絶縁コーティング剤

絶縁コーティング剤とは

絶縁コーティング剤とは、コーティング加工により絶縁性の皮膜を生成できる製品です。

ポリイミド系、エポキシ樹脂系など、含有する成分にはさまざまな種類があります。コーティング対象の物体に絶縁コーティング剤を用いると、表面に絶縁性の高い膜が生成されます。

この絶縁性の膜によって物体から電気が漏れにくくなるため、漏電による感電事故の防止などに有効です。絶縁コーティング剤の塗装方式としては、スプレーやディップなど一般的な方式以外に、膜厚の均一に優れた静電塗装法や電着塗装法なども普及しています。

絶縁コーティング剤の使用用途

絶縁コーティング剤は、主に自動車や家電製品など、高電圧がかかる製品の部品の絶縁処理に用いられます。絶縁コーティング剤を用いてコーティングすると、電圧に対する耐性を高めることが可能です。

例えば、電気自動車やハイブリッド車は動力として電気を利用しているため、バッテリーやモーターなどの周辺部品に高い電圧耐性が要求されます。電圧に対する耐性が不十分だと漏電が生じる可能性があり、場合によっては火災などの事故の原因となります。事故防止の観点からも、絶縁コーティングは重要な加工です。

絶縁コーティング剤の原理

絶縁コーティング剤は、絶縁性の高い絶縁体を対象物の表面にコーティングする製品です。絶縁体は電気を通さない物質であるため、耐電圧性が要求される対象物に使用できます。物体における電子のエネルギー準位には、価電子帯と禁制帯、そして伝導帯の3つが存在します。

この3つの中では、価電子帯、禁制帯、伝導帯の順に高いエネルギー準位です。一般に電子は、エネルギーが低い価電子帯からつまる性質があります。導電性に大きく影響するのは、エネルギーが高い伝導帯の電子です。金属などの導電体では、一部の電子が伝導帯に存在しています。この伝導帯の電子が自由に動くことによって、電気が通る状態となります。

一方で、絶縁体では、価電子帯に電子が存在しますが、伝導帯には存在しません。電子は光や熱のエネルギーを用いて、低いエネルギー準位から高い準位に励起することが可能です。

絶縁体は価電子帯から伝導帯まで電子を励起するために、多大なエネルギーを必要とする性質を持っています。このため、実質的に電子を伝導帯に励起することが難しく、電気が通らない状態となります。

絶縁コーティング剤のその他情報

1. プリント基板への絶縁コーティング剤の適用

プリント基板において、耐久年数よりも早期に故障の原因となるのが錆です。対策として、防湿絶縁コーティング剤が使用されています。これにより長期間の使用が可能で、安定稼働を実現しました。しかしながら、高い需要があるにも関わらず、様々な要因から安定した生産ができなくなりました。

最も大きい課題は乾燥時間の長さです。防湿絶縁コーティング剤の乾燥時間は24時間とされており、大量生産に適したコーティング剤ではありません。生産性の悪さが需要にマッチしていない状況となりました。その対策として、加熱温度を高める事により乾燥時間の短縮を狙いましたが、設備の増設やランニングコストの増加といった別の課題が生まれました。製品自体への負担も大きい結果となり、実現化には至りませんでした。

その課題を解決し、安定した量産を実現したのがフッ素系コーティング剤です。高い速乾性能を誇り、15分で完全乾燥に至ります。従来の24時間に比べ、大幅な乾燥速度の短縮が可能となり、生産効率の向上が達成されました。

従来より低温かつ低膜厚で性能を発揮できる事から、ランニングコストの削減も見込めます。肝心な皮膜性能も、防湿絶縁性はもちろん柔軟性や防水性、耐熱性で問題の無いスペックとなります。

2. 絶縁コーティング剤の将来性

電気自動車の普及が進む中、その部品形状は複雑化の一途を辿っており、より均一にコーティングできる技術が求められています。電着塗装法においては、コーティング液の組成変更での改善が進められています。

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