バキュームクランプとは
バキュームクランプとは、真空状態を作り出すことでワークを固定する治具のことです。
真空クランプとも呼ばれます。バキュームクランプは、物体を非常に強力に固定することができます。真空の力は非常に強力であり、物体をしっかりと保持します。また、吸着させるために直接触れる必要がなく、物体を傷つける心配がありません。
さまざまな形状や素材の物体に適応することも可能です。平らな表面や曲線面など、さまざまな形状の物体を固定することができます。複雑な形状の加工物を搬送・固定する際にも適しています。
真空システムはベースユニットに内蔵されていることも多く、別途真空ポンプや真空エジェクタを必要としないところもメリットです。加工物交換の際も真空状態のオンオフ切り替え操作のみで交換作業に移れるため、作業性にも優れています。
バキュームクランプの使用用途
バキュームクランプは、さまざまな産業で使用されます。特に、非破壊かつ強固に加工物を固定したい場合に重宝される治具です。搬送機器や加工機器に使用されることが多いです。
1. CNC加工機
CNC (英: Computer Numerical Control) 加工機において、ワークピースを固定するために使用されます。加工する素材を吸引し、確実に位置決めすることで、高精度な加工を可能にします。
2. 組立作業
組立作業において、部品や製品の固定にも有用です。電子機器の基板や部品の組み立て時に使用されることがあります。基板のはんだ付けや配線作業時に使用される場合も多いです。
3. 印刷
グラフィックスおよび印刷業界においても、広告看板などの大型の素材を加工・印刷するために使用します。これらの素材は比較的薄く柔軟であり、正確な位置決めが必要です。バキュームクランプは、真空の力を利用して素材を固定し、移動や振動によるずれを防止することが可能です。
バキュームクランプの原理
バキュームクランプの動作には真空が必要です。真空は空気やガスがほとんど存在しない状態を指し、真空ポンプなどの装置を使用して生成します。真空ポンプは密閉された容器内の空気やガスを取り除き、容器内を真空状態にします。
真空が生成された後、物体とクランプの間にシールを形成します。一般的にはゴム製またはシリコン製のシールパッドが使用されることが多いです。バキュームクランプの下部に取り付けられており、物体との接触面に密着します。
シールが形成された後、真空ポンプから供給される真空力によってシールパッド内圧を低下させます。この結果、シールパッドは物体に密着し、物体を吸引することが可能です。バキューム力によって物体が固定され、動かれることなく保持されます。
バキュームクランプを解除するには、真空力を解放することが必要です。真空ポンプからの供給を停止するか、空気をシールパッドに供給することで実現します。真空力が解放されると、シールパッドと物体の間の接触が解除され、物体を取り外すことが可能です。
バキュームクランプの選び方
バキュームクランプを選ぶ際は、固定対象の特性や、固定力の要求性能、材質などを考慮して選定します。これらを考慮しながら、予算に見合ったバキュームクランプを選ぶことが重要です。
1. 固定対象
まずは、固定する物体の素材や形状などを考慮することが必要です。一部のバキュームクランプは、特定の素材に適している場合があります。また、曲面や不規則な形状など、異なる形状の物体に対応できるかどうかも確認します。
2. 固定力・吸引力
固定に必要な力や吸引力も、選定する際の重要な要素です。固定する物体の重量や安定性に応じて、必要な固定力が異なる場合があります。使用状況に応じて、適切な固定力できるバキュームクランプを選ぶ必要があります。
3. 作業環境
作業環境に応じてバキュームクランプの材質も選定することが必要です。高温用のセラミック製や耐食用のステンレス製なども販売されています。用途に応じてさまざまな材質から選定します。
参考文献
https://www.imao.co.jp/vacmagic.html
https://www.izumi-js.co.jp/vacuumclamp/
http://www.schmalz.co.jp/products/vacuum-clamp.html