ビーコン

ビーコンとは

ビーコン (Beacon) は、ごく限られた範囲にのみ届く無線通信を使って、その場所を通る人や物に、その場所に関連した情報を提供し、または逆にその場所を通った人や物の情報を取得する情報通信の仕組みです。

しかし、“ビーコン”という言葉は、この情報通信を利用する端末機器をさす場合や、無線通信を行う電波や赤外線のことを言う場合、送られてくる情報のことを言う場合などもあり、あいまいさがあります。

従来の無線通信技術は、より遠くの人に、より多くの人に情報を素早く伝えることを目指して進歩してきました。それに対してビーコンは、情報を伝えるエリアをより小さく限定することで、その場所にいる人にだけ必要な情報を伝える仕組みを構築してきました。

ビーコンの使用用途

場所に依存した情報の伝達という特性を活かして、ビーコンは様々な情報サービスで使用されています。

VICSは一般社団法人道路交通情報通信システムセンターが運営する道路交通情報通信システム (Vehicle Information and Communication System) の略称です。VICSでは、道路上に通信設備を設けて、その場所を通った自動車のカーナビゲーションシステムに、その先の道路情報をビーコンを使って提供しています。高速道路上にある通信設備から、ETC2.0と同じ5.8GHZ帯の電波を使って道路情報を届けるサービスを電波ビーコン、一般道路上にある通信設備から赤外線通信で行うサービスを光ビーコンと称しています。

博物館や美術館などで、訪問客に貸し出される音声案内機器は、特に微弱な出力でBluetoothやWiFiによる無線通信を活用しています。電波の届く範囲が、博物館の各々の展示品の近くに限られているので、訪問客がその展示品の前に来た時だけ案内放送が流れる仕組みになっています。最近では、Bluetoothの機能を持ったスマートフォンが増えてきているので、専用の音声案内機器ではなく、スマートフォン向けに案内放送を流す仕組みも取り入れられ始めています。

雪崩ビーコンは、冬山登山をする人たちが持つ災害対策用の通信機器の名称です。雪崩に巻き込まれてしまった際には、雪崩ビーコンから発信される電波を頼りに、遭難者の捜索が行われます。

雪崩ビーコンの場合には、通信設備側からではなく、移動する通信機器側から発信される電波を利用して捜索活動が行われます。これと同様にIoT (人とモノのインターネット) と呼ばれる現代の情報通信社会では、移動する人やモノに識別情報 (ID) を発信できる小さな情報通信機器を持たせ、それが通った時間と場所、識別情報を収集し、活用する仕組みが様々な産業で開発されています。

ビーコンの原理

Googleの翻訳機能を使って狼煙 (のろし) を英訳するとbeaconと出てきます。狼煙は、その場所で何が起こっているかを遠方に伝えるための手段です。

ビーコンも同様に離れた場所で起こっていることを、遠くに伝えます。基地局、即ちアンテナは電波の出力が弱いほど、狭い範囲での通信になります。この特性を利用すると、その場所にいる人や物の正確な位置情報が得られます。

さらに、やり取りする電波の出力を微弱にするほど、通信機器の大きさを小さくできます。タグビーコンは一片の大きさが数cmほどの超小型・軽量で安価な通信機器です。そして、タグビーコンは、ボタンが一つあるかないかだけの、非常にシンプルな通信機器です。

タグビーコンからは数秒間隔で自分のIDを含めたシグナルを送信します。これを人や物に付けておくと、ビーコンのアンテナの近くを通った際にその信号が受信されます。そのことで、その時間、その場所にその人や物が来たという情報が得られます。

その一方で、ビーコンはその場で得た情報を、離れたところに伝達する通信機器とネットワークが必要になります。その通信機器は工場や敷地内での通信であればLANに接続し、さらに遠隔地へ情報を伝えるのであれば、インターネットや専用回線に接続します。

このように、ごく限られた範囲に届く微弱な電波を利用して、その場所の人やモノの動きを知り、その情報をネットワークを通じて収集し、活用する仕組みがビーコンです。これはIoTの概念と多くの部分で一致しています。IoTを実現する手段の一つがビーコンの活用であると言えます。

ビーコンの選び方

現在では、IoTの考えに基づいた様々なシステムが開発されています。例えば、ショッピングセンターの中で、スマートフォンを持った人が近づいてきたら、その場所のお買い物情報を届けて、購買欲を刺激するシステムが考えられています。この場合、Bluetoothによる通信や、スマートフォン上のアプリが動いていますが、これらはビーコンの応用例です。博物館や美術館などで、訪問客に貸し出される音声案内機器と原理は同じです。スマートフォンがビーコンの移動通信機器の役割を果たしています。

また、鍵にタグビーコンをつけておいて、それが手元から離れるとスマートフォンのアラームを鳴らすシステムがあります。この仕組みは、スマートフォンがタグビーコンから一定間隔で送られてくるシグナルを監視していて、それが届かなくなるとアラームを鳴らします。この場合は、スマートフォンがビーコンの基地局の役割を担っています。

このように、ビーコンを、目的や用途に応じて柔軟にシステムに組みこみます。

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