気象レーダー

気象レーダーとは

気象レーダー

気象レーダー (英: Weather radar) とは、雲の動きや雨や雪の降り方などを観察するためのレーダーです。

地上では気象庁が各地に気象レーダーを設置しているほか、空港にも気象レーダーが設置されています。また、航空機に搭載されているレーダーも気象レーダーとしての機能を有します。

気象レーダーは、空中に向かって電波を発射して雲や雨に反射して帰ってくる電波をアンテナで受け、電波を反射して帰ってくるまでの時間から雲や雨までの距離を計算可能です。帰ってくる電波の強さで雨の強さを導き出します。

発射した電波と受信した電波の位相のずれから、雲や雨が近づいているか遠ざかっているかを観察可能です。この位相のずれをドップラー効果 (英: Doppler effect) と言い、それを利用したレーダーをドップラーレーダーと呼びます。

気象レーダーの使用用途

航空業界では、航空機の安全運航のために気象レーダーを使用可能です。地上にある気象レーダーは半径約120kmの範囲の雲の動きを観察して、航空機の離着陸に危険な雲が近づいていないか警戒します。

特に積乱雲の下では強い下降気流が発生しやすく、滑走路近辺に積乱雲が接近している際には管制官は航空機の離発着を見合わせるなどの処置を講じます。その一方で、航空機に搭載されている気象レーダーは進行方向にある雲を観察可能です。

航空機の前方に積乱雲がある場合には航空機は針路を変更します。雲の中に入って揺れが予想される場合にはパイロットは乗客と乗員に着席とシートベルトの着用を促します。

気象レーダーの原理

レーダーエコー画像は、雨雲の位置や雨量のような分布を表示し、気象現象を推定可能です。気象衛星の可視光や赤外雲の画像のみでは見えない気象現象もエコー画像によって観測できます。エコー画像では降水量を色で分類する場合が多く、強度分布から降雨のパターンを推定可能です。

エコー画像の時間変化によって、気象現象の特徴がわかります。色が着いたエリアを降水域と呼び、降水域の生滅や移動で気象パターンを推定します。

気象レーダーの種類

主に気象レーダーには、マイクロ波レーダー、ミリ波レーダー、ドップラーレーダー、偏波レーダー、雷レーダーの5種類があります。

1. マイクロ波レーダー

雨や雪などの結晶で反射する電磁波を解析し、大気中の雪や雨などの密度や位置を観測します。波長が3〜10cmの電磁波を使用します。

2. ミリ波レーダー

波長が1mm〜10mmほどのミリ波を用いてマイクロ波レーダーと同様に分析します。

3. ドップラーレーダー

電磁波を発射してドップラー効果による周波数の偏移を観測可能です。

4. 偏波レーダー

水平偏波と垂直偏波の2つの電波を放射して、電波の反射率の差によって降水強度を求めます。

5. 雷レーダー

電磁波によって反射した電波を分析するレーダーでは雷も観測可能です。

気象レーダーの選び方

気象レーダーは、観測や推定の要素によって使い分けられます。

1. マイクロ波レーダー

障害物によって影の部分が観測しにくく、山頂などに設置される場合が多いです。小型化や軽量化が進んでおり、気象衛星にも搭載されました。気象衛星では観測範囲が広いため、地上の障害物に影響されにくいです。

2. ミリ波レーダー

波長が短く、小さな物体も観測可能で、霧の粒子や雲粒の観測に向いています。地上に設置するタイプ以外にも気象衛星で利用されています。

3. ドップラーレーダー

風向や風速を把握して細かいスケールで気流や雲の流れや動きを観測します。荒天時の観測に向いていますが、晴天時には雨粒がないため風が観測できません。

4. 偏波レーダー

雨粒の大きさや送信電力の大小などの影響を受けにくいです。そのため定量的に観測できます。

5. 雷レーダー

雷は他の観測を妨害するため、あまり使用しません。雷の観測では雷のみを観測するレーダーを別で設置する場合があります。

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