EMCCDカメラとは
EMCCDカメラとは、電子倍増機能 (Electron Multiplying) CCD素子により、微弱な光を検知可能なCCDカメラのことです。
通常のCCDカメラで光を検知する場合、ある程度明るい光が必要です。光を電気信号に変換するとき、ある程度のノイズ (光以外の不要な情報) が加わります。
微弱な光を電気信号に変換しても、ノイズに埋もれるため十分な濃淡の画像が得られません。光を検知して電気信号に変換する際、EMCCDカメラはCCDセンサーに電子倍増機能を持たせるため、微弱な光を検知可能です。
EMCCDカメラの使用用途
EMCCDカメラの主な用途は、顕微鏡や望遠鏡です。顕微鏡における観察部分は非常に狭く、絞りや反射鏡により観察部分の明るさを増強していますが、通常のCCDカメラで撮影すると光量が不十分です。
そのため、光から変換した電気信号がノイズに埋もれてしまいます。一方で、EMCCDカメラを用いると、微弱な光を十分な強度の電気信号に変換・増幅可能です。望遠鏡で暗い天体を撮影する際も、微弱な光量を補うためEMCCDカメラを用います。
EMCCDカメラの原理
1. CCDセンサーの仕組み
CCD (Charge Coupled Device) とは、光を電気信号に変換する電荷結合素子のことです。従来の銀塩カメラ (フィルムを使用したカメラ) の受光部では銀塩フィルムが使われているのに対し、多くのデジタルカメラの受光部ではCCDセンサーが使われています。
CCDセンサーは、画素という小さな素子 (フォトダイオード) から構成されます。フォトダイオードが光を電荷に変換し、CCDセンサーが電荷を電流として出力し、画像化します。
2. EMCCDの仕組み
電流を流す際に、ノイズの影響を受ける特性があるため、微弱な光では電気信号がノイズに埋もれて適切な画像が得られません。そこで、EMCCDセンサーでは光から変換した電荷をノイズの影響を受けないレベルまで倍増させます。
電荷を倍増させることにより、電気信号も倍増されるため、出力画像の濃淡もハッキリします。このようにして顕微鏡や望遠鏡など、微弱な光を検知する必要がある場合でも、EMCCDカメラを使用すれば実用に耐える濃淡のある画像を取得可能です。
EMCCDカメラの構造
EMCCDカメラは、CCDセンサー部とゲインレジスタと呼ばれる2つの機構から構成されます。
1. CCDセンサー部
CCDセンサー部のシリコン基板表面上の電極に異なる電圧を加えることでポテンシャルウェル (potential well: 電位の井戸) が作られます。光をCCDセンサー部が受光すると、光電効果により電荷が発生します。
電荷はポテンシャルウェルに捕捉された後、通常のCCDではACコンバータにてデジタル化が行われます。一方、EMCCDではデジタル化が行われる前に、電荷は電荷倍増のためにゲインレジスタに運ばれます。
2. ゲインレジスタ
CCDセンサー部から送られてきた電荷の倍増を行う機構です。電子転送時に高い電界を加え、高エネルギー状態にすることで新たな電子-正孔対を生成する現象 (インパクトイオン化現象) を利用しています。
EMCCDカメラのその他情報
ノイズ要因
EMCCDのノイズは次の4つに分類され、それぞれに対策が必要になります。
1. 固定パターンノイズ
CCDセンサー内の各画素の感度のバラつきから生じるノイズです。
2. ショットノイズ
CCDセンサーに入射する光子数に依存したノイズです。光子数が増加するとショットノイズも増加します。
3. ダークショットノイズ
光入力が発生しない状態でCCDセンサーに生じる電流のことを暗電流と呼びます。ダークショットノイズは暗電流に起因するノイズであり、暗電流低減によりダークショットを低減することが可能です。
4. 読み出しノイズ
CCDセンサー含めカメラを構成するハードウェアに起因するノイズです。
参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/mit/27/1/27_24/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kenbikyo/43/3/43_202/_pdf/-char/ja