紡糸機

紡糸機とは

紡糸機とは、化学繊維の原料を細い糸状にする機械です。

ポリエステルやナイロンといった化学繊維は、石油などを原料とするポリマーから製造します。紡糸機はこの高分子のチップを溶かした液状原料を繊維に加工する装置です。代表的な方式は溶融紡糸式であり、熱で溶かした原料を小さな穴が開いた口金から高圧で押し出す仕組みです。

紡糸機で口金から押し出された直後の糸は、分子の並びがバラバラで強度が不足しています。そのため、紡糸機には延伸工程を組み込んで、糸を熱しながら引き伸ばす場合もあります。糸を引き伸ばすことで分子の並びが整い、実用的な強度を持つ化学繊維が完成します。このように、紡糸機は原料から糸を作り出して巻き取るまでの工程を有する、繊維産業に不可欠な装置です。

紡糸機の使用用途

紡糸機は以下のような用途で使用されます。

1. 衣料品・生活用品

最も身近な用途は衣服です。ポリエステルはシワになりにくく乾きやすいため、ワイシャツやスポーツウェアに多用されます。ナイロンは摩擦に強く丈夫なため、アウターや靴下などに使用する例が多く見られます。目的に応じた繊維を製造することで、生活のあらゆる場面で活用されています。

2. 産業資材・工業

自動車業界では、タイヤの形状を保つ骨格材であるタイヤコードや、乗員を守るエアバッグに高強度のポリエステルやナイロンが使用されます。土木・建築分野では化学繊維が軽量で錆びない特性を活かし、ロープや防護ネットのような建材として利用します。さらに、炭素繊維やアラミド繊維といった高性能な繊維も、航空機の機体やテニスラケットといった高性能用品の素材として不可欠です。

3. 医療

医療現場では、手術後に体内で分解・吸収される糸や、逆に体内に残り続ける丈夫な人工血管を高分子材料から紡糸して作ります。また、使い捨てマスクやおむつなどに使われる不織布も、紡糸技術を応用して大量生産されています。人工腎臓治療に使われる中空糸膜も、高度な紡糸機の応用例です。