超音波顕微鏡

超音波顕微鏡とは

超音波顕微鏡とは、超音波を入射して被観察物である試料からの反射波の強さや位置などを検出し、これを元に試料の状態を観察する顕微鏡です。

工業分野でよく用いられる電子顕微鏡と比較すると分解能は低いものの、光学顕微鏡よりも高分解能で微小領域を計測、観察できることが大きな特徴です。

超音波顕微鏡の使用用途

超音波顕微鏡は、工業分野での製品検査によく利用されています。超音波顕微鏡は、超音波を試料に入射して観察を行うため、入射深度を変更すれば試料の表面だけでなく、内部や底面まで非破壊で観察できることが特徴です。

具体的には、電子部品などの内部検査や一般的な材料の内部検査、粘着剤の密着性の確認、貼り合わせ面などのクラックやボイド、剥離などの検出に使用されます。電子部品などの内部検査や一般的な材料の内部検査、粘着剤の密着性の確認などにも有用です。いずれも、貼り合わせ面などのクラックやボイド、剥離などの検出に使用されます。

超音波は物質が連続している部分では減衰しながらも波が伝播していきますが、隙間などの連続していない部分では伝播できず境界面で大部分が反射する性質があります。そのため、剥離した部分やボイドなどで反射した反射波を検出できます。

超音波顕微鏡の原理

超音波顕微鏡は、超音波が異なる物質が隣り合う箇所に伝播した際に、その一部は反射され一部は透過する特性を利用しています。そして、反射波を検出して観察する場合が反射型、透過波を検出して観察する場合は透過型です。

1. 透過型

透過型の超音波顕微鏡は、試料を挟むように2個の音響レンズを向かい合うように配置された構造です。そして、一方の音響レンズには超音波を入射する圧電素子、もう一方の音響レンズ側には超音波を受信する圧電素子が配されています。

測定の際には、一方の音響レンズ側から超音波を入射し、焦点に置かれた試料を透過した超音波をもう一方の音響レンズ側の圧電素子で受信しています。

2. 反射型

反射型の超音波顕微鏡では、一方にのみ音響レンズと圧電素子が配置された構造です。この圧電素子が超音波の入射および資料からの反射波を受信しています。透過型および反射型のいずれも受信した超音波の強度や位相を解析して試料の表面や内部の状態の測定および観察が可能です。

超音波顕微鏡としては、透過型よりも反射型の製品が多く市販されています。その大きな理由は、反射型は試料を音響レンズで挟み込む必要がなく試料の厚さに制限がないからです。また、音響レンズを共焦点に設置する操作が不要のため、操作がより単純で取り扱いが容易なこと、画像形成と伝播速度の測定が可能であることなども反射型超音波顕微鏡の大きなメリットです。

超音波顕微鏡のその他情報

1. 反射型超音波顕微鏡の強み

反射型超音波顕微鏡を使用した測定法であるパルス反射法は、試料内部の剥離やボイドの検出に強い方法です。この方法では、水浸させたサンプルにパルス波形の超音波を照射して、内部で反射されたパルスから物体内部の情報を得ています。

このパルス反射強度は、境界面となる2つの物質の音響インピーダンスの差に依存しています。音響インピーダンスとは、材質の密度と音速の積で定義される量であり、空気層の反射はほぼ100%です。このため、このパルス反射法は試料内の剥離やボイドの検出に強い方法となります。

2. 超音波顕微鏡を用いた細胞観察

近年、超音波顕微鏡に使用分野として、これまでの工業分野以外に生物学分野が注目されています。100MHz~200MHzなどの高い周波数で用いて細胞の中を可視化できる超音波顕微鏡が開発されています。測定時に高周波数を用いても水中の細胞に悪影響はなく、このような超音波顕微鏡を用いれば細胞が生きた状態で観察可能です。

そのため、これまでのように色素染色しなくても細胞内の構造たんぱく質の変化を確認できます。現在では、細径ファイバーに高周波超音波を伝搬させる技術が確立されていることに加えて、ファイバー先端を凹面上に加工して超音波を収束させ、方位分解能を細胞レベルまで高めています。

超音波顕微鏡では、細胞内の物質の密度や粘弾性をもとに画像化しており、細胞増殖などをコントロールする細胞骨格の観察に非常に好適です。この特質を活かして、がん細胞集団からがん細胞を識別する技術も開発されています。この技術を用いて、正常な細胞が識別できるように蛍光たんぱく質を発現させ、抗がん剤がん細胞にどのように作用したかを確認できます。

参考文献
https://www.honda-el.co.jp/hb/3_12.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gomu1944/61/4/61_4_260/_pdf
http://optronics-media.com/news/20151120/37380/
https://www.tut.ac.jp/docs/PR151111.pdf#page=2
https://www.jstage.jst.go.jp/article/oubutsu1932/60/3/60_3_266/_pdf
https://www.japanlaser.co.jp/technology/ksi_ultrasonic_principle/
https://www.mst.or.jp/method/tabid/1335/Default.aspx
https://www.olympus-ims.com/ja/applications/high-temperature-ultrasonic-testing/

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です