タングステン電極とは
タングステン電極とは、溶接の際に用いる電極です。
タングステンが材料であり、円筒型に加工されています。径は1.0~4.0mm程度、長さは150mm程度で販売されています。
タングステン電極の使用用途
タングステン電極は溶接の際に使用します。そのため、工事現場や加工工場などが主な使用場所です。具体的な使用用途は以下の通りです。
- ボイラーの補修用
- バイクや自動車のメンテナンス・改造
- 造船所における船舶製造
- 化学プラントにおける配管修理用
基本的には、金属母材の溶接に使用します。製造業の中でも重工業において多く用いられる部材です。
タングステン電極の原理
タングステン電極は、タングステンが材料の棒材です。タングステンとは原子番号が74の金属で、元素記号はWと表記します。金属の中では比較的抵抗が高く、融点が高いことが特徴です。
タングステン電極は、融点が高い特徴を利用してTIG溶接用の電極として使用されます。TIG溶接は「Tungsten Inert Gas 溶接」の略で、タングステン電極と不活性ガスを利用した溶接です。溶接する母材とタングステン電極の間に高電圧を印可し、アーク放電を発生させます。
発生させたアーク放電の熱によって母材を溶かして溶接します。その際にアルゴンやヘリウムなどの不活性ガスを吹き付けることで金属の酸化や劣化を防止します。タングステン電極の融点が高いために母材に混ざることなく、溶接が可能です。タングステン電極の先端は使用時に円錐型に加工されます。この削り角度によってアーク放電の形状を変えること可能です。
タングステン電極の先端を鋭角にすると、アークが全体に広がって範囲が広くなります。母材の広い面積を浅く溶かすことが可能です。鈍角にすると、アークが先端部分の一点に集まります。母材の一点を深く溶かすことが可能です。
タングステン電極の種類
JIS規格で定められているタングステン電極は4つの規格が存在します。酸化トリウム入り、酸化セリウム入り、酸化ランタナ入り、純タングステン電極の4種類です。それぞれ特徴が異なるため、用途に応じて適したものを使い分けることが重要です。
1. 酸化トリウム入りタングステン電極
酸化トリウムを1~2%含有するタングステン電極です。摩耗に対する強度とスタート性が純タングステン電極よりも優れているのが特徴です。ただし、交流電流で使用する際に電極の先端が変形しやすく、溶接時に溶け出して飛び散る場合があります。そのため、直流電流で溶接する用途に適しています。
2. 酸化セリウム入りタングステン電極
酸化セリウムを1~2%含有するタングステン電極です。交流電流でも先端部分が溶けて飛び散ることがないため、酸化トリウム入りよりもさらに摩耗に対する耐性やスタート性が高い電極です。アルミやアルミ合金の交流溶接に適しています。
3. 酸化ランタナ入りタングステン電極
酸化ランタナを1~2%含有するタングステン電極です。4種の中で最も摩耗に対する耐性とスタート性が高い電極で、アーク安定性を保持しながら長時間連続的に使用可能です。自動溶接に適しており、ロボット溶接などの用途で用いられます。
4. 純タングステン電極
純粋なタングステンのみで構成されたタングステン電極です。4種の中で最も摩耗に対する耐性やスタート性が弱い電極です。先端が摩耗するのが早い反面、一度丸くなった後はそれ以上変形しないので溶接時の飛び散りが起きにくい特徴があります。そのため、電極の消耗が大きい交流溶接の用途に使用されます。
タングステン電極のその他情報
タングステン電極の識別色
タングステン電極は先述した種類ごとに識別色が定められています。識別色とは、販売時に分かりやすいように棒端部を塗装する色です。JISなどの規格で定められています。以下はJISで定められた各電極の識別色です。
黄色 | 1%トリウム入タングステン電極 |
赤色 | 2%トリウム入タングステン電極 |
桃色 | 1%セリウム入タングステン電極 |
灰色 | 2%セリウム入タングステン電極 |
黒色 | 1%ランタナ入タングステン電極 |
黄緑色 | 2%ランタナ入タングステン電極 |
緑色 | 純タングステン電極 |
参考文献
https://www.lamerco.com/product/r_parts/tungsten_spec.php
http://www.tohokinzoku.co.jp/business/electrode.html
https://www.weldtool.jp/article/yousetsu-sozai/3200
https://www.rakuten.ne.jp/gold/kougunomikawaya/tungsten.html