NFCとは
NFC (Near Field Communication) とは、近距離無線通信のことです。
ごくごく短い距離間のデータ通信を行う規格であり、その技術を指します。端末をかざすだけで、機器間でデータ通信を行うことが可能です。
この規格は全世界で標準化され、日本でも様々な場所で利用されています。同様の技術として「おサイフケータイ」に使われているFelicaがありますが、これはNFC規格の中の1つです。
NFC規格は1つだけではなく複数の規格タイプから構成されており、Felicaはその中のタイプFという規格に該当します。
NFCの使用用途
NFCは、Suicaやスマートフォン、クレジットカードなどで使用されています。Suicaを例に挙げると、駅の改札を通過するだけでゲート通過の可否判断や料金の自動支払い、更にオートチャージまで実行可能です。
Suicaカードと駅のゲートに組み込まれたシステム間でNFCによる通信を行うことにより、この様な処理をごく限られた時間内で実現できます。その他、スマートフォンやクレジットカードにおいても同様に、NFCの技術を活用することで自動的な決済処理を行えます。
NFCの原理
図1. NFCの規格
NFCは技術規格の国際的な標準機関であるISO (International Organization for Standardization: 国際標準化機構) およびIEC (International Electrotechnical Commission: 国際電気標準会議) にて標準化が行われています。NFC規格はタイプA、B、FやISO/IEC15693などいくつかの種類から構成されています。
1. タイプA
タイプAはオランダの企業「NXP Semiconductors」が開発した規格です。比較的安価であり、taspoなどに利用されています。
2. タイプB
タイプBはアメリカの企業”Motorola”が開発した規格です。CPUを内蔵することにより高速処理が可能で、さらに高セキュリティであることから免許証、住民基本台帳カードなどに使用されています。
3. タイプF
タイプFはソニーが開発した規格であり、Felicaはこの規格に則った技術を指します。通常のNFCの通信速度が424Kbpsであるのに対して、タイプFの場合、その倍の848Kbpsと高速でデータ通信を行うことができることから、Suicaなどの交通系ICカードで利用されています。
4. ISO/IEC15693
ISO/IEC15693規格は、物流のICタグなどに使われています。
NFCはキャッシュレス決済をサポートし、キャッシュレス社会の実現やICタグ、ICラベルへの対応によりIOT化促進への貢献が期待できます。また、NFCの標準化を進める業界団体としてNFCフォーラムがあります。ノキア、ソニー、フィリップスが主体となり、NFC間のデータ互換性の実現などを目的として2004年に発足しました。
NFCのその他情報
1. NFCタグとリーダー
図2. NFCによる通信
NFCの技術を利用する際には、基本的にNFCタグとNFCリーダーを用います。NFCタグには情報を書き込むことが可能で、NFCリーダーはそれを読み取ることができます。
製品よって違いはありますが、NFCタグには数百バイトや数キロバイト程度の情報が書き込めることが一般的です。NFCタグはSuicaやPASMOといった電子マネーに用いられていることをはじめ、バーコードの代わりとして商品につけられているケースもあります。シール形式で販売され、一般のユーザーも利用できるようになっています。
NFCリーダーは、製品や規格にもよりますが数メートルから数センチ程度離れたところからタグに書き込まれた情報を読み取ることが可能です。最近では、スマートフォンもNFCリーダーとして利用できるようになり、スマートフォンを用いた忘れ物防止サービスや、商品の注文処理の自動化、スマートホームへの活用なども行われるようになりました。
2. NFCのペアリングとハンドオーバー
図3. ペアリングとハンドオーバー
NFCには、Bluetoothと同様にペアリングを行う機能があります。大容量のデータをやり取りする際などには、NFCで機器間のペアリングを行ったうえで、別の規格により通信を行います。
このように、通信をNFCから他の規格に引き継ぐことをハンドオーバーといいます。NFCが実現するハンドオーバーは、BluetoothハンドオーバーとWi-Fiハンドオーバーの2種類です。通常であれば、BlutoothやWi-Fiの認証のためには認証情報を入力する必要がありますが、NFCを用いることでタグに認証情報を埋め込めるため、それらを省略することができます。
NFCは低コストで設置し、タグの情報を読み取ったり書き込んだりすることができますが、高速度・大容量の通信に向いた規格ではありません。ペアリングとハンドオーバーを利用することで、NFCの欠点を補うことができます。
参考文献
https://www.sbbit.jp/article/cont1/25675
https://www.wantedly.com/companies/company_9259596/post_articles/199562
https://www.hivelocity.co.jp/blog/26821/