変流器 (カレントトランス) とは
変流器 (英: current transformer,カレントトランス)とは、電流の大きさを変換する装置です。CTと略されて呼ばれることが多いです。
変流器に入力してくる電流の大きさを入出力のコイル巻き数比に応じて変換して出力します。大電流回路や高圧回路の電流を小電流に変換して、電流の測定や継電器などに使用されます。
変流器の使用用途
変流器は、産業やインフラ設備などに広く使用される機器です。以下は変流器の使用用途一例です。
- 上水汲上用ポンプの電流監視
- 排水・下水処理ポンプの落水監視
- 変電所における送電先電流監視
- 発電所における発電量監視
変流器を使用する目的は回路絶縁と電流変換です。回路絶縁は大電流が流れる主回路と制御用回路の絶縁を目的とした用途です。5A程度の小型ポンプの電流監視用でも、回路の絶縁を目的に変流器を使用して電流を監視します。
電流変換は大電流を小電流回路として出力する用途です。数千Aの電流を制御回路に導入することは制御配線が太くなり非経済的なため、変流器で最大5A程度に変流して制御・監視します。
変流器の原理
交流用変流器は鉄心と1次コイル、2次コイルで構成されます。1次コイルと2次コイルはそれぞれ鉄心に巻き付いています。
1次コイルは測定する電流回路に接続するコイルです。1次コイルに電流が流れると、鉄心に磁束が発生して二次コイルを励磁させます。二次コイルは励磁された磁束の大きさに従って2次側へ電流を発生させます。
2次コイルに発生する電流値は1次コイルの電流と巻線比によって決定されます。1次コイルの巻数が多いほど電流値が大きくなり、2次コイルの巻数が多いほど電流値が小さくなります。一般的には1次コイルに流れる最大許容電流に対して、2次コイルの電流値は1Aまたは5Aに調整されて製品化されます。
変流器の種類
変流器は巻線型変流器や貫通型変流器などの種類があります。以下は変流器の種類一例です。
1. 巻線型変流器
巻線型変流器の構成は、環状鉄心と入出力コイルです。
原理の項で説明した通りに動作します。測定回路の電流が大きくなるほど1次側の配線許容電流が大きくなっていくため、主に数A~数十A程度の小型変流器に使用されます。小電流を高い精度で測定できる点が特徴です。
2. 貫通型変流器
貫通型変流器は一次側コイルを撤廃した変流器です。測定したい回路配線を鉄心に挟み込んで、そのまま1次側コイルとします。
数十A~数百A以上の大電流回路では、基本的に貫通型変流器を選定します。1次側コイルが存在しないため、安価に導入可能です。
3. 直流変流器
原理の項で説明したのは交流回路の変流器です。直流回路の場合は鉄心に磁束が発生しなくなるため使用できません。直流の電流測定にはホール素子を使用した直流変流器を使用します。
電流が流れる回路に磁界を掛けると、電流値に応じた電圧が発生します。これをホール効果と呼び、この原理によって電圧を出力する素子がホール素子です。直流変流器の多くはホール素子を利用した変流器です。
ただし、直流の場合は路面電車用などの大電流電源が存在します。それらの電流値は数万Aとなる場合があり、ホール素子型変流器で測定するのは困難です。
4. シャント抵抗型分流器
シャント抵抗は電流を測定するための低抵抗の抵抗器です。抵抗値をあらかじめ定めているため、両端電圧を測定することで電流値へ変換することが可能です。
数万Aの直流大電流を測定する際はシャント抵抗を用います。大電流回路のシャント抵抗は発熱量も大きいため、水冷する場合が多いです。
変流器の選び方
変流器は基本的に1次側に流れる電流値に応じて機器を選定します。1次側で流れる最大電流値よりも大きい電流仕様の変流器を選定します。
また、変流器の二次側には過電流継電器や電流指示計などに接続して使用します。用途に応じて二次側電流値を0-1Aまたは0-5Aから選定します。
過電流継電器は変流器と近くに配置する場合が多いため、変流器の二次側電流仕様が0-5Aの製品を選定することが多いです。これは、0-5Aの方が精密に電流値を測定することが可能なためです。
一方、電流指示計は変流器と離れていることもあり、その場合は二次側電流仕様を0-1Aとする場合が多いです。これは、0-1A仕様の方が変流器に必要な電源容量を小さくすることが可能なためです。
参考文献
https://www.kamidenshi.co.jp/magazine/1409/
https://www.m-system.co.jp/mstoday/plan/mame/b_sensor/0807/index.html
https://chief-engineer.info/current-transformer/