DFBレーザーとは
DFBレーザーは、レーザー共振器の一部に回折格子を組み込んだレーザーです。
DFBはDistributed FeedBackの略であり、「分散帰還」と訳されます。レーザダイオードの一種で、出力する波長が一定な点が特徴です。ダイオード層の境界に回折格子があるため、ある波長光のみを増幅させて出力させることが可能です。
単一波長を増幅させることでスペクトル幅が狭いため、光信号のスペクトル効率を最大化し、他の信号との干渉を最小限に抑えます。高密度な情報伝送や複数の信号の同時伝送に適しています。また、周波数の安定性が高いため、信号の品質やデータの転送速度の向上に有利です。
DFBレーザーの使用用途
DFBレーザーは様々な用途で使用されます。以下はその一例です。
1. 長距離通信
DFBレーザーは、光ファイバ通信において広く使用されます。波長が単一であるため、情報の損失を最小限に抑えることが可能です。周波数安定性が高く、消費電力も低いため、長距離通信では有利です。
長距離光通信では損失を抑制するため、光ファイバーの通過損失が小さい波長を選びます。光ファイバは光の波長によって損失が大きく異なり、一般に1.3μ帯と1.5μ帯の波長が広く使用されます。特に1550nmの波長光は損失が最小の波長のため、長波長DFBレーザーの代表的な波長です。
2. 内視鏡
内視鏡を使用して体内の組織や臓器を観察するために使用される場合も多いです。DFBレーザーは内視鏡の光源として利用され、高品質な光を発光します。コンパクト性と信頼性が高いため、内視鏡の光源として適しています。
3. ガス検査
DFBレーザーはガス分析においても使用されます。特定の波長での光を生成し、目標ガスの吸収スペクトルを測定することで、ガスの種類や濃度を非破壊的に検出することが可能です。DFBレーザーはスペクトル幅が狭いため、高感度かつ正確な測定ができます。
DFBレーザーの原理
レーザー内部ではp型とn型のクラッド層や活性層が存在します。p型クラッド層にはプラス電極が接続されており、n型クラッド層にはマイナス電極が接続されています。p型層と活性層の間に回折格子を構成する点が主な特徴です。
動作時は電極から順方向に電圧を印加します。電圧によって電子とホールがそれぞれのクラッド層から活性層に入り込み、これらの電荷が再結合したときに発光する仕組みです。光は活性層の境界と反射板によって増幅されます。
DFBレーザーでは回折格子が組み込まれているため、特定の波長のみを反射し、単一波長の光のみを増幅させることが可能です。この特性は光通信や医療機器などの様々な用途で有用であり、DFBレーザーが広く利用される理由の一つです。
DFBレーザーのその他の情報
1. DFBレーザーの温度特性
半導体レーザーは温度によって波長が微少に変化します。DFBレーザーは温度に対して波長が安定している点も特徴です。波長多重光通信やコヒーレント光通信の分野においては波長の温度特性も重要なポイントになります。
一般のDFBレーザーは温度に対する波長勾配が約0.1nm/℃と言われており、回折格子の周期による波長調整と温度勾配によって発振波長を制御します。また周囲温度の影響を受けないように、通常は温度サーミスタとペルチェ素子などで温度制御を実施することが多いです。ただし、コストや消費電力を低減するために、外部から温度制御を要さないDFBレーザーに関しても盛んに研究されています。
2. FPレーザーとの比較
半導体レーザーには他にもファブリーペロ (FB) レーザーがあります。FBレーザーは共振器内で光が前方と後方の面で複数回反射されて増幅される仕組みです。比較的スペクトルが広い点が特徴です。
したがって、DFBレーザーとはスペクトル幅の広さに大きな違いがあります。FPレーザーは光ファイバ通信やセンサーなど、幅広い用途に使用されていますが、単一モード出力が必要な場合はDFBレーザーが適しています。
参考文献
https://annex.jsap.or.jp/photonics/kogaku/public/15-02-kaisetsu1.pdf
https://www.fiberlabs.co.jp/tech-explan/about-ld/
https://optipedia.info/laser/ld/dfb-laesr/