。

また、吸水性が低く、耐熱水性に優れ、加水分解も起きにくく、酸やアルカリに侵蝕されにくい特性を有します。広い周波数域に対し、誘電率や誘電正接が小さいなどの電気特性に優れた特性があり、成形収縮率が小さいので成形時ヒケが生じにくく、寸法精度に優れています。

トルエンやベンゼンなどの溶媒に溶解し、柑橘類の果皮などから抽出されるリモネンにも溶けます。この特性を利用してリサイクルも開発中です。

短所

PPE樹脂の短所は、耐候性は弱く、紫外線によって黄色く変色を起こしやすいことです。また、酸・アルカリには強いものの、トルエンやベンゼンなどの有機溶剤やオイルには弱く、又、ガラス繊維等の強化材の気密性や加工時の割れには注意が必要です。

PPE樹脂のその他情報

PPE樹脂の改良

PPE樹脂は、PPE単体で使うのは少なく、他の熱可塑性樹脂と混合したものが一般に使われます。

ポリアミドとのアロイは、耐薬品性が改善され、高温での処理が可能な結晶性物質です。成形加工性、耐油性、耐熱性、吸水性が優れたものになります。

ポリスチレンはPPEと極めて近い溶解パラメーター値を有し、特に相溶化剤を使用しなくても、PPEとのコンパウンド化が容易です。非晶性であり、ガラス繊維を添加することで、収縮レベルを 0.2%程度 まで低減可能です。誘電性が優れ、熱膨張係数が小さい特性があります。PPEの難燃性は悪化しますが、リン化合物系難燃剤を使用すれば解決可能です。

この他、ポリプロピレンとのアロイは耐候性が向上し、ポリアセタールとのアロイは摺動性や耐磨耗性を改良でき、ポリフェニレンスルファイド とのアロイは耐熱安定性が優れています。

混合物の樹脂粘度は、混合物の成分比率に応じて異なり、PPE の比率が高いほど、粘度は高くなります。

PPE樹脂を発泡した高機能素材もあります。軽量・断熱の発泡体の特性を有します。難燃規格UL-94に適合した断熱材です。ビーズのサイズや種類によって、多くの製品が販売されています。

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