デジタル傾斜計とは
デジタル傾斜計 (英: digital inclinometer) とは、傾斜や角度を測定する測定器です。
測定値の表示には、デジタル液晶表示を採用しています。また、アナログとは異なり、任意の位置を基準として設定し、基準に対する角度測定も行えます。研究用や産業用に要求される高い測定精度・広い測定範囲に対応可能です。
そのため、配管工事や排水工事、鉄骨建造物の建設工事、装置の据え付け、医療機器などの作業で使用されます。角度の測定方法には主に2種類があり、MEMSの技術を活用したものと電解液の傾きを活用したものです。
デジタル傾斜計の使用用途
1. 切削・建設現場
デジタル傾斜計は、切削現場でドリルの入射角度の測定に使用されます。狙いの角度からずれてしまうと切削方向が変わるため、無駄な作業や危険に繋がります。
また、建設現場ではクレーンの角度測定に有用です。角度を測定することにより、危険予知が可能です。鉄骨や配管などの水平・垂直が簡単に測定できます。
2. 太陽光電池パネル
太陽電池パネルの太陽追尾のために使用されています。十分な充電を得ることを目的に測定物へ直接取り付けます。
3. その他
精密機械や計測器、分電盤などの据え付け時の水平・垂直出しも用途の1つです。ロボットなどの自動機器のアーム角度測定に使用されます。
さらに、デジタル傾斜計は、医療業界でも活用されており、CT装置・X線装置では測定回転体の角度を正確に求めるために使用されます。患者の横たわるベッドの位置決めは、人体の病巣の位置を知る精度に繋がります。
デジタル傾斜計の原理
1. MEMS方式
MEMS (Micro Electro Mechanical Systems) の略称で、微小な電気機械システム) の技術を活用した傾斜センサは、完全に包囲されたチャンバーの中にアレー状に電極を配置します。2極のうち1極は固定され 、もう片方の1極はスプリングバネとの接続により、自由に可動可能です。
計測基準は、傾斜センサが水平時の静電容量測値とし、傾斜センサが傾くと自由端の電極が固定端の電極に対して、その位置が変動することで、同時に静電容量も変動前後で差が生じます。その時の静電容量の差を角度として換算しています。
2. 電解液方式
電解液技術を活用した傾斜センサは、電極が測定軸と平行にチャンバーの底面に2対取り付けられており、電解液で満たされています。電圧が2極間に印加されると、電流が形成するのは分散場です。その結果、チャンバーが傾き、液面が変化するため、分散場も変化します。
電解液の伝導率は一定で、抵抗値の変化は液面との関係に依存します。また、電解液の他に動く部品がないため損耗が少なく、耐衝撃性に優れています。測定に用いられる電極は電解液に浸っており、電極が腐食することはありません。
デジタル傾斜計の特徴
1. V字カット&マグネット内蔵
デジタル傾斜計の測定面は、多くはパイプの上でも安定性に優れたV字カットになっています。また、底面などはマグネット内臓で、鋼管工事、鉄骨工事、プラント工事等が効率的になります。
2. 高精度
高い分解能と精度を2軸同時にデジタル表示が可能です。正確な平準化、アラインメント、表面プロファイリング及び振動測定のための包括的なソリューションができます。精度は、多くは±0.03~0.2°程度、分解能は、0.01~0.1°程度です。そして、1度に1つの軸の測定値を読み取るための試行錯誤を解消し、時間の節約と質の高いプロの仕事が可能です。
3. 比較表示
任意の角度を基準0°とし、他の角度との比較表示が可能です。例えば、30°の位置を比較モードで基準0°にした場合、通常モードで50°の位置が20°と表示されます。
4. 防塵・防水性能
ぬれた手や、現場で埃の多い場所でも安心して使用できます。防塵・防水性能は、多くはIEC (国際電気標準会議) が定めた規格IP54相当です。
参考文献
http://www.pacico.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/pacico_cat12p_201609_dic121.pdf
https://www.taylor-hobson.jp/products/alignment-level/electronic-levels-and-clinometers/digital-inclinometer
https://www.kmecs.com/technical_info/download.php?id=303