加熱装置とは
加熱装置とは、可燃性ガスや電気を用いて、科学薬品や試料など様々な物体を加熱するために使用される装置のことです。
「ヒーター」とも呼ばれ、幅広い用途に対応できるよう多種多様な製品が市場に出回っています。例えば、工業用のヒーターは1,000℃以上まで加熱可能な高性能なものがありますが、一般家庭用には「IHヒーター」や「電熱ヒーター」など、安全で手軽に使用できる製品が主流です。
近年では、加熱装置の生産技術が向上し、電源の確保が容易になったり、安全性が重視されたりするため、電気を用いて加熱する装置が一般的に利用されるようになりました。加熱装置は、より効率的かつ環境に優しいものへと変化しており、今後もさらなる進歩が期待されています。
加熱装置の使用用途
加熱装置は、工業製品の研究開発用途では、「薬液ヒーター」が薬液中に浸して内部から加熱するために使用され、「恒温保管庫」用ヒーターは、飛散しやすい薬品や粉末状の物体を高温の状態で保管する際に役立ちます。さらに、リングギヤやベアリングインナーレースなどの焼き嵌め作業では、素材を油中で加熱するために「棒状ヒーター」や「電気コンロ」が活用されています。
また、非接触で金属が1,000℃を超える超高温まで自己加熱できる「高周波加熱装置」は、金属溶解炉として利用することが可能です。高周波加熱装置は、その高い加熱性能を活かして、金属加工や溶接などの工程でも使用されることがあります。
加熱装置の原理
加熱装置は、電気や可燃性ガスを熱源として、物体を温めるために用いられます。電気を利用する場合、電気抵抗によって発生するジュール熱を利用して加熱します。電流が抵抗を通過する際にエネルギーが熱エネルギーに変換され、物体が加熱されるのが基本原理です。
一方、可燃性ガスを利用する場合、ガス燃焼によって発生する熱を利用して加熱します。例えば、ガスコンロはプロパンガスや都市ガスを燃焼させ、その炎で鍋やフライパンを加熱する仕組みです。
また、非接触で加熱する方法として、高周波加熱装置があります。交流電流の周波数を高くすることで、磁界が急激に変化し、金属内部の電子が高速で移動することによって、熱を発生させます。加熱される金属は、1,000℃以上の超高温に達します。
加熱装置の原理を理解すると、性能や用途を最大限に活用可能です。例えば、電気ヒーターは熱効率が高く、温度調節も容易ですが、高周波加熱装置は非接触で高温に加熱できるため、金属加工や溶接などの用途に適しています。加熱装置の選択や使用方法を検討する際には、それぞれの原理と特性を理解し、最適なものを選ぶことが重要です。
加熱装置の特徴
前述の製品を例に出すと、「薬液ヒーター」は「棒状ヒーター」に耐食性・耐候性に優れるフッ素樹脂などをコーティングしたものであるため、薬液中に浸しても侵食されにくいという特徴があります。
また、水や油などの液体を加熱する用途で使用される「棒状ヒーター」は、容器の外からではなく液体を内側から直接加熱することができるため、昇温時間の短縮を図ることが可能です。
「高周波加熱装置」や「IHヒーター」は、電熱線や発熱体などに発生するジュール熱を利用したものとは異なり、電磁誘導により発生する「自己加熱現象 (ジュール熱) 」を利用しているため、物体全体をまんべんなく加熱することができる他、出力制御により低温から超高温まで容易に温度を変えられます。
金属溶解炉の場合、電磁力により炉内が撹拌されるなど、作業者の負担や作業環境の面で非常に使い勝手が良いという特徴があります。その他、シリコーンラバーを使用したものは自在に変形させることが可能です。ガラスの曇り止め等、透明導電膜を利用したものは視覚上の妨げにならないという点が特徴です。
加熱装置のその他情報
加熱装置と併用される工業製品
加熱装置と併用される主要な工業製品は金属製品、化学薬品、食品の3種類です。
1. 金属製品
金属製品の加工において、加熱装置は欠かせません。例えば、鋳造や鍛造の際には金属を高温に加熱し、形状を変更しやすくするために使用されます。また、焼入れや焼きなましといった熱処理も加熱装置を用いて行われることが多く、金属の強度や耐久性を向上させる役割を果たしています。
2. 化学薬品
加熱装置は、化学薬品の製造や研究開発にも使用されます。反応速度を上げたり、特定の温度での性質変化を調べたりするために試料や薬液を加熱する必要があります。加熱装置が正確な温度管理を実現し、安全な操作を提供するために重要です。
3. 食品
パンやケーキなどの焼成や調理済みの食品を温めるための加熱機器は、食品製造工程で重要な役割を果たしています。また、加熱装置は、食品の殺菌や酵素の不活性化を行う際にも用いられることがあります。