育苗器

育苗器とは

育苗器とは、種子をまいた育苗箱を中に積み、人工的に加温して苗を発芽させる装置です。

育苗器は主に水稲の苗を育てるのに使われ、棚式で200箱程度の育苗箱を収容するものが一般的です。水稲育苗では育苗器で2日間、発芽の適温30〜32℃を保ちます。

熱源としては電気ヒーターが一般的ですが、スチームを使用するものもあります。スチームタイプは育苗器の温度ムラが少なく、苗に優しいというメリットがあります。どちらのタイプの育苗器も、太陽の熱の影響を受けないように日陰に置きます。 

育苗器の使用用途

育苗器は、水稲栽培において田植えまでに、ある程度育成の進んだ苗を育てる育苗作業で使われます。水稲栽培が始まる春は気候の変化が激しく、自然環境下では温度・湿度の管理が非常に難しいです。

そのため、人工的な環境で健康な苗を大量に育てることができる育苗器は、特に寒冷地の水稲栽培において必需品と言えます。水田に苗を植え付けるときは田植機を使うのが一般的なので、温度管理によって発芽のタイミングを合わせ、苗丈を揃えることも、育苗器の重要な役割の一つです。

育苗器は主に水稲栽培に使われていますが、家庭菜園用の小さいサイズの育苗器もあります。

育苗器の特徴

長所

1. 発芽のムラが少ない
育苗器は全体を光を遮断する保温シートで被覆されています。そのため、温度が一定に全体へいきわたり、発芽のムラが少なくなります。

2. 精度の高い温度管理が可能
育苗器の発芽のための加温はサーモスタットを使用しているため、精度の高い温度管理が可能です。なお、サーモスタットとは、加温・冷却を制御することで対象物の温度を一定に保つための装置のことです。

3. 作業の効率化
育苗器は全体を保温シートで被覆されているため、天気や気温に左右されにくいです。発芽までの日数がおおよそ一定で、発芽後の作業の予定が立てやすく、効率的に作業できます。

短所

1. 設置場所が必要
育苗器は精度の高い温度管理が可能ですが、太陽の熱による温度変化の影響を受けてしまうので、日陰に置かなければなりません。また、育苗器のサイズが大きくなればなるほどサイズに見合う設置場所が必要になります。

2. 育苗器から出す手間がかかる
育苗器で発芽させた場合、光があまり当たっていませんので、苗は白っぽい状態です。苗を緑化~硬化させるために育苗器から出して並べる必要があります。

育苗器の種類

1. 熱源による分類

熱源は主に電熱ヒーターです。他には蒸気で加温・加湿する方式や、両者の組み合わせ方式などがあります。

2. 電源による分類

単相100V・単相100V/200V・三相200Vがあります。

3. 育苗箱の収容方法による分類

積み重ね式
育苗器の中に手で積み重ねて育苗箱を入れていく方式です。オプションでキャスター付きのリフタをつけると、積み重ねた育苗箱の出し入れがスムーズになります。

棚式
育苗器の中にある棚に育苗箱を入れていく方式です。積み重ね式と比べ、育苗箱同士に空間ができて、ムラなく全体に温度がいきわたります。その反面、同じサイズの積み重ね式の育苗器に比べ、育苗箱の収容数が少なくなります。

フォークリフト仕様
育苗箱をパレットの上に積み重ね、フォークリフトで育苗器の中に入れます。一度で多くの育苗箱を出し入れできるため、効率的な作業が可能です。育苗箱の収容数が約500枚~1,000枚と大きいサイズの育苗器になります。

育苗器の選び方

基本的に育苗箱の枚数で育苗器のサイズが変わります。少ないもので60枚、多いものだと1,000枚程度入ります。サイズが大きくなると、奥行きと高さが若干変わり、幅が大きく変わります。

フォークリフト仕様の育苗器であれば、育苗箱をパレットの上に積み重ねて、一度に多くの育苗箱の出し入れが可能になります。収容数も多いためフォークリフトを所有している方におすすめです。

育苗器の使い方

1. 育苗器の設営

育苗器の骨組みを組み立てて行きます。連結部分は付属のボルトで締めるものとボルトを使わずに組み立てられる、ボルトレスタイプがあります。

2. 育苗箱を入れる

播種した育苗箱を育苗器に入れます。積み重ね式の場合、一番上の苗が伸びやすい傾向があるので、空の育苗箱などを上に乗せるのがおすすめです。

3. 保温シートをかけてヒーターの電源を入れる

保温シートはファスナーをしっかりと締め、隙間がないようにします。ヒーターの温度は30~32度に設定します。

育苗器のその他情報

1. 育苗器の取り扱いにおける注意点

育苗器使用時の注意点として、電源部分やサーモスタット、ヒーターに水をかけないよう注意するとともに、アースの取り付けも必要です。また、タコ足配線やテーブルタップへの接続はNGです。育苗器に育苗箱を搬入する前に、温度テストを行っておくことをおすすめします。

また、フォークリフト利用時は、ゆっくり移動しないと転倒事故を起こす恐れあがあります。

2. 栽培対象の適温

ネギやキュウリといった野菜類などに使用する際は、栽培対象の適温を把握しておく必要があります。水稲苗を一例として挙げると、出芽時の適温は30℃です。

育苗器で2日間ほど適温を維持しながら保温し、一斉に出芽させます。30℃を大きく超えると病害発生のリスクが高まるので温度管理は大切です。また、中古の育苗器を入手した際は、清掃・消毒などを実施して病気の発生を防ぎましょう。

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