カーブトレーサーとは
カーブトレーサーとは、半導体デバイスに電圧を印加したとき、その電圧と流れる電流との関係をディスプレイ上に表示する装置です。
電圧-電流特性のグラフ (カーブ) をトレースしてディスプレイ上に表示することから、カーブトレーサーと呼ばれています。半導体デバイスは印加した電圧と流れる電流との関係は非直線であり、抵抗器のように比例関係にあるわけではありません。
そのため、半導体や電子デバイスの電圧対電流特性の測定には、電圧を変化させて電流値を測定しその結果を用紙にプロットするなどの手順が必要です。一方で、カーブトレーサーを使用すれば、電圧-電流特性を直接ディスプレイ上に表示することができます。
カーブトレーサーの使用用途
カーブトレーサーは、半導体デバイスの開発時の特性測定や製造部門におけるデバイスの検査、半導体を使用する回路の動作検証などの場面で使用されています。主な測定対象はダイオード、バイポーラトランジスタ、FETなどの半導体デバイスです。
半導体では、測定対象に印加した電圧を徐々に変化させその際に流れる電流を計測します。それに対して、カーブトレーサーの表示部では、X軸方向が電圧値を、Y軸方向に電流値を表示することで、電圧に対する電流値の関係がグラフとして描かれます。
なお、高電圧を印加する場合や高電流を流す場合などでは、それぞれに応じたオプション電源が用意されていて、さまざまなデバイスに対応できるよう機材が準備されています。
カーブトレーサーの原理
1. ダイオードの測定
測定対象がダイオードであれば、アノードとカソード間にデバイス駆動用電源を接続し、印加する電圧の最大値Vmaxと最小値Vminを設定すると、電源はその間の電圧を自動的に50Hzから60Hzの周波数でスイープします。また、この時ダイオードに流れる電流値を測定します。
一方、CRTの水平掃引回路では半導体デバイス駆動用電源の電圧を入力信号とし、垂直掃引回路にはダイオードに流れる電流を入力信号とすることにより、印加電圧に対する電流特性 (V-I特性) がCRT上に描かれます。
2. トランジスタの測定
バイポーラトランジスタ/FETの測定では、ステップジェネレータを用いた電流源/電圧源をベース/ゲート電極に接続します。デバイス駆動用電源はエミッタ/ソースとコレクタ/ドレイン間に接続して、印加する電圧の最大値Vmaxと最小値Vminを設定しておきます。
バイポーラトランジスタの場合
ベース電流をステッププジェネレータで段階的に可変し、その時のエミッタ-コレクタ間電圧とコレクター電流をCRT上に表示すると、トランジスタの静特性カーブが描かれます。
FETの場合
ゲート電圧をステップジェネレータで段階的に変化させると、ソース-ドレイン間の電圧とドレイン電流の関係を示すFETの静特性カーブが描かれます。
カーブトレーサーは、表示部にCRTを用いる前提で作られているものです。ところが、CRTがほとんど生産されなくなったことから、従来タイプのカーブトレーサーは姿を消してしまいました。
それに代わって、PCに電圧-電流特性のデータを取り込み、ディスプレイ上に特性カーブを描くものが製品化されています。
カーブトレーサーの構成
カーブトレーサーは、デバイス駆動用の電源、トランジスタのベース電流やFETのゲート電圧を制御するためのステップジェネレータ、CRTとその水平掃引回路、垂直掃引回路等から構成されています。
カーブトレーサーのその他情報
半導体パラメータアナライザ
カーブトレーサーは半導体の基本的な特性を知る上で非常に有効な測定器で、特にデバイスメーカでは研究開発から製品の検査に至るあらゆる工程で活用される基本測定器でした。半導体デバイスのユーザーの受け入れ検査でも使われることがあり、以前は日本メーカーも数社生産していましたが、現在は一部のメーカーを除いて撤退してしまいました。
一方、太陽光パネルの評価用として開発されたカーブトレーサーが新たに販売される様になりました。なお、カーブトレーサーに代わって使われているのが半導体パラメータアナライザです。
これは複数の電圧源や電流源を備え、コントローラ (PC) から電圧や電流を制御して、半導体の特性を測定するものです。