サージアブソーバ

サージアブソーバとは

サージアブソーバとは、サージ電圧から機器を保護する装置を指します。サージ電圧とは急峻に立ち上がる高電圧で、落雷による雷サージ電圧などが代表例です。雷だけでなく、大電力の導通遮断の切替や、静電気によっても発生します。

サージ電圧が発生した回路に繋がる機器は、絶縁破壊を起こして破損する危険性があります。このサージ電圧(Surge Voltage)を吸収(Absorb)する装置をサージアブソーバと呼んでいます。つまり、瞬間的に発生する異常電圧から機器を保護するための装置です。

サージアブソーバの使用用途

サージアブソーバには、電力回路用と制御回路用の2種類があります。電力回路用のサージアブソーバは、避雷用と開閉サージ電圧吸収用に分類されます。避雷用としては電柱上などで使用され、落雷時に異常電圧を大地へ逃がします。この用途の場合、「サージアレスタ」とも呼ばれます。

開閉サージ電圧吸収用サージアブソーバは高圧盤内などに納められて使用されます。制御回路用のサージアブソーバは、LAN回路や電話線回路などに使用されます。主な目的は、OA機器や精密制御機器を落雷などから保護することです。OA機器の他には、電話機、FAX、モデム、テレビアンテナ、ディスプレイ、カーナビなどの保護に使用します。

サージアブソーバの原理

サージアブソーバは、サージ電圧を主回路から切り離す装置です。主に地絡によってサージ電圧を吸収するものと、抵抗によって吸収するものの2種類に分けられます。

地絡によるものは、半導体や放電管によって異常電圧のみ地絡させます。落雷が想定される装置などに用いられます。抵抗によって吸収するものは、コイルや抵抗を用いて異常電圧を吸収します。主に落雷以外のサージ電圧を吸収する目的で用いられます。

サージアブソーバの種類

サージアブソーバにはいくつか種類があります。種類によって、原理や特徴が異なります。

1. ZnO形サージアブソーバ

ZnO形は雷サージ用として多く使用され、最も一般的なサージアブソーバです。酸化亜鉛(ZnO)は半導体の一種で、高電圧に対しては抵抗が低くなる性質を持っています。

ZnOを介して回路を接地させると、異常時には大地へサージ電圧を逃がすことができます。小容量回路から大容量回路まで幅広く使用されます。

2. CR形サージアブソーバ

保護する回路に並列してコンデンサや抵抗器を取り付けます。コンデンサの作用によって異常高電圧時には抵抗器へ電流を流し、回路を保護します。主に小容量の回路に使用され、サージキラーと呼ばれることもあります。

3. ダイオード形サージアブソーバ

保護する回路に並列にダイオードを取り付け、ダイオードの整流作用でサージ電圧を吸収します。直流回路でのみ使用可能で、比較的小容量の回路に使用されます。

4. 放電管形サージアブソーバ

接地した放電管を回路へ組み込み、高電圧を大地へ逃がします。放電管内部には不活性ガスが封入されており、放電管内のギャップによって動作電圧を調整します。大容量の放電が可能な反面、動作速度が遅いデメリットがあります。

上記以外にも、サイリスタを用いて接地するサージアブソーバも存在します。サージアブソーバはサージが混入してきていない通常時は、回路上には存在しないデバイスとして振る舞います。サージが混入してきた場合には速やかにサージ電流を吸収して、回路を保護します。

ただし、実際にはサージアブソーバにはどうしても反応するまでの遅延が発生してしまいます。遅延時間が長いほど回路にダメージを与えてしまいます。ZnO形などの半導体を用いたサージアブソーバは遅延時間が短いという特徴があります。そのため、現在のサージアブソーバはZnO形が主流です。

現在の精密機器は高機能と小型化に伴いサージに対して弱くなってきています。サイリスタやZnO素子は静電容量も大きく、弱電回路の波形を歪ませる危険があるため、考慮して組み込む必要があります。

参考文献
https://cend.jp/emc_primer/product/absorber.html
https://www.mmc.co.jp/adv/dev/japan/document/surge_absober/surgeabsober04.html
https://www.mmc.co.jp/adv/dev/japan/contents/surge_ab/index.html
https://www.dempa.co.jp/productnews/trend/h030612_1/h0612_1.html
https://jp.rs-online.com/web/generalDisplay.html?id=ideas-and-advice/surge-absorber-guide

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