弾性率測定器とは
弾性率測定器 (英: elastic measuring instrument) とは、物体の変形のしにくさを表す物性値である弾性率を測定する測定器です。
弾性率は、弾性変形における応力とひずみの間の比例定数 (応力/ひずみ) です。研究者の名前からヤング率とも呼ばれます。
弾性率の測定は、引張試験などの静的試験や超音波試験などの動的試験により行います。弾性率のほか、剛性率、体積弾性率、圧縮率なども測定が可能です。
弾性率測定器の使用用途
弾性率、剛性率、ポアソン比などの弾性定数は、物質の基本特性であり、構造物の強度設計をする際などに欠かせない重要性があります。したがって、多種多様な材質、形状、温度での測定が必要不可欠です。
構造物の設計などに際し、材料の弾性率などが入手できない場合は、弾性率測定器を使用して、使用する温度での弾性データを取得します。
やわらかさ測定にも弾性率が使われます。化粧品や食品、素材など触感しか分からないような「やわらかさ」を、誰でも簡単にヤング率という物理量で見える化でき、定量化が可能です。音叉式やわらかさセンサーを使用して、化粧品・材料・食品などのヤング率測定を行います。医学研究、食品開発、材料開発、スポーツ医学、アスレチックトレーナーなどに応用されなす。
弾性率測定器の原理
弾性率の測定方法には、静的試験と動的試験があります。静的試験は、さらに、引張試験、 曲げ試験、圧縮試験、ねじり試験に分類され、動的試験は、共振法、超音波法、振り子法などが行われます。
1. 引張試験法
引張試験法は、板状の試験片に引張荷重を加え、その変位により弾性率を算出する方法です。変位の測定は、ひずみゲージ方式、レーザー方式、差動トランス方式などを使います。
2. 曲げ試験法
両端支持の板状試料の中央部に荷重をかけたときに生じたたわみを差動トランスなどで検出し、弾性率を算出する方法が、曲げ試験法です。
3. 共振法
共振法は、動的測定法の1つであり、薄板状試料片に周波数1 kHz前後で電磁的又は機械的に強制振動を与えて、共振周波数を測定する方法です。強制振動には縦振動、横振動、ねじり振動があり、縦振動・横振動の共振周波数から、縦弾性率が算出でき、ねじり振動の共振周波数から剛性率 (横弾性係数、又はせん断弾性率) を算出します。
4. 超音波法
超音波パルス法は、縦波用振動子および横波用振動子により、約1~20 MHzの超音波パルスを試験片に与え、試験片内を伝播する縦波および横波の伝播速度から弾性率および剛性率を計算する方法です。
弾性率の種類
弾性変形は、力を受けた固体に生じた変形が、力を除いてもとに戻る時の変形です。弾性変形は3種類あり、それらに応じて弾性率も、引張弾性率E・剪断弾性率G・体積弾性率Kの3種類があります。弾性率はひずみに対する応力の比率であり、ひずみが無次元であるので、弾性率の単位は、応力と同じPa、即ちN/m2です。
単に弾性率と言う場合は、多くは引張弾性率やヤング率のことです。
1. 引張弾性率
引張力や圧縮力などの単軸応力についての弾性率です。縦弾性係数やヤング率とも言います。引張弾性率は、伸長ひずみに対する引張応力の比率です。
2. せん断弾性率
せん断弾性率は、せん断力についての弾性率で、せん断ひずみに対するせん断応力の比率です。横弾性係数、剛性率とも言います。
3. 体積弾性率
直角3方向の力である静水圧についての弾性率です。体積ひずみに対する体積応力の比率です。
弾性率測定器のその他情報
弾性率測定器のJIS規格
弾性率測定に関するJISは、 金属材料とセラミックスの試験方法があります。
- JIS Z 2280 金属材料の高温ヤング率試験方法 (1993)
- JIS R 1602 ファインセラミックスの弾性率試験方法 (1986、1992 改訂)
- JIS R 1605 ファインセラミックスの高温弾性率試験方法(1989)
この他、引張試験方法、曲げ試験方法、圧縮強さ試験方法などのJIS規格があり、弾性率が算出できます。