調整ねじとは
調整ねじとは、機械部品や治工具の位置調整や高さ調整などに、幅広く使用されるねじのことです。
調整の幅は大きく動かせるものから微調整ができるものまであり、用途に応じてねじピッチは最適な物が選択されます。調整後の位置保存と変動防止のため、ナットによる固定が一般的です。
機械や設備などで、位置調整のみでなく圧力や流量、電圧、周波数など各機能を調整するためのねじも調整ねじと呼ばれます。
調整ねじの使用用途
図1. 調整ねじの使用例
1. 機械・設備の位置調整
調整ねじは、機械部品の位置を微調整するのに使用されます。機械、設備などで組立の際、加工精度のみでは精度が出し切れない場合や組立後に位置の調整が必要な場合があります。この場合の部品の位置を微調整するために、調整ねじが利用可能です。
2. 治工具の位置調整
治具や工具などは、機械設備に正確な位置に固定する必要があります。調整ねじは、治具や工具などを正確な位置に調整するのに利用可能です。
3. 検出器・センサーの位置調整
検出器やセンサーは、高精度な位置決めが必要なことが多く、対象物に合わせて位置調整します。これらの微調整に調整ねじは利用可能です。光電センサーなどの光軸調整にも活用でき、取り付けブラケットに内蔵されていることもあります。
調整具合が目視できるように、マイクロメータを組み合わせた使用方法もあります。この場合、マイクロメータの破損を防ぐため、位置調整は調整ねじのみで行います。マイクロメータ端を離しておき、位置決め後マイクロメータを当て位置を確認する手順が必要です。
4. 傾きの調整
調整ねじ1本で押すことで、一方向の位置調整が可能ですが、同じ面に2本配置することで、接触面の傾きを調整できます。シュートなどで、支持部の一端をヒンジピンとして、他端を調整ねじで押し上げることで傾きを調整できます。
調整ねじの原理
調整ねじはねじ山のリードにより、ねじを回転させると軸方向に移動し、相手材を押し位置を調整します。ねじ端を相手材に当て調整するため、ねじ端当て面は球面となっており、面の状態の影響を少なくします。
また、耐摩耗性向上のために焼入れ処理をされたものが多いです。相手材側の接触面は、硬度の高い材料の使用や表面仕上げが必要です。調整ねじのピッチは、微調整するため細目ねじが多く、用途によっては並目ねじも使用されます。
ねじ精度は6g以上 (旧JIS2級以上) が多く、ねじ穴の精度も同等以上の精度が要求されるので注意が必要です。
調整ねじの種類
図2. 調整ねじの種類
1. 止めねじ型
止めねじ (イモネジ) と似た形状で、ねじ端は接触面として、球面で焼入れ処理されています。ねじ締め付け部は、六角穴のほか、スパナ用に二面取りされたものもあります。
2. 六角ボルト型
六角ボルトと似た形状で、ねじ端を接触面とした調整ねじです。ボルト頭分のスペースが必要になりますが、六角頭をスパナで締め付けるので、締め付けトルクをかけやすいです。
六角頭部に六角穴を設け、スパナ、レンチどちらも使用可能としたものもあります。
3. スピンドル型
精密ねじの真鍮製のブッシュとスピンドルの組み合わせた調整ねじのことです。高精度かつ微細ピッチのねじにより、通常の調整ねじよりさらに微細な調整が可能です。マイクロメータの内部や精密ステージの送りに使用されます。
調整ねじのその他情報
1. 調整ねじの材質
調整ねじの材質は、炭素鋼、クロモリ鋼、ステンレス鋼が使われています。また、用途上機械外部に露出することが多く、常に調整可能とするため、防錆や耐食性が必要です。ユニクロメッキ、三価クロメートや無電解ニッケルなど表面処理が施されます。
2. 調整ねじの使い方
調整ねじは、調整ねじブロックや機器に設けられたねじ穴に締め込み、相手材に押し当てることで位置を調整します。位置調整後は緩まないようにナットによりねじを固定しますが、ナット締め付け時にねじが回転し位置がずれないように注意が必要です。
調整ねじを対象物の対面に配置し、双方から押し付けることで、対象物を前後に移動させる使用方法もあります。