アリルカチオンとは
アリルカチオンとはC3H5の化学式であらわされる有機化合物であり、共鳴によって化合物内の3つの炭素に正電荷が非局在化することで高い安定性を有することで知られています。本来は単一の化合物を示す名称ですが、化合物そのものではなくアリル位の炭素に正電荷を有するカルボカチオンの総称として用いられることもあります。
いずれの場合においてもアリルカチオンはその他のカルボカチオンと比較して安定化されたカチオンではありますが、通常単離されることはなく、反応中間体として存在します。そのためGHS分類や法規制について、アリルカチオンそのものについての定めはないため、出発物質にあたるアリル化合物、およびその反応生成物について確認が必要です。
アリルカチオンの使用用途
アリルカチオンの使用用途としては、安定な反応中間体としての使用が挙げられます。炭素原子上に正電荷を持つカルボカチオンはさまざまな反応の中間体として存在しますが、その中でもアリルカチオンは安定な中間体であることから、反応の進行が促進されます。具体的にはアリル化合物に対するハロゲン化水素の付加反応などで中間体として存在し、その付加位置選択性に影響を与えることで知られています。
またアリルカチオンは重合性を有することから、アリルカチオンそのものをモノマーとして用いたアリルカチオン性ポリマーの開発も進められており、これもアリルカチオン自体の安定性を利用した使用用途ということができます。