原薬の定性・定量分析

原薬の定性・定量分析とは

原薬の定性・定量分析 (英:qualitative & quantitative analysis of drug substance) とは、医薬品の有効成分である原薬を定性・定量分析することです。

定性分析は、化学分析の1つで、試料中に含まれる各種の成分の種類を知るための分析法です。未知物質を分析する際に最初に行う分析です。

また、定量分析は 、試料中に含まれる各種の成分の量を求めるための分析法です。一般に定性分析でその成分を明らかにしてから行います。

原薬の定性・定量分析の使用用途

原薬の定性・定量分析は、原薬の開発時や製造工程で多く使用されます。

開発段階では、厚労省の「医薬品の元素不純物ガイドラインについて」や日本薬局方の対象元素、塩原薬の目的元素などを、簡便・迅速に分析するために使います。また、受入れおよび出荷時には、製造工程での異物混入や触媒残渣を確認することも重要です。

原薬の定性・定量分析の原理

1. 定性分析

定性分析の方法は、物質中に含まれる特定化学種の特有な化学反応及び物理的性質などを調べて,既知のものと比較して確認します。

化学反応を利用するものは湿式分析が多いが、炎色反応・ほう砂球反応・吹管分析なども簡単な定性分析として利用されます。もっとも素朴な方法は、視覚や臭覚など人間の感覚を利用します。

主として水溶液の化学変化を利用する湿式法には、有機・無機物質の系統的定性分析法が多数あります。無機化合物を対象としたものは乾式法とよばれます。

物理的性質には、色・融点・沸点・電導度・結晶形・比重・磁性・誘電率・屈折率・スペクトルなどがあります。電磁波スペクトルによる方法が一般に利用されています。

2. 定量分析

定量分析の方法には、化学的、物理的、あるいは両者の併用による方法があります。

化学的定量法の中で、容量分析法や重量分析法は、特殊な機器を使用しないのでよく使われます。

一方、物理的定量法には光学的・電気的・磁気的・その他数多くの方法があり、それぞれが、分析成分と特異な相互作用をすることを利用しています。

高価な分析機器を使用して分析する場合が多いが、簡便・迅速な方法なので、機器による定量分析が大部分を占めています。

具体的には、吸光光度法・X線分析法・発光分光分析法・原子吸光分析法・電解分析法・クロマトグラフ法・放射化分析法などがあります。また、光度滴定・同位体希釈分析・質量分析・核磁気共鳴分析・ポーラログラフィー・クーロン滴定・ガス分析・比色分析・電解分析などの方法が数多くあります。

試料の量は 0.1~1g程度のものが多いが、1~10mg程度を用いて定量分析を行う場合は,微量化学分析またはミクロ分析と呼ばれます。

また、物理化学的定量法は、化学反応生成物の物理的性質を測定して定量を行う方法です。

原薬の定性・定量分析の規制

医薬品原薬は、有機合成・発酵・天然物からの抽出などにより作られる化学物質です。医薬品の有効成分として、品質・有効性・安全性の保証が必要です。

開発段階では、安全や環境を守るため、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)」や「労働安全衛生法」の対象となります。

医薬品としては、「医薬品、医療機器等の品質、有効性、安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器等法)」の適用を受けます。

原薬製造業者は、医薬品医療機器等法にしたがって、製造所毎に厚生労働大臣の許可を受ける必要があります。

原薬の定性・定量分析装置

原薬の開発及び製造工程では、様々な目的で元素分析を行います。開発段階では、特定の元素などを目的として行います。また、製造工程では、製造中の異物混入や触媒残渣などを確認します。

分析には、多くは蛍光X線分析装置を使用します。蛍光X線分析装置により、試料にX線を照射し、発生する蛍光X線の強度やエネルギーを解析して、試料を構成する元素の種類や含有量を調べる装置です。非破壊で固体・粉体・液体などの元素分析ができます。

触媒残渣の分析では、試料0.1g程度で、不純物に指定されている元素の定量分析が検量線法により可能です。また、塩原薬の分析では、塩原薬のカウンターイオンを構成する元素を定量することで、分子数の確認ができます。

原薬の製造工程では、異物分析を行います。異物の大きさは数十µmから分析が可能で、金属やガラス片などが検出できます。

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