単列深溝玉軸受とは

単列深溝玉軸受 (英: Single Row Deep Groove Ball Bearings) とは、転がり軸受の1種で、一般的で汎用性の高い構造を持つ軸受 (ベアリング) です。
転がり軸受には、玉軸受 (ボールベアリング) の他に、ころ軸受 (ローラーベアリング) があります。「単列」とは、内輪と外輪 (軌道輪) の中央に加工された1本の溝に沿ってボール (転動体) を1列に配置されている軸受です。
単列の他には「複列」があり、内輪と外輪の溝は2本でボールも2列に配置している複列深溝玉軸受です。
単列深溝玉軸受の使用用途

図1. 単列深溝玉軸受の使用例
単列深溝玉軸受は、多くの機械や図1のようにフィルム製造の工場設備などで使用していますが、軸受が目に見えない部分に取り付けられていることが多いです。しかし、身近にある家電製品やOA機器においても、回転動作を行っている多くの機械では、この軸受を使用しています。
特に単列深溝玉軸受は、内輪、外輪とボールは、点接触で転がり抵抗が小さく、摩擦トルクもが非常に低いため、高速回転や低騒音・低振動が要求される場合の好適です。この軸受は、回転部に発生する摩擦を最低減に抑さえ、安定した回転維持のための機械要素で、摩擦による焼き付きによる異音や故障を防止します。
単列深溝玉軸受の原理

図2. 軸受の種類と体系
図2は軸受の種類と体系を示し、深溝玉軸受の他に「アンギュラ玉軸受」と「自動調心玉軸受」があります。主に軸受にかかる荷重は、図3のように回転軸からラジアル荷重と、左右両方向のスラスト荷重 (アキシアル荷重) です。

図3. ラジアル荷重とスラスト荷重
深溝玉軸受は、内輪と外輪の軌道面 (転動体が転がる走路で軸受の荷重支持部分の表面) には、円弧状の深い溝が加工されているため、ラジアル荷重と左右両方向のスラスト荷重、およびそれぞれの合成荷重を受けることができます。
単列深溝玉軸受の構造

図4. 単列深溝玉軸受の構造
1. 構造
深溝玉軸受は、主に下記部品で構成され、図4に示すような構造です。それぞれの部品の ( ) 内の名称は、JIS B0104 転がり軸受用語で使用されている用語で、説明はJIS規格から引用です。
- 内輪、外輪 (軌道輪)
1列又はそれ以上の軌道を持つラジアル軸受の環状の部品 - ボール (転動体)
両軌道の間を転がる玉又はころ - リテイナ (保持器)
全数又は数個の転動体を部分的につかみ、それらと共に動く軸受部品
単列深溝玉軸受は、内輪・外輪の中央溝の間にボール (球体) が1列に複数個配列され、ボールはリテイナによって等間隔に維持され転がり運動を行います。
2. 密封構造
深溝玉軸受は、密封構造の有無により、開放形と密閉形があります。
- 開放形
内輪と外輪間は、密封装置などが無く開放されている - 密閉形
内輪と外輪間は、密封された構造で、異物の侵入によるボールや軌道面の傷付きや、潤滑剤の劣化を防止している
密閉形はさらにいくつかの種類に分けられ、以下の2つが代表的です。
- シールド形
外輪の両側または片側に、金属製シールド板を固定し、内輪とは非接触でごく狭い隙間がある (シールドは通常、金属板をプレス加工した環状の保護装置) - シール形
外輪の両側に、合成ゴムに金属の補強板を取り付けたシールを固定し、内輪とは非接触でごく狭い隙間がある非接触形と、内輪に接触している接触形がある (シール:は潤滑剤の漏れ又は異物の侵入を防ぐための、1個又は数個の部品から構成された環状の装置)
単列深溝玉軸受のその他情報
1. 規格
単列深溝玉軸受に関する代表的な規格を下記に示します。
- JIS B1521 転がり軸受 – 深溝玉軸受 Rolling bearings -Deep groove ball bearings
- JIS B1501 転がり軸受 – 鋼球 Rolling bearings – Balls
- JIS B1512 転がり軸受 – 主要寸法 Rolling bearings -Boundary dimensions
- JIS B1513 転がり軸受の呼び番号 Rolling bearings – Designation
- ISO 15: Rolling bearings – Radial bearings – Boundary dimensions, general plan
- ISO 3290: Rolling bearings – Ball
2. その他の型式
下記は、単列深溝玉軸受のその他の型式です。
- 止め輪付き
あらかじめ外輪外周部に止め輪を取り付け、アキシアル方向の位置決めを容易にします - 膨張補正深溝玉軸受
外輪外周部に高分子材料を取り付け、軸受箱内径と高分子材料外径と熱膨張はほぼ同じになり、使用環境の温度変化に対応します