静電気測定器

静電気測定器とは

静電気測定器 (英:electrostatic instrument) は、物体表面に生じた静電気の電圧を測定する機器です。

非接触で測定できる表面電位センサーを備えた機器であり、非測定対象の物体に表面電位センサーを向けて測定します。静電気を測定する機器は表面電位計や静電電位測定器とも呼ばれ、主に製造業の生産工程で使われますが設置環境に対応した機器が販売されています。

静電気測定器の使用用途

生産工程において静電気が原因となるトラブルには以下ようなものが有りますが、それを防止する為の対策を進めるためにはまず発生する静電気の大きさを正確に測る必要があります。対策の効果を検証、評価する場合にも静電気の大きさを測ります。工程によっては、静電気の発生状況を常時モニタする為に用いることもあります。

1. 異物付着

帯電した製品に対して帯電した異物 (ほこりなど) が付着するトラブルが発生します。例えば塗装工程では塗りムラの原因となります。

2. 静電破壊 (ESD破壊)

集積回路などの半導体部品は、静電気放電で回路素子が破壊されることがあります。

3. 誤作動

微小な電流・電圧で作動している機器 (電子天秤、ウェイトチェッカー、金属探知機など) は、静電気が放電する時の電磁ノイズの影響を受けることがあります。

4. 人体などへの放電

帯電した物体から人体への静電気放電は、人体に対して痛みや不快感を与えるだけでなく、機器のトラブルや発火 (可燃物の引火) の原因にもなります。

静電気測定器の原理

物体表面が帯電して静電気が発生すると、その周辺に電界が生じます。静電気測定器はこの電界強度を測定して静電気の電圧を算出します。一般的な静電気測定器 (表面電位計) の原理は次の通りです。

表面電位センサーは静電誘導現象を利用したもので、帯電した物体からの静電界強度Eo (帯電電圧Voに比例する) を検出電極が受けると検出電極の表面に誘導電荷qが蓄積されます。そこで検出電極と物体の間に検出電極全体が覆われる大きさのシールド板を設けて一定速度で回転させると、シールド板に覆われた瞬間に検出電極に蓄積された誘導電荷qを放電し、シールド板が通り過ぎるとまた誘導電荷qを蓄積します。この周期的な電荷qの移動、即ち交流電流Isの大きさは電界強度に依存するため、電流Isを測定することにより物体表面の帯電電圧Voを求めることができます。

但し上記測定法では、測定値は表面電位センサーと測定対象の距離に大きく依存します。測定対象との距離が離れると電界が弱くなるため、測定値が小さく表示されることは避けられません。従って測定対象と表面電位センサーとの間隔を指定された距離に保つことが必要です。

また、上記測定距離に依存する問題を解決するための工夫として電圧フィードバック型表面電位計があります。これは検出電極に高電圧電源を接続し、交流電流Isがゼロとなるように高電圧電源の電圧出力を調節するものです。電流Isが流れなくなるのは被測定対象の電圧とセンサーの電圧が同じ場合であるため、その時の高電圧電源の出力電圧は測定対象の帯電電圧と等しいと言えます。

静電気測定器の使い方

一般的な静電気測定器で帯電した物体の静電気を測定する場合は、次のような手順となります。

1. 測定対象の表面に対して表面電位センサーの検出電極とを並行にして、静電気測定器が定めた距離に表面電位センサーを設置します。
2. 想定される電圧より高い測定レンジに設定して測定を開始します。大まかな測定値が得られたら測定レンジを合わせて測定値を採用します。

電圧フィードバック型表面電位計での測定では、測定対象の表面に対して表面電位センサーの検出電極とを並行に設置しますが、測定対象との距離を厳密に定める必要はありません。高圧電源の電圧を徐々に上昇して、検出電極に流れる交流電流がゼロになるポイントを見つけます。その時の高圧電源の出力電圧が測定対象の帯電電圧となり、測定値の単位はVもしくはKVでとなります。静電気の最大電圧を想定して適切な機器を選択することが大切です。

静電気測定器のその他情報

静電気の発生原因と防止

静電気の発生メカニズムは下記のようなものが知られています。

1. 剥離帯電

プラスチックシートから保護膜を引きはがす等の重なったものが剥がれる場合に発生します。

2.摩擦帯電

物を混ぜるとき、服を脱ぐ時、モーターが回転する時等、物体と物体が擦れる際に発生します。

3. その他の帯電

粉砕・粉体帯電等があるため、このような状況にさらされる物体の静電気を測定する際には静電気測定器が使用されます。特に半導体部品は静電気放電により故障する可能性が高い為、常日頃から静電気測定器で工程内を確認することが必要です。生産工程において測定対象となる具体例を以下に記します。

  1. 各種半導体やその他の電子部品やその部品が梱包されたトレイとその保護フィルム、保管棚
  2. 作業服、作業靴、作業工程の机、椅子、床面
  3. アースバンドやアース取付部分
  4. 製造装置、検査機、治工具、半田コテ等の製造設備
  5. 作業標準書やそれを保護するプラスチックケース
  6. モニターの表示部分
  7. 購入した各種フィルム

また、静電気の発生が避けられない場合はイオナイザ等の除電装置を設置して積極的に静電気を除電しますが、その効果を確実にする為にも静電気測定器を用いた測定が欠かせません。

参考文献

http://www2.iee.or.jp/~aim/history.html
https://www.ekasuga.co.jp/study/electricity/electricity02/
https://www.britannica.com/technology/Leyden-jar#ref38505
https://www.britannica.com/technology/electroscope
https://www.murata.com/ja-jp/products/emc/esd/basicesd/chapter2

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