土壌消毒剤とは
土壌消毒剤とは、土壌病原菌や土壌細菌に対する土壌消毒を実施する際に使用する薬剤の総称です。
土壌消毒剤は古くから用いられており、中でも臭化メチルが代表的です。しかし、オゾン層破壊物質への指定などにより現在は使用されておらず、クロルピクリンやD-Dといった薬剤に置き換わっています。
このように土壌消毒剤の種類は多岐におよび、薬剤によって適用が異なるため、目的に応じて選定する必要があります。また、土壌消毒剤は化学物質であり、使用方法を誤ると人体に害を及ぼしたり、臭気によって近隣環境に問題を与えたりする恐れがあります。
さらに、土壌に残留すれば薬害発生の原因ともなるため、使用方法・使用量を順守して使用することが重要です。
土壌消毒剤の使用用途
土壌消毒剤の使用用途として、連作障害の回避、土壌病害の軽減、土壌病害虫の防除が挙げられます。また、集中豪雨などによる冠水は病害菌などの病害を発生させる恐れもあることから、このような場合にも土壌消毒剤の使用が有効です。
土壌消毒の手法には、土壌消毒剤を用いる化学的防除のほかに、太陽熱消毒や熱水消毒などの物理的防除、除虫効果のある植物を育てることにより病害虫の発生を予防する生物的防除などがあります。なかでも土壌消毒剤を用いる方法は安定した効果が得られ、コスト面からも有利であることから、最も一般的な土壌消毒方法とされています。
土壌消毒剤の特徴
同じ作物を何年も同じ畑で栽培すると、特定の病原菌が増え連作障害という症状が起きます。土壌消毒は土壌中の病原菌を殺菌し、連作障害の発生を防ぐために使用されます。
長所
土壌消毒剤を使用することで連作が可能になるため、同じ作物を作る場合でも畑をローテーションする必要がなくなります。通常は同じ作物を連続して栽培できないため、別の作物を育てるか畑を休ませる必要があります。
また、土壌中の殺菌だけでなく雑草の発生を抑える土壌消毒剤もあり、除草作業の省力につながります。
短所
土壌消毒剤は病原菌だけでなく、作物にとって善い微生物も死滅させてしまいます。また、化学物質が周りの環境に及ぼす影響も考えて使用しなければなりません。周辺に民家があるなどの密集した環境では、特に配慮が必要です。
土壌消毒剤を使用した後の土壌は、有効成分も少ない状態です。この状態の時に病原菌に感染した苗などから病気を土壌に持ち込むと、土壌環境を悪化させてしまう可能性もあります。
土壌消毒剤の種類
土壌消毒剤の種類によって、適切な使用用途は異なります。代表的な土壌消毒剤は、以下の通りです。
1. D-D
戦中防除に使用し、施設栽培や露地栽培で使用できます。
2. ドロクロール、クロピク80
クロルピクリンを有効成分としている土壌消毒剤で、主に土壌病害防除に使用します。
3. ソイリーン、ダブルストッパー
D-Dとクロルピクリンを有効成分としており、線虫と土壌病害の防除に効果があります。
4. ガスタード微粒剤、バスアミド微粒剤
MITCを有効成分としており、土壌病害や苗床の殺草を目的にしようします。
5. トラベックサイド油剤、ディ・トラベックス油剤
D-DとMITCを有効成分としており、線虫と土壌病害が併発している場合に効果的です。
6. キルパー、NCS
MITCを有効成分としており、土壌障害や苗床の殺草対策にしようしますが、原液で使用することにより古株枯死対策にも効果があります。
登録農薬の有効期限は3年となっており、その後は再登録しなければ登録が失効します。登録が失効している農薬は製造や販売、使用ができなくなっているので、注意が必要です。
土壌消毒剤の選び方
使用する土壌消毒剤を選ぶ際は、有効成分がどの症状に効果があるのかを確認する必要があります。また、住宅などが密集している箇所で使用する際は、周りへの影響を考慮して土壌消毒剤を選ぶことが大切です。
土壌消毒剤の使い方
土壌消毒剤の効力を高めるために、前処理を行うのが理想的です。具体的には以下の手順で進めます。
- 作物残渣を土壌からきれいに取り除く
- 土壌はできるだけ深く耕うんし、土をできるだけ細かくする
- 土壌水分を、土を握って離すと割れ目ができる程度に調整する
- 防護マスク (吸収缶と面体からなるもの) 、防護眼鏡、ゴム手袋、防護服などを着用する
土壌消毒剤は大きく分けて、土壌注入するタイプと土壌混和するタイプがあります。使用後は被覆をして、ガスが空気中に逃げないようにします。
商品それぞれにくん蒸期間が設けられており、くん蒸期間は必ず守らなければなりません。くん蒸後は、ほとんどの商品でガス抜きが必要です。ガス抜きをしっかり行わないと、栽培する作物に悪影響を及ぼします。ガス抜きは、トラクタで土壌を耕うんして行います。